第6話 カード
第6話 カード
「知っておるとは思うが、そのカードは本人以外使えぬから安心するがよい」
司祭様が、カードについて説明してくれる。
「これも知っておるとは思うが、金銭のやり取りもそのカードで行う事ができる故、くれぐれも失くさぬようにな。再発行はできるが、カードの中に残っていた金がどうなるかは分からぬからな。一応最後の取引先さえ分かれば、そのやり取りから判断できる場合もあるのじゃが、それも実際にはわからぬ」
カードで金銭のやり取り――
便利だな。
でも、失くしたら大変だ。
俺は、カードを大切にしまう。
「それと、カードは小さいので、表示される項目には限度がある。表示しきれなくなれば、個人で表示機能のある表示板を購入するか、ギルドや商館等に設置してある場所で確認できるのじゃ」
表示板――
そんなものがあるのか。
「それと、見せたくない表示は伏せる事ができるが、それはスキルやステータスであって、名前・種族・年齢・性別・レベル・職業・賞罰・所属は表示を常に見せないといけないようでな」
司祭様が、丁寧に説明してくれる。
職業は――常に表示される。
つまり、俺がどこに行っても、【遊び人×3】だとバレる。
隠すことはできない。
「女性の年齢丸わかりっていいの?」
俺は、つい口に出してしまう。
「ああ、年齢制限のある場所もあるし、こうした時に年齢を偽る行為を抑止する為らしいのじゃ」
なるほど。
「ステータスやスキルはバレると場合によっては面倒事に巻き込まれるとかで、普段は消すようにと全員に申し伝えておる」
面倒事――
確かに、ステータスが高かったら狙われるかもしれない。
俺は、ステータスを非表示にする。
今、俺のカードはこうなっている。
<名前:デルク・コーネイン>
<種族:人間>
<年齢:10>
<性別:男の子>
<LV:0>
<職業:①遊び人:②遊び人:③遊び人>
<称号・賞罰>
遊び人見習い
<所属>
無し
シンプルになった。
でも――
レベルの表示が出ている。
これも強さがある程度わかるのに。
「レベルは消せないんですか?」
「ああ、依頼を受ける時の目安になるのでな。レベルが1や2でいきなりドラゴンとか無理じゃからな」
司祭様が笑う。
確かに――
レベル1でドラゴンに挑んだら、一瞬で死ぬ。
司祭様は、他にも細かい説明をしてくれる。
カードの使い方、ギルドでの手続き、冒険者としての心得――
全て、俺が今後生きていくために必要な知識だ。
俺は、真剣に聞く。
「これ以上儂にしてやれる事はない。教会では1人に偏った手助けはしてはいけぬのでな。すまぬなデルク、力になれず」
司祭様が、申し訳なさそうに言う。
「いえいいんです。こんな外れ職業を引いた俺がいけないのですから」
俺はそう答えた。
だが、司祭様は首を横に振る。
「運が無かったと言うしかないのう」
そして――
司祭様は、俺のカードをもう一度見る。
「しかし気になるのは、デルクのステータスじゃ。其方の運はA判定じゃろう? こんな強運の持ち主を、儂は未だかつて出会った事が無いのじゃがな」
運A――
そんなに珍しいのか。
「ひょっとしてその遊び人という職業、化けるかもしれぬのでな、気を落とさぬように」
司祭様が、励ますように言ってくれる。
化ける――
遊び人が、化ける。
その言葉に――
俺は、少しだけ希望を感じた。
「はい、ありがとうございます!」
「それと、今後はもう頻繁には来ぬようにの。選定を受けた者が用もないのに頻繁に来てはならぬし、今後は教会での手伝いは無用なのでな。それは今後選定を受ける者が受け持つ務め故」
司祭様の言葉に、俺は少し寂しくなる。
ここは――
俺が通っていた場所だ。
もう、来られないのか。
「わかっております司祭様。それでは俺、行きます。今までの事、感謝いたします。それでは、失礼します」
俺は深く頭を下げて、部屋を出た。
廊下を歩く。
教会を出る。
外は――
まだ明るかった。
選定は終わったようで、子供たちは皆帰っていった。
俺も――
家に帰らないといけない。
伯父さんと伯母さんに、報告しないといけない。
遊び人×3になったと。
きっと――
追い出されるだろう。
だが、仕方ない。
俺は――
歩き出した。
(語り手視点)
教会の奥の部屋で――
司祭は、一人呟いていた。
【くっ! まさかこの儂の目の前で遊び人が出るとは! しかも3連チャンでだと? そんなの大司祭に言える訳が無かろう! 何て事をしてくれたのだデルクよ! 其方には期待しておったのに! くそがっ!】
司祭の顔は――
デルクに見せていた優しい顔とは、まるで違っていた。
【だが、万が一化けるともしれぬし、ああ云っておかねばな】
司祭は、自分の出世のことしか考えていなかった。
遊び人が出たことを大司祭に報告すれば、自分の評価が下がる。
大司祭への昇進が――遠のく。
だから、報告しない。
そして、デルクが化ける可能性に賭ける。
もし化ければ、「私が育てた」と言える。
もし化けなければ――
事故に見せかけて、始末すればいい。
結局――
司祭様にも見捨てられていた、デルクだった。




