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導きの灯り〜阿門甲斐吽〜  作者: 阿門 甲斐吽


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【第37話】地下要塞の決戦


 石造(いしづく)りの地下遺構(ちかいこう)最奥(さいおう)(あし)()()れた阿門甲斐吽(あもんかいうん)柏木湊(かしわぎみなと)眼前(がんぜん)に、常軌(じょうき)(いっ)した光景(こうけい)(ひろ)がっていた。


 (ゆか)()(やぶ)り、天井(てんじょう)のコンクリートを(ゆが)ませるようにしてそびえ()血塗(ちまみ)れの巨大(きょだい)(てつ)(くい)


 その周囲(しゅうい)では、大正(たいしょう)噴火(ふんか)記憶(きおく)邪教(じゃきょう)呪術(じゅじゅつ)()ざり()い、(ひと)(かたち)()てたどす(ぐろ)怨念(おんねん)化身(けしん)が、おぞましいうねりを()げて実体化(じったいか)しようと身悶(みもだ)えていた。


「これが、鹿児島市内(かごしましない)霊脈(れいみゃく)根底(こんてい)から(しば)()ける『要石(かなめいし)』の正体(しょうたい)か……!」


 (みなと)(いき)()みながらも、祖父(そふ)から()()いだ手帳(てちょう)(むね)にしっかりと()きしめた。


 その(てのひら)から(つた)わる微弱(びじゃく)(ぬく)もりが、恐怖心(きょうふしん)()退()け、血族(けつぞく)としての覚悟(かくご)(ふる)()たせる。


 あの(しま)海底(かいてい)(しず)んだ(いま)も、地上(ちじょう)(のこ)されたこの呪縛(じゅばく)核心(かくしん)()()らなければ、(まち)本当(ほんとう)平穏(へいおん)(おとず)れない。


「そうだ。(やつ)らはこの地下空間(ちかくうかん)拠点(きょてん)に、霧島(きりしま)から(なが)れる(きよ)らかな龍脈(りゅうみゃく)のエネルギーを()こそぎ(うば)()り、()呪縛(じゅばく)へと変換(へんかん)(つづ)けていた。ここでこの(くい)破壊(はかい)しなければ、これまでの苦闘(くとう)がすべて水泡(すいほう)()すことになる」


 甲斐吽(かいうん)(こえ)には、一切(いっさい)(まよ)いがなかった。


 仕込(しこ)(づえ)(つか)(にぎ)()にぐっと(ちから)()め、黄金色(こがねいろ)霊光(れいこう)刀身(とうしん)へと(まと)わせる。


 その瞬間(しゅんかん)怨念(おんねん)化身(けしん)異様(いよう)咆哮(ほうこう)()げ、巨大(きょだい)(うで)()()ろしながら二人(ふたり)へと(おそ)いかかってきた。


 物理的(ぶつりてき)質量(しつりょう)()えた破壊力(はかいりょく)空間(くうかん)()()き、地下室(ちかしつ)壁面(へきめん)粉々(こなごな)対象(たいしょう)へと(たた)きつける。


(あま)いわ!」


 甲斐吽(かいうん)疾風(しっぷう)(ごと)()のこなしでその一撃(いちげき)をかわし、すれ(ちが)いざまに鮮烈(せんれつ)一閃(いっせん)化身(けしん)巨腕(きょわん)へと(たた)()んだ。


 黄金(おうごん)閃光(せんこう)呪詛(じゅそ)(かたまり)()()がし、化身(けしん)苦悶(くもん)(こえ)()らす。


 しかし、邪教(じゃきょう)呪術(じゅじゅつ)によって強化(きょうか)されたその(からだ)は、わずかな隙間(すきま)からすぐに(くろ)(どろ)のような瘴気(しょうき)()()がらせ、驚異的(きょういてき)再生力(さいせいりょく)()せつけた。


再生(さいせい)するだと……!? ならば、完全(かんぜん)にその(かく)(たた)(つぶ)すしかない!」


 (みなと)全身(ぜんしん)感覚(かんかく)極限(きょくげん)まで()()まし、祖父(そふ)手帳(てちょう)(きざ)まれた()記憶(きおく)自身(じしん)霊力(れいりょく)完全(かんぜん)同調(どうちょう)させた。


 (かれ)身体(しんたい)周囲(しゅうい)に、(あわ)青白(あおじろ)(ひかり)粒子(りゅうし)幾重(いくえ)にも(まと)わり()く。


(みなと)(やつ)(うご)きを()めるぞ!」


 地上(ちじょう)での激闘(げきとう)()え、神楽坂弘恵(かぐらざかひろえ)橘翔平(たちばなしょうへい)地下(ちか)への階段(かいだん)()()りてきたのは、まさにその絶妙(ぜつみょう)なタイミングだった。


