第9話 街に住んでいる遊び人の所へ向かってみる
レイナウトとロースと別れた後、俺はまず考えた。
お金をカードに入金する必要がある。
隠しポケットに分散している金貨を、全てカードに入れたい。
そうすれば――
安全だ。
俺は、ギルドへ向かう。
この街は人口10万人を超える大きな街だ。
だから、いちいち今回の選定で外れ職業を引いてしまった俺の事なんか気にも留めないだろう。
そう思っていた。
だが――
ギルドの建物に入った瞬間――
一瞬にして、静まり返った。
え?
俺は驚く。
何か遊び人というオーラが出ているのだろうか?
それとも既に噂がかなりの広範囲に広がっていたのだろうか?
実は違った。
俺の事を知っている同い年のうちの一人が、俺を見かけたらしい。
そして、ギルドの建物に駆け込み、「今から遊び人が来る」と言いふらしたようだ。
《うわ! あれがサードジョブまで引いて全て遊び人だった奴なのか?》
《どれだけ運がねえんだよ》
《私の所に来ないでよ? 遊び人に関わったら妊娠しちゃうわ!》
ひそひそと話す声が、聞こえてくる。
最後の――
まさか俺が貴女を妊娠させるとでも?
そういう事も調べた事はあるが、恥ずかしいけれどまだ精通してないから妊娠させられない。
心の中でそう思うが、まさかそんな恥ずかしい事を言える訳もない。
俺は――
受付に向かう。
そんな中、俺を睨めつけてくる受付の人がいた。
敢えて――
そちらに向かう。
「すいません、カードに入金をしたいのですが」
俺は、丁寧に言う。
「うわ、私の所に来たよ! ってああごめんね、ようこそギルドへ。本日は何の用かしら?」
受付の女性が――
明らかに嫌そうな顔をする。
はじめて会ったのに、いくら外れの職業だからって、あまりいい対応とは思えない。
「カードに入金してほしいんです」
俺は、もう一度言う。
話を聞いていない。
なぜ二度も言わないといけないんだ?
「いいわよ、金出して?」
かなりいい加減な対応だ。
俺は、お金を出す。
金貨5枚、銀貨7枚、銅貨3枚。
俺が今まで、地道に稼いできたお金だ。
「うわ! 遊び人って意外と金持ってんのねえ?」
受付の女性が、驚いた声を上げる。
仮にもギルドの受付が、このような態度でいいのだろうか?
もしかしたら今対応している人物は、将来大物になる可能性があるのに。
こんな塩対応をしてたら、後々大変な事になるよ?
内心そう思うが、口に出しては――
「お手数おかけします」
俺は、丁寧に言った。
すぐに入金が終わったようだ。
「一応カードを確認して」
俺は、カードを見る。
金額欄に――
残高:
金貨 5枚
銀貨 7枚
銅貨 3枚
と出ている。
手数料は取らないんだな。
少し、安心した。
「用が終わったらさっさと出てって」
受付の女性が、冷たく言う。
俺は――
色んな意味で驚きつつ、お礼を言って出た。
もっと確認したい事もあった。
冒険者としての登録、依頼の受け方、ダンジョンの情報――
でも、この状況では聞けない。
仕方ない。
俺は、以前会った事のある遊び人の職業を持っている人の所へ向かう事にした。
以前話をした時――
【君が遊び人になってしまったらまた来るよう】
と言われ、相手にしてくれなかった人物。
そこへ向かう。
街を歩く。
人々の視線が――
相変わらず痛い。
だが、俺は下を向かない。
前を見る。
歩く。
そして――
遊び人の家に着いた。
通りから少し中に入った、裏口のような場所。
ここだ。
俺は、扉をノックする。
しばらくして――
扉が開いた。
「何だ坊主、まさか遊び人になったんじゃないだろうな?」
30代半ばに見える男性が、俺を見下ろす。
トゥーニス――
以前会った、遊び人だ。
俺は黙って、カードを差し出す。
トゥーニスは、カードをマジマジと見る。
その目が――
少しだけ、驚く。
そして――
「……入れ」
トゥーニスが、短く言った。
俺は――
遊び人の住んでいる建物へ、最初の一歩を踏み出した。




