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8/30

8*

加筆修正

全体に二話挿入されています。

対応6-3

 果たして二つの黒い塊が霧を押しのけて俺の頭を潰そうと出現した。移動音はしなかった。俺は最初に彼女が魔物たちに突撃した時の事を思い出した。

 俺はそれを両手で受け止めた。蹄鉄を当てた蹄が勁を集めた掌を打つ。しかし凶悪な威力だ。俺の筋骨が音を立てて歪む…肘に来た。乗馬ごと転倒させようという当初の目論見は力量の読み違えであっさりと崩れた。バフ入れたのか?化物を蹴殺してた時よりさらに酷くなっていた。

 しかし何とか勢いを殺すと振り込まれた馬上からの剣先を躱し胴の下に滑り込む。そこで頭上で呪文が唱えられ俺の脇腹に灼熱の棒が貫いたようなショックが襲う。

 それは焔では無かった。馬上から差し込まれた氷の剣先が俺の脇腹を抉っていたのだ。

「がああああああああああ!」

俺は苦鳴を上げながらも内功を廻して締め付け剣先が内臓をそれ以上引っ掻き回さない様にし、刀身に手を当てた。発した勁が氷を砕くと馬腹の向こうに本物の刀身が消えた。大きな発勁では無かったが肘に鋭い痛みが走る。

神拳闘士の戦闘知識はこの世界固有のものでは無く彼女がどんな術を持っているのかははっきりとは分からない。何と無くドルイド系の魔法剣士タイプと判断しているだけだ。それは彼女も同じ筈だが初見同士の技の掛け合いではこれまで彼女が有利に事を進めて来た。今の氷の剣先も強力な術とは思えないが状況に合わせて上手く使っている。

だが、此処で流れを逆転させなければならない。俺を蹂躙しよと滅茶苦茶に脚を踏み締めるクソ馬の攻撃を避けながらチャンスを待った。


…結局俺は外に蹴出された。忽ち数発の氷塊が俺の腹を襲う。痛みに耐えながら俺は馬の鐙に手を掛け発生させた足場に片足を当てがうと片手の小石を彼女に投げ付けた。そしてそのまま強引に馬上に蹴りを喰らわそうとする。そこに炎を乗せ振り下ろした剣が膝に入って来た。小石の目眩しは何の役にも立たなかったようだ。先程を大きく上回る灼熱感が脚を満たし、切り離され跳ね上げられた俺の脚の向こうに無表情な少女の翠の瞳が見えた…


神拳闘士の術には術士の可能動作を幻影として見せるものがある。小技だがハマれば相手へのフェイントとしては有効な術だ。この木偶馬の腹は幻影の出処を隠すには丁度良かった。

霧散した幻影を見て彼女がどう思ったかは分からない。俺は逆側の鐙を使って彼女の背後に出現したからだ。腹を撫でられていち早く幻影に気付き俺を振り落とそうとする馬鹿野郎の急激な機動に更に彼女の姿勢が崩れる。

俺は露出した彼女の頸椎に勁を込めた頭突きを喰らわせた。両手の発勁に威力を持たせるにはもう少し内功を廻して肘を回復させなければ成らないからだ。

彼女はそのまま糸の切れた操り人形の様に地面に崩れ落ちる。遂に落馬させた。

噛み付こうと頭を巡らしたアホ馬の顎に膝蹴りを入れる。フラついて頭を揺らし始めたが落ちない。かなりの威力を込めた筈だが…俺はそのまま馬の背に駆け上がった。この凶暴そうな馬の攻撃範囲に降り立つのが嫌だったのだ。

霧が開かれて行く。彼女の意識が飛んで氷塊は全て周囲の樹木や地面、そして怪物共に激突して消え去った。彼らの啜り泣きが聞こえた…あ、アルクメネは?と見ると残念な事に傷一つ負って居なかった。どうやら手前の灌木が代わりを務めてくれたらしい。

追撃を掛ける前にまともに動ける様にしなければ…俺は負傷の影響を軽減する為、気を体内に巡らせる。


ちょうどその時地上では翠の瞳の彼女が虚ろな目に何とか焦点を合わせようとしながら立ち上がった。

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