The End.
未だ建設中のビルの鉄骨に、その男は立っていた。やはりここは風が強く、バランスを取らないと落ちてしまいそうだ。
必死でバランスを取っている俺の前で、その男───黒い髪に整った顔で、漆黒のファーコートを着ている男───は、悲しそうな目で俺を見ている。
泣きそうな顔で、その男は言う。
「………やあ、久しぶり。また会うとは思わなかったよ」
賑やかで口数が多かった男は、静かに言う。
俺の返答を待たずに、その男は続ける。
「………終わっちゃうね。『この世界』も。君が満足するために入った『この世界』で、君は満足できたのかな?」
自らの欲望を満たすために入った『この世界』。しかしながら俺は、『この世界』で何もできなかった。ただ、世界が変わっていく様を眺めていただけだった。
俺が言葉を発する前に、男は言葉を続ける。
「君がなにも出来なかったにしても、俺はそれでいいと思う。───だって君は、俺に会ってくれたんだから。俺には、この世界はその為だけにあったって言ってもいいくらいなんだ」
男はゆっくりと、俺に近づいてくる。
「この世界が消えても、別の同じような世界がある。もし、そこでまた出会えたら───今度こそ、君は俺を好きになってよ」
その言葉と、初めて見せた笑顔を残して、男は消えてしまった。
一人鉄骨の上に残った俺は、静かに口を開く。
「………やっぱりお前、どう考えてもBLキャラだよ………」
そう呟いた瞬間、世界が終わった。
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