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始まりは雨の日に

 雲で空に蓋がされ、周囲は薄暗かった。その上、(けぶ)るように降る激しい雨が、尚のこと視界を悪くしている。


 河川敷には、人だかりが出来ていた。

 堤防代わりの土手の上から、人々が指さしているのは、階段下に横たわる少女だった。


 彼女は、ひどい有様だった。

 階段から転げ落ちたのか、セーラー服は泥塗れで、目は固く閉ざされている。どうやってここまで移動したのか、汚れた足には靴を履いていなかった。その足は、関節が有り得ない方向へねじ曲がっている。

 その容貌は、土に(まみ)れていてさえ、ひどく整っているのが見て取れた。周囲が明るければ、腰まで届く長さのバサバサになった髪の毛が、鮮やかな緋色をしていたのも分かっただろう。


 彼女が、既に息をしていないのは、誰の目にも明らかだ。


 そして、集まった野次馬の中に、目を閉じた少女と全く同じ容貌の少年が混ざっているのに、人々は気付かなかった。


「……緋翠(ひすい)……」


 整った容貌を固く強張らせて、恐らく蒼白になっているだろう少年は、既に事切れた姉の名を呟いた。

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