第3話 職業 遊び人
職業【遊び人】――
外れスキルの代表格とされている。
遊ぶ事に長けたスキルであり、ごく稀に貴族のボンボンがなったりもする、どうしようもない職業。
生産職の役にも立たず、冒険者としての活動もほぼできない。
間違っても前衛での戦闘は期待できない。
役立たずの職種の代表格。
ただただ残念な職業。
それが――
俺の職業だった。
「そ、その方がよさそうじゃの」
司祭様が、俺に言う。
「儂も遊び人を選定で見るのは初めてじゃが、何でかの? その方まじめで何事も積極的にしておるのは知っておるし、街の住民も其方に色々してもらって感謝しておるのだ。まあこういう事もある。ではセカンドジョブを」
司祭様の言葉に、俺は少しだけ安心した。
そうだ――
司祭様は、俺のことを知ってくれている。
俺が遊んでいなかったことを、理解してくれている。
今度こそ――
ちゃんとした職業になるよね?
俺は、内心で遊び人を選定してしまって焦っているけれど、まだ次があるからと心を落ち着かせる。
大丈夫だ。
次こそは――
周りの子供たちが、ひそひそと話している。
「わ、遊び人って街中に居るよね」
「ああ、どうやって生活してるか知らないが、確かにいるな」
遊び人――
俺も、何度か会ったことがある。
今この街にいる遊び人の大半は、おおよそ10年前に選定を受けた人々らしい。
一癖も二癖もある人々だった。
中には――
「何でこんな人が遊び人?」
と思うような人もいた。
真面目そうな人、礼儀正しい人、街の人々から尊敬されている人――
遊び人と聞いて想像する「遊んでいる人」とは、全く違う人たちだった。
まさか――
俺がこの人たちと接触したから、遊び人に選ばれた?
いや、それはないだろう。
だって、他の街から流れてきた遊び人も結構いる。
実際には、5年前の選定でも遊び人は一定数存在しているはずだ。
もし接触が原因なら、10歳になっていない子供には、遊び人と接触させないようにするはずだ。
でも、そんな規則はない。
ということは――
遊び人になるのは、接触が原因じゃない。
じゃあ――
なぜ俺が?
「デルク、準備はいいか?」
司祭様が、俺に声をかける。
「は、はい」
俺は、深呼吸をする。
大丈夫だ。
次こそは――
俺は、震える手を選定板に置く。
セカンドジョブが何になるか――
目を凝らして見守る。
頼む――
戦士でもいい、魔法使いでもいい。
せめて、冒険者として活動できる職業を――
皆が、固唾を飲みながら見守っている。
誰も、声を出さない。
静寂の中――
選定板が、光り始める。
温かい光が、俺の手を包む。
そして――
カードに、文字が浮かび上がる。
俺が引き当てたセカンドジョブは――
【遊び人】
だった。
え?
また?
俺は――
言葉を失った。
周囲も、静まり返っている。
誰も、何も言わない。
ただ、俺を見ている。
その目は――
驚き、困惑、そして――恐怖。
「おいおい! セカンドジョブも遊び人って、何でファーストジョブとセカンドジョブが同じなんだ?」
誰かが、叫んだ。
その声で、教会がざわめき始める。
「いや、儂も驚いておるのじゃよ? 何かの間違いじゃないかのう? 3つまで選定できるジョブなのじゃが、これらは複数選定しても同じジョブにはならぬはずなのじゃ」
司祭様が、また選定板を調べさせる。
神官たちが、慌てて選定板の周りに集まる。
何度も何度も、調べている。
だが――
「む。特におかしな所はないのう?」
司祭様が、選定板を机の上に置く。
異常なし――
つまり、これは間違いじゃない。
俺は、本当に遊び人を2回引いた。
俺は――
混乱していた。
同じ職業を2回引くなんて、聞いたことがない。
本にも、そんなことは書いていなかった。
確か選定で得られる職業は、同じ職業にはならないと記載してあった。
そう聞いていた。
でも――
現実は違った。
俺は、同じ職業を2回引いてしまった。
<職業:①遊び人Lv0:②遊び人Lv0>
カードに、2つの遊び人が並んでいる。
これは――
なんだ?
俺は――
正常な判断ができずにいた。
周囲の声が、聞こえてくる。
「遊び人×2とか……」
「あいつ、本当に遊んでたんじゃね?」
「デルクって、実は……」
違う。
俺は、遊んでなんかいない。
街のあちこちで、色んな仕事を手伝ってきた。
真面目に、一生懸命やってきた。
なのに――
なぜ、遊び人なんだ?
しかも、2回も?
「これは困ったのう。国に確認を求めるか――っておいデルク、やめろ!」
司祭様が、俺を止めようとする。
だが――
俺は、もう選定板に手を伸ばしていた。
3度目の正直だ。
次こそは――
次こそは、違う職業を。
「デルク! 待て!」
司祭様が止める間もなく――
俺は、選定板に手を触れた。




