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導きの灯り〜阿門甲斐吽〜  作者: 阿門 甲斐吽


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【第33話】歴史の裏側


 怨念(おんねん)(しま)での(たたか)いから数日(すうじつ)()ぎ、桜島(さくらじま)今日(きょう)噴煙(ふんえん)()火山灰(かざんばい)鹿児島市内(かごしましない)()らせている。


 鹿児島(かごしま)日常(にちじょう)


 人々(ひとびと)はあの(よる)異変(いへん)には()づかず、いつも(とお)りに生活(せいかつ)(おく)っている。


 しかし、阿門(あもん)甲斐吽(かいうん)たちの胸中(きょうちゅう)には、あの隆起(りゅうき)した(しま)()せた禍々(まがまが)しい鳥居(とりい)幻影(げんえい)が、()えない(とげ)のように()()さっていた。


 (なに)より、あの(しま)甲斐吽(かいうん)たちが離脱(りだつ)した直後(ちょくご)巨大(きょだい)(なみ)にのまれて(ふたた)(くろ)海原(うなばら)(そこ)へと(しず)()んでいる。


 神楽坂(かぐらざか)弘恵(ひろえ)は、実家(じっか)(つた)わる古文書(こもんじょ)(やま)から一冊(いっさつ)薄汚(うすよご)れた和綴(わと)じの冊子(さっし)()()いていた。


 表紙(ひょうし)には『大正三年(たいしょうさんねん)記録(きろく)』と(すみ)(にじ)んだ文字(もじ)(しる)されており、ページをめくる指先(ゆびさき)がかすかに(ふる)えている。


 前夜(ぜんや)桟橋(さんばし)()わした会話(かいわ)――自分(じぶん)たちの行動(こうどう)因縁(いんねん)(いと)()()せられた必然(ひつぜん)だったという確信(かくしん)が、いまや(たし)かな歴史(れきし)裏付(うらづ)けを()ようとしていた。


「やっぱり……ここにあったわ」


 弘恵(ひろえ)(つぶや)きに、資料(しりょう)整理(せいり)していた甲斐吽(かいうん)と、実家(じっか)から(もど)った柏木(かしわぎ)(みなと)(たちばな)翔平(しょうへい)視線(しせん)一斉(いっせい)集中(しゅうちゅう)する。


(なに)()いてあったんですか、弘恵(ひろえ)さん」


 翔平(しょうへい)()()()して(たず)ねると, 弘恵(ひろえ)(いき)()み、書物(しょもつ)(ふる)いページを(ゆび)(しめ)した。


大正(たいしょう)大噴火(だいふんか)、その(うら)(おこな)われていた隠蔽工作(いんぺいこうさく)よ。当時(とうじ)為政者(いせいしゃ)一部(いちぶ)権力者(けんりょくしゃ)たちは、噴火(ふんか)をただの自然災害(しぜんさいがい)として片付(かたづ)けようとしたけれど、実際(じっさい)地脈(ちみゃく)(みだ)れは人為的(じんいてき)なものだったの。この土地(とち)霊脈(れいみゃく)(ぞく)()龍脈(りゅうみゃく)私欲(しよく)のために()()げ、()のエネルギーを一箇所(いっかしょ)(ふう)()めようとした呪術者(じゅじゅつしゃ)集団(しゅうだん)がいたわ」


 その言葉(ことば)()いた(みなと)は、コートのポケットから祖父(そふ)手帳(てちょう)()()し、ページを(ひら)いた。


 そこには、弘恵(ひろえ)()んでいる古文書(こもんじょ)記述(きじゅつ)裏付(うらづ)けるように、(べつ)角度(かくど)からの調査記録(ちょうさきろく)(のこ)されている。


(おれ)祖父(そふ)(のこ)した手帳(てちょう)にも、()たような記述(きじゅつ)がある。半世紀以上(はんせいきいじょう)(まえ)から、あの(しま)周辺(しゅうへん)海域(かいいき)だけに奇妙(きみょう)(しお)のねじれが(しょう)じていたこと、そしていつかその(ゆが)みが破綻(はたん)するという警告(けいこく)がね。あの(よる)(おれ)たちが()()せられるようにして(しま)(わた)ったのは、この歴史(れきし)(よど)みが血族(けつぞく)記憶(きおく)()んだからかもしれない」


 (みなと)言葉(ことば)にうなずきながら、翔平(しょうへい)(うで)()んで(つづ)けた。


(おれ)親父(おやじ)()っていた、代々(だいだい)この南九州(みなみきゅうしゅう)(ふる)役割(やくわり)(にな)ってきたっていう家系(かけい)(はなし)も、これにつながるんだろうな。あの(しま)(かん)じた悪寒(おかん)は、祖先(そせん)たちが(のこ)した記憶(きおく)残響(ざんきょう)だったってわけだ」


