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二話

  エレベーターに乗り、廊下を何度も曲がり、扉を通る。


  目の前を歩く男は、迷路のようなこの場所を迷うことなく歩いていく。

  もう自力ではあの最初の部屋までは戻れないほどに入り組んでいる。周囲は白亜の建材で統一されていて、もう何度似たような場所を通り抜けたかわからない。


  代わり映えしない景色に嫌気が差してきた頃、青年は立ち止まり、すぐ前の扉をノックする。


「鍵は開いている。入りたまえ」


  返答を聞くと、青年は他の自動ドアとは違って何故か手動のスライドドアを開ける。


  そこを表すなら、書斎が一番合うだろうか。

  木製の本棚が立ち並び、そこには魔法と銘打たれた分厚い本が何冊も詰めて収納され、書斎机の上には書類の山が幾つも形成されている。


「無事で何よりだよ、ルート君」


  書斎の机に向き合っていた屈強そうな男は、視界に青年を収めるなりそう言ってきた。


「一応、昨日までは四肢欠損してたんだがなァ」


  ルートと呼ばれた少年はそう言うが、彼には手足が付いている。植え付けられた記憶を探っても、一日でそこまで回復する方法はない。ということは、創造主である王(故)には伝わっていない最新技術でもあるのかもしれない。


「そんなことより、先に要件を済ませるぞ」


  青年はこれ以上話すことはないといったふうに壁に背を預けて目を閉じる。


「さて……君にとっては初対面だろう。私は国立魔導士団団長、ルークス・アルファルド。君をここまで連れてきた彼は副団長のルート・アルフェンスだ。君は、名前を持っているのかな?」


  少なくとも、名前を呼ばれるようなことは無かったが、植え付けられた記憶には確かにそれはあった。


「アインだ。………たぶん」


「……そうか。それではアイン君。君はまだ生まれたばかりで、この世界をあまり知らないだろう?」


  記憶にあるのは、植え付けられたものである言語と一般的な常識、様々な武器の扱い方。それとあの地下室で何週間か過ごしたことだけだ。


「知識や情報を君に提供しよう。その代わりに、ここに入団してくれないか?」






 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆






「さァ、まずはてめェの素質を見極めさせてもらおうじゃねぇか」


  二つ返事で快諾した俺は、再びあの迷路を抜け、開けた空間に立っていた。


「あそこで戦闘の経験はしてねェだろ。ここの武器を片っ端から使ってしっくりきた奴があればそれにしろ。あと、合う武器がなければ魔法とかに専念することになるからな」


  とは言われても、この空間には大量の武器が眠っている。剣はもちろん、槍、銃、杖、鎖まであり、この中から自分に合う武器を探し出すのは骨が折れる。


  みじかにあった直剣を手にするが、うまく振れない。俺はあらゆる武器の扱い方を記憶に突っ込まれているものの、体格が小さくて合わないせいで持ち腐れになってしまっている。


  その後、似たようなことを繰り返し、最終的には三丁の銃に落ち着いた。


  セミオートの対物ライフル、OSV-96。

  特殊な形状のアサルトライフル、F-2000。

  高威力の自動拳銃、デザートイーグル。


  他の武器はうまく振れないか、弾が変な方向に飛んでしまうが、これらだけは人型模型に的にピンポイントで命中させることができた。この体格でしっくりくるのはやはり少ない。


「……それか。あとでそいつを弄っておくとして、次は適性だな」


  ルートは俺の心臓あたりに手を触れると、


「『ドレイン』」


  倦怠感が身体を襲い、自分の体内から何かが強引に排出されるような感覚。


「こ……れは」


「対象の魔力を強引に奪う呪術だ。っと、適性がわかったぞ。魔法なら火が98%、水が43%、風が86%、土が62%、闇が50%、光が100%。錬金術なら94%。呪術なら付与が93%、干渉が8%。だ。……完全適合してる属性があるってのに他の適性値が軒並み高ェ。高位の精霊だとしてもこれは異常だなァ」


「どこが異常なんだ?」


「完全適合してる属性があるのに、他の属性にも適性があるってことだ」


  本来なら、完全適合とやらをした属性があるなら、他の属性に対する適性は無くなるのだろう。

  そうならない理由は、感覚的にも記憶的にもわからないが。


「ま、三大世界干渉術の全てに適性があるだけでも上出来だな。完全適合者は貴重だから、余裕でいけるだろうなァ」


「……?いけるって何がだ?」


「いや、忘れろ。……ん、まだ時間があるし、少しレクチャーしてやるか」


  ルートは腕時計を見て頷くと、またもや白亜の迷路に足を踏み入れた。

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