第73話 2人を移動させる
何事もなく――
3人の所へ、合流。
セシルが――
駆けてやって来て――
「デルクおかえり」
セシルが――
言う。
「ただいまセシル」
俺は――
答える。
相変わらず――
ヘルメットを装着しているせいで、顔の表情がわからない。
だけど――
何となく、微笑んでくれた気がする。
いつも――
このヘルメットのせいで、少し声がこもった感じに聞こえ――
尚且つ、セシルの性格なのか――
セシルは、言葉数が少ない。
なので――
どうしても、ぶっきらぼうな感じになってしまう。
そうではないと――
知っている俺ですら、そう感じてしまう。
なので――
俺以外だと、きっと今のセシルと接すれば――
なおさら、そう感じてしまうだろう。
しかし――
セシルと数ヶ月過ごしてきて、セシルの事がより深くわかってきた。
なので――
今では、セシルの事がとてもよくわかる。
優しい――
本当に、優しい子だ。
「セシル、レイナウトとロースは相変わらず寝ているのかな?」
俺は――
聞く。
今は――
寝ている。
だが――
もしかして気が付いたりとかの可能性も、あった。
なので――
確認の為に、聞いてみる。
「ん、ずっと寝ている」
セシルが――
答える。
「そうか、留守番させてすまなかったね」
俺は――
謝る。
「ん」
セシルが――
頷き、ロースの所に向かう。
さて――
このままここに2人を寝かせておくのも、忍びない。
そして――
上の階層にある【家】まで、何とかして運びたい所だ。
問題は――
どうやって、運ぶか。
何にしても――
マットの上へ寝かせた状態では、とてもではないが運べない。
かといって――
囲いへ入れるにも、既に囲いは壊れ――
そもそも、そこまで広くはない。
では――
どうするか。
簡易ベッドか――
担架を作って、そこに横たわってもらうのが一番かな。
ただ――
あまり大きいと、階段を上がるのが大変。
大穴から――
上に向かったとして、また上から何か落下してきた場合――
2人が、かなり危険にさらされる。
最悪――
ぶつかった衝撃で、俺達が取り落とし――
穴の下へ、落下してしまう可能性がある。
考慮すると――
階段を利用する他、ありません。
しかし――
俺はいいけれど、セシルでは非力なので――
2人を運ぶのは、難しいだろう。
では――
どうするか。
考えられる方法は――
2つ。
1つは――
フライの魔法を駆使し、浮いた2人を俺とセシルが運んでしまう、という行動。
これなら――
浮遊の魔法でもいいのだが、浮遊って使う機会がない。
なので――
フライを使う事は多いのだけど……
いざ――
身動きの取れない人に使うのは、躊躇してしまう。
まあ――
囲いを上に下に移動した事はある。
なので――
イザとなれば、どうにでもなりそうだけど。
もう1つは――
車を作成し、そこに乗せるというもの。
別に――
車ではなくても、ベッドにタイヤを取り付け押していけば、という感じなのだが――
問題は、どうやって階段を上っていくか。
階段を――
そのまま転がせられる仕掛けを作る事が出来れば、いい。
だが――
流石に、そんな複雑なベッドを短時間で作る自信はない。
作ったとして――
いきなり人を運ぶのは、リスクが高すぎる。
なので――
今思いついた案としては、ベッドとタイヤの間隔を長くし――
階段を上る時、その長さのある脚が傾き――
ベッドは並行になったまま登る事が出来る、と言う仕掛け。
いや――
ベッドは並行でなくても、いいのかなこの場合。
頭が――
上になるようにすれば、いいわけで――
ならば、階段の下になる側のタイヤを複数用意し――
それが階段の段差でクルクルと回って、階段を登っていけるという仕掛け。
じっくりと――
作業をする時間があれば、いい。
だが――
今は、その時間はない。
なので――
これは、後回しだな。
いずれは――
作ってみる価値って、あるかな。
結局――
魔法で運んでいく事に、した。
頑丈な担架を――
まあ、ベッドだな……
用意し、2人をそれぞれ寝かせる。
まあ――
一応、ベルトで固定はする。
で――
フライの魔法で浮かせ、ベッドを俺とセシルで運んでいく。
魔法の効果は――
抜群で、特に重さを感じる事なく――
あっという間に、【家】へ辿り着いた。
流石は――
フライだ。
早速――
中へ入り、ベッドがある。
なので――
レイナウトとロースを、寝かせる。
「何だか久しぶりだね。まあこの階層で【家】は初めてだけど」
俺は――
言う。
「疲れた。お風呂へ入ってすっきりして寝たい」
セシルが――
言う。
「そうだね、では風呂の準備をして入って寝よう」
俺は――
答える。
恐らく――
此処までやってくる冒険者は、皆無。
だから――
見張りをつけないまま、ずっと家で過ごしてきたのだけど……
今回も――
そうする。
まあ――
結果は、誰も来なかったのだけど。
俺とセシルは――
それぞれ風呂を済ませた後――
あっという間に、寝てしまった。
疲れた――
本当に、疲れた。
だが――
2人を、助けられた。
よかった――
本当に、よかった。
俺は――
安堵した。
セシルと――
一緒なら、大丈夫。
そして――
レイナウトとロースも、いる。
4人――
なら、何とかなる。
俺は――
そう信じた。




