第26話 見知った顔
俺が――
トゥーニスの所へ戻ると、見知った顔を見かけた。
俺と同じ年齢の人々だ。
あれは――
学び舎で一緒だった。
彼らも――
ここにいるということは?
俺に気が付いたのか、その都度話しかけてくる。
「久しぶりだね! ここにいるという事は君も遊び人に選ばれたのかい?」
知り合いが、声をかけてくれる。
「ええ、俺も遊び人に選ばれて。あ、もしかして貴方も?」
俺は、聞く。
「ああそうなんだ。まさか自分が?とは思ったんだがね、君は何度か俺達に助言をしてくれていただろう? 過去、遊び人に選ばれた面々の末路と、万が一選ばれてしまった場合の心得や対処法等を」
彼が、真剣な顔で言う。
「ええ、まあそんな心配はしなくていいとは思ったんだけど、万が一その当事者になってしまった場合、生き延びる事が難しいと判断、遊び人以外は心配なさそうなので、敢えて助言というか、頭の片隅にでも記憶してくれたらと思ってね」
俺は、当時のことを思い出す。
まさか――
自分が遊び人になるとは、思わなかった。
だが、念のため調べて、周りにも伝えていた。
「ああ、俺も君の助言を鼻で笑っていたんだが、選定の前日にさ、ひょっとしたらと思ったので、多少調べたんだ。その結果何とか刺客から逃れる事ができた」
彼が、感謝するように言う。
刺客――
やはり、襲われたのか。
「あ……そのありがとう……私は危うく司祭様……もう様じゃないわね……犯されそうになったの」
女の子が、小さな声で言う。
「ええ? だって……こんな事を言っては申し訳ないけれど……何処からどう見てもまだ子供だよね?」
俺は、驚いて聞く。
まだ10歳だ。
「それについては否定しないわ。それは私も知っているから。だからこそ最初はまさかと思ったの。だけど……私その、自分で言ってなんだけど、顔はほら、整っているでしょ? だからね……そういった目で見てくる男は多かったのよ?」
女の子が、辛そうに言う。
確かに――
彼女は、整った顔立ちをしている。
「それでね、あなたの助言を聞いて、念の為当日は魔道具、つまりは貞操帯だけど、それを装着していたのよ。で、遊び人に選ばれちゃって、困った私はつい司祭様に相談して。そうしたら落ち着いてと言われ、飲み物を出されて。混乱していた私はつい飲んでしまったのよ。そうしたら……気が付けばほとんど裸同然の姿で司祭様が私に襲い掛かってきてたわ」
女の子の声が――
震える。
「【くそ! 何で取れないんだ! こんなでも女なんだから……ヤれない事はないだろ! 顔はいいんだから!】とか言われて……死ぬかと思ったわ。だけど、すんでのところでトゥーニス様が助けて下さったの」
女の子が、涙を浮かべる。
司祭が――
そんなことを。
俺は――
怒りが込み上げてくる。
善人の顔をして――
裏では、こんなことをしている。
またある時は――
別の知り合いが会いに来てくれた。
「君の言う事を聞いておいてよかったよ。あの日直ぐに姿を消したんだよ俺は。そうして隠れていたらさ、追手が必死に俺を探していてさ。俺は隠密のスキルを元々持っていたから、何とか逃げ切れた」
彼が、安堵した顔で言う。
隠密のスキル――
それがあったから、助かったのか。
どうやら――
遊び人になったのは、俺が学んでいた所へ出入りしていた面々でも、恐らく俺より賢いと思う人ばかり。
彼・彼女達は俺の遊び人に関する助言を――
「まさか自分がなる訳無いよと言いながらも、まあ万が一の時があったら困るから、頭の片隅に置いておくよ」
とか言いながらも、ちゃんと聞いてくれた面々ばかり。
そして――
その助言のおかげで、生き延びた。
うーん……
遊び人って、何なんだろう?
なぜ――
こんなに狙われるんだ?
俺は――
疑問に思った。