 甲斐吽(かいうん)(しず)かに()()じ、二人(ふたり)から()()された手帳(てちょう)古文書(こもんじょ)内容(ないよう)(あたま)(なか)(ひと)つに(むす)()わせていった。


古文書(こもんじょ)記述(きじゅつ)と、お(まえ)たちの血脈(けつみゃく)(きざ)まれた記憶(きおく)完全(かんぜん)()()ったな。大正(たいしょう)大噴火(だいふんか)(おり)()()したマグマの(そこ)怨念(おんねん)は、(たん)なる自然現象(しぜんげんしょう)のエネルギーではない。当時(とうじ)呪術者(じゅじゅつしゃ)たちが意図的(いとてき)構築(こうちく)した『構造的欠陥(こうぞうてきけっかん)』によって固定化(こていか)されていたのだ。あの(よる)出現(しゅつげん)したドス(ぐろ)鳥居(とりい)(しま)は、その構造(こうぞう)地表(ちひょう)へと(ゆが)()特異点(とくいてん)にほかならない。だが、その本体(ほんたい)がすでに海中(かいちゅう)へと(しず)んだ(いま)、あの(しま)(たた)くだけでは元凶(げんきょう)()つことはできん」


 甲斐吽(かいうん)重厚(じゅうこう)(こえ)部屋(へや)空気(くうき)()()める。


 歴史(れきし)(かげ)には(つね)(ゆが)んだ信仰(しんこう)私欲(しよく)をむさぼる邪教(じゃきょう)(かげ)があった。


 その邪教(じゃきょう)がこの時代(じだい)(ふたた)(うご)()し、大正大噴火(たいしょうだいふんか)のような大災害(だいさいがい)()()こそうとしてる。


 (しん)元凶(げんきょう)()(くだ)(かぎ)は、(うみ)(なか)ではなく、(りく)随所(ずいしょ)(かく)されていた。


「じゃあ、その元凶(げんきょう)()っこはどこにあるんだ?」


 翔平(しょうへい)()いかけると、弘恵(ひろえ)古文書(こもんじょ)地図(ちず)(ひろ)げ、指先(ゆびさき)でいくつかの拠点(きょてん)辿(たど)った。


呪術者(じゅじゅつしゃ)たちが仕掛(しか)けた『封印(ふういん)(くい)』のような霊的呪具(れいてきじゅぐ)は、(うみ)(なか)だけじゃないわ。(きた)霧島(きりしま)から桜島(さくらじま)()け、鹿児島市内(かごしましない)歴史的(れきしてき)事柄(ことがら)関連(かんれん)している場所(ばしょ)点在(てんざい)し、脈絡(みゃくらく)なく(かく)されているのよ。(かれ)らは霧島(きりしま)からの(きよ)らかな龍脈(りゅうみゃく)をねじ()げ、()呪縛(じゅばく)へと()えるためにこの結界(けっかい)()(めぐ)らせたの。(わたし)たちがやるべきなのは、それぞれの場所(ばしょ)(かく)された呪具(じゅぐ)()つけ()し、(じゅん)破壊(はかい)して霧島(きりしま)からの霊脈(れいみゃく)本来(ほんらい)(なが)れへと解放(かいほう)していくことよ」


 (みなと)手帳(てちょう)をしっかりと(にぎ)()め、祖父(そふ)()たせなかった(ねが)いを()()ぐように力強(ちからづよ)(まえ)見据(みす)えた。


祖父(そふ)(のこ)した記録(きろく)と、この古文書(こもんじょ)(みちび)きがあれば、すべての拠点(きょてん)()()められるはずだ。歴史(れきし)(うら)巣食(すく)邪教(じゃきょう)仕掛(しか)けを(あば)き、すべての因縁(いんねん)決着(けっちゃく)をつけてやるさ」


 交錯(こうさく)する歴史(れきし)真実(しんじつ)()因縁(いんねん)(むね)に、四人(よにん)霧島(きりしま)から鹿児島市内(かごしましない)へと(つづ)呪縛(じゅばく)()くための具体的(ぐたいてき)(たたか)いへと言葉(ことば)(ちか)()った。


 大地(だいち)()(めぐ)らされた()しき(よど)みを解放(かいほう)するための反撃(はんげき)が、(しず)かに、しかし(たし)かな(ねつ)()びて(はじ)まろうとしていた。







(だい)33()(かん)







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