(おく)れちまったな! だが、ここからは(おれ)たちも加勢(かせい)するぜ!」


 翔平(しょうへい)大地(だいち)()()らし、全身(ぜんしん)血潮(ちしお)(あつ)くたぎらせながら化身(けしん)側面(そくめん)へと()()んだ。


 (かれ)(はな)圧倒的(あっとうてき)肉弾(にくだん)衝撃(しょうげき)が、化身(けしん)巨体(きょたい)(おお)きくよろめかせる。


聖域(せいいき)(ひかり)よ、この地下(ちか)(やみ)穿(うが)て!」


 弘恵(ひろえ)神楽鈴(かぐらすず)高々(たかだか)(かか)げ、地下空間(ちかくうかん)全体(ぜんたい)(つつ)()むような純白(じゅんぱく)浄化結界(じょうかけっかい)展開(てんかい)した。


 (すず)()共鳴(きょうめい)し、化身(けしん)周囲(しゅうい)()(かこ)んでいたどす(ぐろ)瘴気(しょうき)次々(つぎつぎ)()(はら)い、その(うご)きを完全(かんぜん)(ふう)()める。


 四人(よにん)(ちから)完璧(かんぺき)()()った瞬間(しゅんかん)だった。


(いま)だ、(みなと)……!」


 甲斐吽(かいうん)(さけ)びに呼応(こおう)するように、(みなと)一気(いっき)間合(まあ)いを()め、渾身(こんしん)霊力(れいりょく)()めた(こぶし)化身(けしん)胸元(むなもと)(ふか)くへと(たた)()んだ。


祖父(そふ)()たせなかった(ねが)い、そして(おれ)たちの未来(みらい)のために――ここで()()せろ!」


 (みなと)(こぶし)化身(けしん)(かく)直撃(ちょくげき)した瞬間(しゅんかん)、まばゆい(ひかり)地下空間(ちかくうかん)()()くした。


 怨念(おんねん)化身(けしん)断末魔(だんまつま)悲鳴(ひめい)すら(のこ)すことなく、内側(うちがわ)から(はじ)()ぶようにして霧散(むさん)し、完全(かんぜん)()()っていった。


 (てき)消滅(しょうめつ)同時(どうじ)に、部屋(へや)中央(ちゅうおう)異彩(いさい)(はな)っていた巨大(きょだい)な「封印(ふういん)(くい)」が、ガリガリと不気味(ぶきみ)金属音(きんぞくおん)()てて亀裂(きれつ)(はし)らせた。


「これが最後(さいご)だ!」


 四人(よにん)意思(いし)(ひと)つに(かさ)()わせた甲斐吽(かいうん)渾身(こんしん)杖撃(じょうげき)が、(くい)根元(ねもと)へと正確(せいかく)()()ろされた。


 (はげ)しい衝撃音(しょうげきおん)とともに、(くい)粉々(こなごな)(くだ)()り、その破片(はへん)(くろ)(すな)となって()えていく。


 二本目(にほんめ)(くい)破壊(はかい)された瞬間(しゅんかん)地下遺構(ちかいこう)天井(てんじょう)隙間(すきま)から、どこか(さわ)やかな(そと)(かぜ)()()んできた。


 それは、鹿児島市内(かごしましない)(しば)()けていた重苦(おもくる)しい呪縛(じゅばく)(かせ)(はず)れ、霧島(きりしま)から(なが)れる本物(ほんもの)龍脈(りゅうみゃく)息吹(いぶき)がこの(まち)隅々(すみずみ)にまで()(わた)(はじ)めた証拠(しょうこ)だった。


「やったな……これで市内(しない)結界(けっかい)(おお)きく(よわ)まったはずだ」


 翔平(しょうへい)(ひたい)(あせ)(ぬぐ)いながら満足(まんぞく)げに(わら)うと、弘恵(ひろえ)安堵(あんど)表情(ひょうじょう)()かべてうなずいた。


 しかし、(みなと)(くず)()った(くい)残骸(ざんがい)()つめながら、(するど)視線(しせん)をさらにその(おく)へと()けていた。


「いや、まだ()わりじゃない。手帳(てちょう)記録(きろく)によれば、(のこ)りの(くい)はさらに(べつ)重要拠点(じゅうようきょてん)(かく)されている。すべての因縁(いんねん)()()るまで、()(ゆる)めるわけにはいかないさ」


 四人(よにん)(たが)いに視線(しせん)()わし、力強(ちからづよ)くうなずき()った。


 歴史(れきし)(うら)巣食(すく)邪教(じゃきょう)欺瞞(ぎまん)(あば)き、鹿児島(かごしま)大地(だいち)完全(かんぜん)解放(かいほう)するため、(つぎ)なる舞台(ぶたい)へと(あゆ)みを(すす)めていくのだった。






(だい) 37()(かん)









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