第8話 親友との別れ
家を出て、俺は街を歩く。
どこへ行けばいいのか――
まだ、決めていない。
宿か?
それとも、遊び人のところへ向かうか?
そんなことを考えながら、歩いていると――
「デルク」
小さな声が、俺を呼んだ。
俺は立ち止まる。
路地裏の影から、2人の人影が手招きしている。
レイナウトと――ロース。
俺は急いで、路地裏に入る。
「すまないデルク、俺は君を見捨ててしまった」
レイナウトが、俯いて言った。
レイナウト・モレナール――
俺の一番の親友だ。
今回の選定で、魔法戦士という上位職を引き当てた。
特にいい職業を引いたメンバーの一人だ。
だが、彼は今――
俺に謝っている。
「仕方ないよ。まさか遊び人と一緒に行動する訳にはいかないしね」
俺はそう言って、笑ってみせた。
だが――
心の中では、寂しかった。
「本当にすまん。折角一緒のパーティーになれると思ったのだが」
レイナウトの声が――
震えている。
「気にしなくていいさ。まあ大人になって、俺を見る目が変わって受け入れられるようなら、パーティに誘ってくれたらいいよ」
俺は、レイナウトの肩を叩く。
「まあお互い先ずは15歳まで生き残らないとね、レイナウト、そしてロース」
「ごめんな」
レイナウトが、もう一度謝る。
彼は――俺より相当賢いと思っている。
どんな問題も、すぐに解決策を見つける。
そして折角いい職業を引いた彼も、成長速度が遅い職業だった事もあり――
やがてパーティーを組んでも、荷物扱いになり追い出される運命にあった。
だが、今の俺は――
それを知らない。
そしてもう一人――
ロース・ランブレヘツ。
レイナウトの事が好きな女の子だ。
「私もごめんね」
ロースが、小さな声で言った。
彼女は精霊使いという、やはりレアな職業を引き当てた。
将来を有望視されている。
だが、やはりレイナウトと同じパーティーに入ったがいいが、あまり見かけない職業故に持てあまされ――
最終的には使えないとパーティーをレイナウトと共に追放される事になる。
しかし今は、3人とも知る由もない。
「またいつか再会できるといいね」
俺はそう言った。
本来なら、一緒に行動すべき親友達だ。
3人でパーティーを組んで、冒険者として活動する約束をしていた。
だが――
今は、こうしてこっそりお別れをしないといけない。
それが――
無性に悲しかった。
「しかしデルク、家を追い出されたんじゃないのか? これからどうするんだ?」
レイナウトが、心配そうに聞いてくる。
「その事だけどね、今まで少しだけどお金を蓄えてあるんだ。数日は宿で過ごす事ができるから、その間に身の振り方を決めるさ。万が一の事を考えて色々計画はしてあったんだ。流石に遊び人になるとは思わなかったけれど」
俺はそう答えた。
実際、万が一に備えて、色々準備していた。
だが――
まさか自分が遊び人×3になるとは、思ってもみなかった。
「でもデルクの事だから、遊び人になってしまった時の事も考えてたんじゃないの?」
ロースが、俺を見る。
「うん。この街の遊び人の何人かとは話をした事があるんだよ。皆一癖も二癖もある連中だったけど、最終的には彼らを頼ってみようと思うんだよ。基本俺たち見習いは、街に同じ職業の大人がいれば、弟子入りできるって話だからね」
俺はそう言った。
遊び人たちは――
【君が遊び人になったらまた来なさい】
と言っていた。
まるで、知っていたかのように。
「しかし遊び人に弟子入りか。君は俺以上に賢いから、世間の言う遊び人にはならないと思うけど」
レイナウトが、少し安心したように言う。
「俺もそうなるつもりはないさ。まあ、遊び人という職業にも何かあるんじゃないかとは思ってるから。いつかきっと俺を馬鹿にした連中に対して見返してやりたいぐらいには思ってるからね。見返せたらいいなあ」
俺はそう言って、笑った。
その時――
遠くから、人の気配がした。
「デルク! 人が来るわ!」
ロースが、緊張した声で言う。
「うん」
俺は、2人を見る。
このままじゃ――
レイナウトとロースも、俺と一緒にいたということで攻撃される。
それは――絶対に避けないといけない。
「レイナウト、ロース、もっと話をしたいけど、ここでお別れだ」
俺は、2人に言った。
「それと、急いで地面の石を拾って。そして俺が去ったら拾った石を俺に向かって投げるんだ。きっと俺と一緒に居たら、君達も俺と同じようにみられるからさ」
レイナウトとロースは――
一瞬、驚いた顔をする。
だが――
すぐに理解したようだ。
2人は、地面の石を拾い始める。
「デルク元気でな!」
「また会えるといいわね!」
「ああ、二人ともまたどこかで再会しよう!」
俺は、その場から離れる。
走る。
そして――
ドサッ。
石が、俺の足元に落ちた。
わざと、狙いを外してくれている。
ドサッ、ドサッ。
何個も石が飛んでくる。
だが、どれも俺に当たらない。
2人は――
俺を守ってくれている。
「おい! 遊び人を攻撃してる奴らがいるぞ!」
「よくやった! そうだ、遊び人なんか追い出せ!」
後ろから、声が聞こえる。
俺を追っていた連中が、レイナウトとロースを褒めている。
2人は――
俺を攻撃したことで、「正義の側」として認められた。
これで、2人は安全だ。
俺は――
走り続けた。
レイナウト、ロース――
また会おう。
必ず。




