第260話 90層に戻ると陛下が
ひとまず鑑定のレベル上げ、つまり商人はこれでいいでしょう。
次の課題です。
今の最大戦力を底上げするのに一番手っ取り早いのが、元々のファーストジョブだったのをセカンド・サード共に上げるという事。
いったん休憩にし、その後ジョブを変更します。
さて、レベリングはいよいよ本格的になっていきます。
それとロースですが……やはりまずは精霊使い。
その後色々考えましたが、レイナウトのような魔法を使える前衛か、セシルのような回復・補助系の魔法を主体とする前衛か、前衛をこなしつつ魔法を使うというジョブは、大まかにこれらしかないんです。
陛下の剣聖は剣を用いた前衛特化ですし、宰相閣下の場合、魔法特化……攻撃・回復・補助、あらゆる魔法を使えますが、前衛は全く役に立ちません。
これらのような特化したジョブもいいのですが、俺達の目指す方向とは違うので悩み中です。
パーティを組むなら特化でいいじゃないか!と思うかもしれないけれど、万が一の時は己の力だけで活路を見出さないといけないので、もしもの時に1人で生き残れるようにとの考えです。
器用貧乏になるんじゃないか?
いえいえ目指すはオールラウンダーです。
違いがわからない?
器用貧乏は何でも屋。
オールラウンダーは万能選手。
引き出しは多いに越した事はないですし、選択肢は多い方がいいんです。
但し多くなった選択肢から最適な選択をできるかどうかは別問題ですけれど。
……
90層で陛下達と合流しています。
俺達の現状をどこまで説明すべきか悩みます。
しかし上手くいけば今後の選定にとんでもない影響があるので、慎重に対応しないといけないです。
陛下達にセカンド・サードを選択してもらうかどうか。
そんな心の葛藤を知ってか知らずか、陛下は俺に聞いてきます。
「デルクよ、余は思うのだがな、デルクはセカンド・サード共に遊び人を選択できたであろう?あれは偶然か必然か?そして別の事も考えたのだ。ファーストジョブの転職だ。あれは今、己に転職可能なジョブを一覧から選ぶ事ができる。いったいこれは何の差なのだろうな?」
一度は俺も考えたその違い。
そして陛下の話は続きます。
「そして遊び人じゃ。遊び人は今選択できるジョブへ一時的に制限があるとはいえチェンジできる。時間が来れば元に戻るとはいえ、これは考えるまでもなくとんでもない事だ。だがまだこれはそれでいい。遊び人とはそういうものだと割り切れるからな。だが教会はそうは思わなかった様じゃ。」
つまり教会の幹部が、教会で司祭の任に就いている時の職業ですね。
「司祭ですか、陛下?」
「まさしくそうじゃ。選定及び転職は教会において司祭以上の聖職者と言われるジョブの持ち主にだけできる特権。じゃがな、遊び人も一時的とはいえ司祭になれる。まあつまりはそういう事じゃな。」
……流石の陛下もこれ以上の事は想定していないんだね。
「しかし司祭と言えども、いやたぶんこれは上位の大司祭や教皇も同様だろうが、やはり選定では恐らく対象者の今チェンジ出来る職業を自由には選べず、何らかの法則があるやもしれぬが必ずしも希望したジョブや、適性があると思われるジョブになるとは限らん。だがやはり転職では好きなジョブを選べる。勿論対象者が今なる事の出来る一覧からだがな。だが考えてみよ。転職では可能なのになぜ選定ではできぬのか。ここに1つの不自然さがある。」
気が付けば、いえ最初から周囲の全員、つまり92層をアタックしている全員が俺と陛下の話を静かに聞いています。
「デルクよ、何か気が付いた事は無いか?」
気が付いた事というか、その解決方法を知っている……なんて今この雰囲気で言えない。そして選定が何故10歳前後で行われるのか。おおよその理由が3人の人柱のおかげで分かったのですが、これを言うべきかどうか。
陛下なら悪用はしないでしょう。
しかし時代が変わればどうなるのでしょう。
俺は陛下の目をじっと見つめます。
勿論陛下も俺をじっと見つめています。
あのいつものおバカな陛下はそこにはありません。
おちゃらけた陛下ならここで、
『なーんちゃって!今真剣に考えた!考えただろう!うはははは!』
とか言いそうなんだけど。
そして俺の隣ではセシルがずっと手を握ってくれています。
その手を握る力が少し強くなった気がします。セシルの掌から力が……気持ち的な力ですが、力が感じられます。
そして俺も少し強く握りかえします。
俺はセシルを見ます。
そしてセシルも俺を見つめてくれます。
セシルの目を見ると、気持ちが落ち着き穏やかな気持ちになります。セシルは頷きます。俺は1つの決意をします。そしてセシルに頷き返します。
「陛下、その件についてですが……」




