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9*

加筆修正

全体に二話挿入されています。

対応7

立ち上がった彼女が短く口訣を唱えると首の辺りを僅かに光が満たした。治癒魔法だろうか?


 衝撃から立ち直った馬が嘶き、俺を振り落とそうとする勢いを利用しておれは飛び上がった。一旦距離を取って漸く決めの大技を使おうと彼女の反対側に着地する…寸前で地面すれすれから剣先が俺を狙って突き出された。

俺が飛び上がったと同時に彼女が駆け出し、馬の腹をくぐって肉薄して来たのだった。

タイミングも計算されたものだった。彼女の騎馬の陰に隠れ着地寸前に最接近できる瞬間に飛び出してきた。栗色の髪のお下げが跳ね上がり顔に似合わないギラリとした視線が俺を射抜く。

俺はその時点で足場を足下に発生させ脚を回旋させ剣を払おうとした。

彼女はしかし、そのまま剣を突き出そうとせず一旦、地面に柄を叩き付けるように固定した。

なんかの術か?

俺はそのまま彼女の背中に踵を落とし姿勢を崩そうとする。

勢いが乗らない。

それでも飛躍中に練った勁を乗せた一撃はそれなりの打撃を与えた。鎧越しに肋骨の折れる手応えがあり彼女は苦痛の呻きを上げるが、剣は取り落とさ無かった。すごい根性だ。

「cmfっj」彼女が血を吐きながら短く呪文か何かを唱えると地面から舞い上がった土礫が回転しながら俺を襲う。

避け難い位置から放射状に拡がる礫付の衝撃波が俺の日本の名残の衣服と肉体を切り裂いた。


 傷を再び抉られる苦痛で注意が散漫になった。

 同時に背後から接近してきた木の枝が両腕を絡め取り、足元の草むらがざわめき俺の足首に巻き付いた。

俺の手業を警戒したのか幾つもの枝が念入りに絡みついてくる。

もちろん、すべて足首と掌の発勁で払える。ただこれでは時間が掛かる。

 彼女は術を発動した直後握りなおした剣をそのまま俺の腹に向かって突き出して来た。30センチも距離が無い。

「xdんfcんp!」多分、死ねとかそう言った言葉だと思う。当たり前だが、好きです!とか、結婚してください!とか言う表情では全く無かった。いや、こんなに必死な表情でそう言われたら絶対断れないと思うが。

 刃は縦に向いていた。

 俺は強引に体を屈めると両膝で彼女の剣身を挟んだ。動きは完全に止まらなかったものの、撓る木の枝が逆に彼女の勢いを殺してくれた。

俺と彼女の視線が交錯する。神拳闘士の感覚は鋭い。彼女の瞳に映った俺の顔の表情すら分かる。それは彼女同様全く余裕の無いものだった。

 彼女の不覚かそれとも偶然か、俺が不自由な姿勢でも捉えられる角度で剣が突き出され、それが俺を救い、彼女に破滅をもたらした。

俺は刀身を抑えたまま脚に絡まる草を弾き飛ばし、両足首で剣を握る手首を打ち据えた。彼女が悲鳴を上げて剣を放す。

 両手を自由にし、彼女の頭を押さえた。

勁を発し両側からの衝撃で彼女の意識が沈んだ。即興の治癒魔法では打ち消し切れない度重なる頭部へのダメージが限界を超えたのだ。俺は彼女を脇に抱えて走り出す。突進してくる例の馬と歓声を上げて近寄ってくる怪物どもを避けながらアルクメネのところまで戻った。

ふらついて立ち上がっていた女神は俺に手を掴まれると何を勘違いしたのかいやらしい笑みを浮かべた。

「どこでするのお?」手を握るイコール性行為、童貞中学生並みの直球な妄想力だった。はかどり過ぎだった。いや、中学生でも口には出さない。

めんどくさくなった俺は黙って脇に抱えると脚に勁を矯める。

乱暴にされて一旦は不服そうに悲鳴を上げたものの、そこで反対側に抱きかかえられている気絶した三つ編みの少女を見つけ「過激じゃない!」と嬌声を上げた。確かにちょっと誤解してもしょうがない状況か?もう何でもいいや。

 そのまま二人を抱えたまま、今はもう動かなくなった森の木の高枝に飛び乗った。俺はそのまま空中を足場と枝を伝い森の奥に消える事にした。


後にはぽかんと上を見上げる怪物どもとあくまで追撃しようと森の中に突っ込む女レンジャーの愛馬の姿があった。


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