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未来転生したら、家電の王様になっていた

作者: 肩影
掲載日:2026/01/19

目を覚ますと、俺はマッサージチェアの上に寝ていた。

肩と腰に心地よい振動を与えてくれている。


「起きましたね。まったく、最近の転生者は寝起きが悪い」


声の主は、宙に浮いたトースターだった。

銀色のボディ。中にはパンが二枚、きっちり焼き色付きで刺さっている。


「……なんでトースターが喋ってる」


「わたしは案内役です。型番はTG-Ω。誇り高き旧文明製ですよ」


なぜかドヤ声だった。


「ここは千年後の地球。あなたは異世界転生……ではなく、

 “未来転生”になります」


「未来って、こんな感じ!?」


「ええ。人類は三度の文明戦争で滅び、

 その後、環境適応に成功したのが“家電”でした」


軽く言うな。


そのとき、草むらが揺れた。


「ご飯、炊けてます」


二足歩行の炊飯器が現れ、ぺこりと頭を下げる。


「ありがとう。でも状況が追いつかない」


トースターが咳払いする。


「重要な話をしましょう。あなたには特別な能力があります」


「勇者的なやつ?」


「いえ。“家電を最新モデルに進化させる能力”です」


「弱くない!?」


「とんでもない。旧文明基準では、かなり反則のチートスキルです」


――その瞬間だった。


ドドドドド……。


地鳴りとともに、森の奥から“壁”が現れた。

いや、違う。巨大なエアコンだ。

ビルサイズ。室外機が牙みたいに唸っている。


「エアコンキングです!」

トースターが悲鳴を上げた。

「冷房を最大出力にして、森を永久凍土にしようとしています!」


「どうしてそうなった!?」


「旧文明のプログラムが暴走した結果です!」


冷気が一気に広がる。


――まずい。


体が震える。息が白い。

このままじゃ、俺ごと冷凍保存だ。


「早く! アップデートを!」


「距離が遠い! 届かない!」


エアコンキングが咆哮する。

冷気の壁が押し寄せ、視界が白に染まった。


(詰んだ……!)


その瞬間、炊飯器が俺の前に出た。


「人類様。保温、続けます」


「……え?」


炊飯器が限界出力で熱を放つ。

ボディが赤くなり、蒸気が漏れる。


「昔は……おこげも、炊けたんです」


「え?」


「でも今は、効率優先で……消えました」


それでも炊飯器は、動きを止めない。


「役に立てるなら、それで……」


胸が、ちょっとだけ痛んだ。


その隙に、俺は叫んだ。


「アップデート!!」


ピコン。


音は、やけに軽かった。


巨大エアコンが停止する。

次の瞬間、表示が切り替わった。


――【節電モード】。


冷気が弱まり、森に春のような空気が戻る。


「勝った……?」


トースターが感極まって言った。


「伝説です……旧文明すら成し得なかった最適化……!」


周囲の家電たちが集まり、ひざまずく。


「新たな王よ!」

「我らにアップデートを!」

「説明書をお授けください!」


俺はアップデートをしていった。


トースターが叫んでいる

「見てください!省エネなのに、焼き色は完璧です!」


ふと目をうつすと、

炊飯器が自分の表示パネルを見下ろしていた。


「……炊き込みモード、ありませんね」


「え?」


「前は、ありました」


小さく、でもはっきりと。


「でも……省エネですから」


そう言って、炊飯器は静かに笑った。


「最新モデルですから……これが正解なんでしょう」


俺は、何も言えなかった。


「いや、俺ただの一般人だから!」


だが誰も聞いていない。


こうして俺は、

千年後の地球で 家電の王様 になった。


アップデート待ちの行列は、

今日も終わらない。


――便利になるたび、

何かが、少しずつ置いていかれる世界で。


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