第5話 司祭様とお話しを
奥の部屋で、俺は待っていた。
窓から差し込む光が、床に長い影を作っている。
外からは、まだ選定が続いている音が聞こえてくる。
祝福の声、笑い声――
でも、俺には関係ない。
俺は――
遊び人×3。
誰からも祝福されない。
どれくらい経ったのだろう。
扉が開いて、司祭様が入ってきた。
「ふう、すまんなデルク。まさかこのような事態になろうとは」
司祭様が、椅子に座る。
その表情は――疲れているように見えた。
「こればかりは仕方ありません。遊んでいたつもりはないのですが」
俺はそう答えた。
司祭様がこう言ってくださるのは、ひとえに俺がここに時間があれば手伝いに来ていたからだ。
教会の掃除、祭壇の手入れ、選定の準備――
できることは、何でもやってきた。
だから司祭様は、俺のことを知ってくれている。
「しかし皆のデルクを見る目は酷かったのう。今後其方は周りから常にああした目で見られるであろう。他人の助けも期待できまい。何せ遊び人という職業、大成した人がおらぬのでな。役立たずの烙印を押されて久しい」
司祭様の言葉が、胸に刺さる。
役立たず――
俺は、役立たずなのか。
「ええ、知ってます。街にも数人いらっしゃるだけとか、遊び人の職業」
「何だ知っておるのか?」
「ええ。何度かお話をしましたが、【君が遊び人になったらまた来なさい】と言われるばかりで、何かあるのでしょうか?」
俺は、以前会った遊び人たちのことを思い出す。
彼らは――なぜか、俺が遊び人になることを前提として話していた。
まるで、知っていたかのように。
「さてな。儂も遊び人はよく知らぬのじゃ。心底遊んだ奴がなる場合もあるが、そうでない場合もある。デルクは儂から見ても遊んでおったようには見えぬがな」
司祭様は、俺を見る。
「さあて、今後の事じゃが、3つも職業があると、成長にも時間がかかろうて」
俺の職業は3つ。
職業が3つあると、レベルを上げるのに時間が掛かる。
つまり――
成長速度は人のおおよそ3分の1。
これだけでも大いなるハンデだ。
それに加えて、職業が遊び人。
どこのパーティーも、俺を入れてくれないだろう。
「15歳になれば、冒険者として外で活動をする事になろうが、ソロでやっていくしかあるまいて。運が良ければ誰か入れてくれるかもしれぬがな」
15歳――
あと5年。
その間、俺はどうすればいいんだ?
15歳になったら一緒にパーティーになろうと約束していた友人は皆、俺から離れた。
悲しい。
正確にはそうではないが、一部は泣く泣く離れざるを得ないといった所だ。
まさか選定を受けた職業でこうなるとは、夢にも思わなかった。
「家に戻って家族に報告をせねばなるまいて。確かデルクは親戚の所で世話になっておるのだったな?」
「はい、もしかしたら追い出されるかもしれませんが」
俺はそう答えた。
伯父さんと伯母さんは――
俺を受け入れてくれるだろうか?
いや、きっと――
追い出されるだろう。
遊び人×3なんて、誰も世話したくない。
「おっと忘れておったよ。これはデルクのカードじゃ。ここに血をたらせばよい」
司祭様が、カードの裏を示してくれる。
俺は、カバンから小型のナイフを取り出す。
刃を、指先に当てる。
痛みが走る。
だが、今の俺には――
そんな痛みは、どうでもよかった。
血を、カードに垂らす。
カードが光る。
そして――
内容が書き換わった。
<名前:デルク・コーネイン>
<種族:人間>
<年齢:10>
<性別:男の子>
<LV:0>
<職業:①遊び人Lv0:②遊び人Lv0:③遊び人Lv0>
<力:F>
<体力:F>
<知力:B>
<精神力:B>
<俊敏:E>
<魅力:C>
<運:A>
<保有スキル>
鍛冶Lv1・道具作成Lv1・剣術Lv1・採取Lv1
<特殊スキル及びギフト>
???・???・???
<称号>
遊び人見習い
<所属>
無し
俺は――
自分のステータスを見た。
これが――俺?
力、体力、俊敏は低い。
戦闘には向いていない。
だが――
知力、精神力はB。
悪くない。
そして――
運は、A。
運A――
これは、何を意味するんだろう?
こんなに運が高いのに、なぜ遊び人×3なんて引いたんだ?
矛盾している。
「其方の運はA判定じゃろう? こんな強運の持ち主を、儂は未だかつて出会った事が無いのじゃがな」
司祭様が、俺のカードを見て言う。
「ひょっとしてその遊び人という職業、化けるかもしれぬのでな、気を落とさぬように」
化ける――
遊び人が?
本当に、そんなことがあるのだろうか?
「はい、ありがとうございます!」
俺は、そう答えた。
だが、内心では――
半信半疑だった。




