第32話 5層のボス部屋
いくら――
ダンジョンだから油断はできないと言っても、4層のゴブリンが弱すぎて拍子抜けだ。
「デルク、もういいだろう? さっさとボス部屋攻略しちゃって、6層へ行くぞ?」
ヴィーベが――
せっかちだ。
「何慌ててんのよ? もう少しゆっくりとダンジョンに慣れたほうがいいわよ。そう思うでしょ? デルク」
リニが、呆れて言う。
俺も――
そう思う、リニさん。
「いいよな毛糸のパンツ穿いてるやつは、尻暖かくて」
ヴィーベが――
また言っている。
まだ言っているんですか?
「大穴に落ちてしまえ!」
リニが――
叫ぶ。
そして――
見事なキック。
毛糸のパンツが、丸見えだけど。
そして――
「落ちたら死ぬ! やめてくれええ!!!!」
ヴィーベの悲鳴が――
響く。
大穴の近くでは――
大変危険な行為なので、皆さんやめましょう。
「ふん! さ、デルク行きましょ?」
リニが――
俺の手を引く。
大穴に落ちかかっている、ヴィーベを無視して――
俺とリニは、ボス部屋に向かう。
「おーい助けて……」
ヴィーベの声が――
遠くなる。
もう少し――
リニに優しくした方がいいと思うんだけど。
そして――
5層。
気が付けば――
ヴィーベが、先に来ている。
え?
俺とリニ――
たぶん最短距離で、ボス部屋の扉へ来たはずだ。
抜かされた覚えは、ない。
あそこから走ってダッシュしても――
よほど隠蔽のスキルを使い倒していない限り、先回りは難しいはずだ。
どうやって?
そう思っていると――
「ふふん! 俺様がどうやって先回りしたのか、わからないのだろう!」
ヴィーベが、得意げに言う。
「え……ええ、まさにその通りです。全く気が付きませんでした……どうやって先回りしたのですか? まさかテレポート?」
俺は、驚いて聞く。
「へ? いやいやそんな高度な魔法、まだ俺っちには使いこなせねえ……ってそれはどうでもいい! そうか……デルクの頭脳をもってしてもわからなかったか……」
ヴィーベが、嬉しそうに言う。
分からないものは――
わからない。
「デルク、このあん▽ん■んの言う事、真剣に聞く必要ないわよ?」
リニが、呆れて言う。
「アン●パ●マ●?」
俺は、首を傾げる。
「違うわよ! アン●パ●マ●に失礼よ! あ◇ぽ◇た◇よ!」
リニが、訂正する。
「ひでえ……想い人にそりゃあないぜ?」
ヴィーベが、傷ついた顔をする。
「何が想い人よ! あ、デルク……ズルしてんのよ、ズル」
リニが、説明する。
「え? リニさんズルって何ですか?」
俺は、聞く。
「このダンジョンだけのズルだけどね……ほら、あそこ……あの大穴から下ってきたのよ」
リニが、大穴を指す。
あ……
なるほど……
どう見ても、この大穴――
下まで、ズドーンとあいている。
そういった事も、できるんだ。
じゃあ――
万が一落っこちても……
何とか何処かの階層に着地できれば、助かる?
「まあ魔法使うか、道具使わねえと無理だがな!」
ヴィーベが、補足する。
「ヴィーベ、こう見えて浮遊の魔法と、軽量化の魔法が使えるのよ。あ、フライ……飛行の魔法も使えるんだっけ?」
リニが、説明する。
「まだレベルは低いからな……5層ぐらいまでなら難なく行けるぜ!」
ヴィーベが、胸を張る。
あ……
俺も、そういった魔法は少しかじっている。
言わない方が――
いいのかな?
俺の場合――
広く浅く、魔法を覚えている。
例えば、ファイヤーボール。
攻撃手段というより、けん制するために使う感じだ。
威力が、ないから。
もっと極めれば、有効打になりえるが……
それに、火が必要な時に着火剤として使える。
それに――
水魔法。
まあ、飲み水確保?
あとは――
土魔法も、ちょっとした壁ができるがその程度。
あ――
地面に、ちょっとした穴ぐらいならあけられる。
何事も――
応用だ。
だが――
この会話が、後に重要な関わりを持つ事になるとは――
思ってもみなかった。
俺は――
まだ知らない。
この魔法が――
命を救うことになるとは。




