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「遊び人×3を引いた10歳の俺、ジョブ統合で規格外になる」  作者: よっしぃ@書籍化
第一章:職業選定

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第7話 家を追放

 教会を出て、俺は家に向かう。

 報告しないといけない。

 伯父さんと伯母さんに――

 俺が遊び人×3になったと。


 街を歩く。

 いつもと同じ道。

 いつもと同じ景色。

 だが――

 人々の視線が、違う。

「あれが遊び人×3の……」

「可哀想に」

「いや、あいつが悪いんだろ」

 ひそひそと話す声が、聞こえてくる。

 噂は――

 もう広まっているようだ。

 俺は、下を向いて歩く。

 視線が――

 痛い。


 家が見えてきた。

 数年間、世話になった家。

 両親が死んでから、ずっとここで暮らしてきた。

 伯父さんと伯母さんは――

 俺を受け入れてくれるだろうか?

 いや、無理だろう。

 遊び人×3なんて――

 誰も受け入れない。

 俺は、覚悟を決めて扉を開けた。


 家に入ると――

 伯父さんと伯母さんが、待ち受けていた。

 どうやら噂が広まっていたようで、2人は既に俺が遊び人を選定してしまった事実を知っている様子だ。

「おいデルク、どういう事だ? お前と一緒に選定に向かった連中が、ことごとく儂の家に暴言を吐いているではないか! 遊び人の住む家だ!と。まさかおまえ、遊び人なんて職業になったんじゃないだろうな!」

 伯父さんの声が――

 怒りに満ちている。

 伯父さん、ごめんなさい。

 そのまさか――なんです。

 俺は無言で、カードを差し出す。

 伯父さんは黙ってカードを受け取り、伯母さんに渡す。

 伯母さんも震える手で受け取り、カードを見ている。

 その目が――

 だんだん大きくなる。

 そして――

 俺にカードを返してくれた。


「可哀想な弟の子だと思って世話をしてきたが、遊び人の面倒を見るほどお人好しじゃないのでな。今日を限りに出ていってもらおうか!」

 伯父さんの言葉が――

 胸に突き刺さる。

「あ、あなた! いくらなんでもそれは!」

 伯母さんが、伯父さんを止めようとする。

「いいかお前! デルクがこのままこの家に居続ければ、さっきの連中がまたあんな事をしてくるんだぞ?」

 伯父さんが、伯母さんに言う。

「で、ですが。お義姉様と約束しましたのに」

 伯母さんの声が――

 震えている。

 お義姉様――

 俺の母さんのことだ。

 伯母さんは、母さんと約束したんだ。

 デルクを、10歳になるまで育てると。

「もう選定を受けたんだ、義理は果たしたさ。弟も遊び人になった息子の面倒を見ろとは言わんさ」

「ですが……」

 伯母さんが、まだ何か言おうとする。

 だが――


「なあそうだろデルク? 俺達はお前をここまで面倒見てやったんだ。お前ならわかるだろう?」

 伯父さんが、俺に言う。

 その目は――

 俺に、わかってくれと訴えている。

 俺は――

 頷いた。

「はい伯父さん。悪いのは遊び人を選定してしまった俺です。伯母さんも今までお世話になりました、そしてありがとうございました。荷物をまとめ、出ていきます」

 俺はそう言った。

 伯父さんの顔が――

 少しだけ、安堵する。

「まあ、その、デルクよ、恨むんじゃないぞ?」

「分かってます。むしろ今までこうしてよくして下さった事、このご恩は一生忘れません。それでは部屋の荷物をまとめ、出ていきます」

 俺は、泣きそうになるのを必死に堪える。

 ここで泣いたら――

 伯父さんと伯母さんを、困らせてしまう。

 俺は、部屋に向かった。


 部屋に入る。

 数年間、暮らした部屋。

 小さな部屋だけど――

 俺の居場所だった。

 もう――

 ここには戻れない。

 俺は、上着を脱ぐ。

 そして、隠してあった服に着替える。

 万が一があった時の備えだ。

 服にはポケットを仕込んであり、そこに今まで地道に稼いだお金――金貨数枚だけど――を服やズボンの隠しポケットにしまっていく。

 万が一財布を無くせば、全て失う。

 それを避けるために、こうして分散している。

 今はカードがあるので、後でギルドでカードに入金しないといけないが。


 俺は、冒険者として活動できるよう準備してあった荷物を取り出す。

 着替えの服、小袋、小さな水筒、食器、ロープ――

 全てカバンに入れる。

 腰には、あまり切れ味はよくないが、ナイフよりは大きいショートソードに見えなくもない剣をさす。

 懐には、ナイフを仕込む。

 少量だが、用意してあった薬も持ち出す。

 残念ながら、全てを持ち出すには俺の体は小さすぎる。

 諦めて、手提げカバンに入るだけ入れる。

 こちらは万が一捨ててもいいもの――予備の服などを入れる。


 準備ができた。

 俺は、部屋を見渡す。

 最後に――

 この部屋を、見ておこう。

 ベッド、机、窓――

 全て、思い出がある。

 だが――

 もう、ここには戻れない。

 俺は、部屋を出た。


 伯父さんと伯母さんに、最後の挨拶をする。

「それでは、お世話になりました」

 俺は、深く頭を下げる。

 2人は――

 何も言わなかった。

 ただ、黙って見ている。

 俺は、扉を開ける。

 外に出る。

 扉が――

 閉まる。

 結局、2人は見送ってくれなかった。

 だが――

 仕方ない。

 俺は――

 遊び人×3なんだから。

 そして俺は、住処を失い、今後の見通しも立たないまま、この場を去った。


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