第51話 下へ降りてみる
「セシルって修道院にいたんだよね?」
俺は――
聞いてみる。
でも――
選定後は、教会の世話になっていた?
「基本的に修道院で暮らしている」
セシルが――
答える。
「じゃあ教会へは?」
俺は、続ける。
「神聖騎士になってから。冒険者として行動する事になってから。選定後は司祭様の元で学び、装備も司祭様が管理をしてくれていた」
セシルが――
説明する。
「あ、そうか。わかった。気になっていたんだ。セシルの装備は司祭様じゃないと外せないんだね」
俺は――
納得する。
「あ……そうだったのか! 確かに自分では外せないから司祭様にやってもらっていた」
セシルが――
驚いた声で言う。
自分では――
外せない装備。
不便だ――
そう思う。
「まあ、そのうち調べて俺でも外せるように頑張るよ……これからよろしくね!」
俺は――
セシルの手を取り、握手をする。
金属の――
冷たい感触。
鎧越しだから――
温もりは、感じられない。
だけど――
確かに、そこにセシルがいる。
「あ……」
セシルが――
戸惑っているようだ。
手が――
少し、震えている。
男の人が――
苦手だと言っていたな。
だけど――
これから、どれぐらい時間かかるのかわからないけど――
脱出するまでは、一緒に行動するんだ。
これぐらいは――
慣れてもらわないと。
俺は――
優しく、手を握った。
さて――
どうすべきかなんだけど、その前に――
もしはぐれたら、どうするか、だよね。
「セシル、俺とセシルは極力行動を共にしないといけないけれど、もし魔物との戦闘中にはぐれたりしたら、お互い探さないで、まずは此処に戻ろう。いいね?」
俺は――
ルールを決める。
「ん……わかった。だが、戻らなければ?」
セシルが、聞く。
「その時は……身の危険がない場所ならいいけれど、魔物や魔獣のいるエリアなら、無理に探してはいけない。その時はもう死んだものと思って、今後は1人で脱出する術を見つけないといけない」
俺は――
厳しいことを言う。
だけど――
これは、大事なことだ。
「助けてはいけないのか?」
セシルが――
悲しそうに聞く。
「うん、もし俺が戻らなければ、探す必要はないよ。セシルとはぐれてここに戻れなければ、もう探しても無駄だからね」
俺は――
そう言う。
だが――
セシルには、こう言ったものの――
もし立場が逆なら、絶対にセシルが見つかるまで探すだろう。
絶対に――
見捨てたりしない。
だけど――
セシルには、危険な目に遭ってほしくない。
だから――
こう言うしかない。
そもそも――
こんな事態とならないよう、事前にしっかり対策を取っておく必要がある。
さて――
何時までもここに居ては、近い将来食糧が尽きるし、脱出できない。
それに――
万が一、追手がここまでやってきた場合は、どうすれば?
可能性は――
低いと思うが、ゼロではない。
時間はかかるけれど――
何とか魔物と戦って、レベルを上げないといけない。
そして――
自力でもっと下へ行けるまでにならないと。
だけど――
2人で、どこまで行けるのだろうか?
上手く――
魔法陣を使えるようになれば、いいんだけど。
因みに――
魔法陣の行く手を遮っている岩は、俺の収納カバンでは収納できなかった。
大きすぎるのか――
重すぎなのだろう。
俺の所有している収納カバンの重量制限は――
100キロまでだし、どう見てもかなりの重量物と思われるので――
仕方がない。
土魔法で――
何とかできないか、後で試してみよう。
「セシル、今からもう少し下へ降りようと思うけれど、大丈夫かい?」
俺は、セシルに聞く。
「問題ない。この下は何だろう」
セシルが、答える。
「わからないけど、たぶん果物とか野菜じゃないかな? そうじゃなければ色々厄介なんだ」
俺は――
予想を言う。
ダンジョンの構造からすれば――
食べ物の階層のはずだ。
「そうか。食料は大事だな。ここにはきっと長く留まる必要があるだろうし。迷惑をかけるが、よろしく頼む」
セシルが――
言う。
今度は――
セシルから、手を差し出してくれた。
俺は――
しっかりと握る。
そして――
そのまま、手を繋いだ状態で下へ向かう。
セシルの手は――
鎧越しでも、少し震えている。
怖いのかな――
それとも、緊張しているのかな。
「そうそう、一応パーティー申請は終わっているから、今日から俺達はパーティーメンバーさ。まずは下がどんな所か確認しよう」
俺は――
明るく言う。
セシルを――
安心させたい。
【わかった……デルクと私が仲間……嬉しい……】
セシルの――
小さな声が聞こえた。
独り言――
だろうか。
「何か言った?」
俺は、聞く。
「いやいい。気にしなくていい」
セシルが――
慌てて言う。
顔が見えないから――
どんな表情か、わからないけれど。
嬉しい――
そう言ってくれた。
それだけで――
俺も、嬉しい。
まだ警戒してるのかな――
とも思ったけれど、少しずつ心を開いてくれている。
それが――
わかる。
俺は――
セシルの手を、優しく握った。
そして――
2人で、階段を降り始めた。
下には――
何が待っているのだろう。
不安は――
ある。
だけど――
2人なら、大丈夫。
俺は――
そう信じた。




