第236話 デルクは運を引き寄せる
ここでレイナウトとロースは勘違いをしていた。そしてセシルですら勘違いを。
自分達が助かったのは単に運が良かった訳ではない。
デルクの強運が呼び込んだのだ。
そしてデルクは知らなかったが、当時兄弟子のヴィーベとリニと3人で、ダンジョンでダンジョンがどのようなものかを体験中、2人の関係を実に羨ましく思っていたのだ。2人があまりにもお似合いで、微笑ましかったからだ。
そしてその想いが自身の危機に面した時、ああ、彼女がいたらなあとつい心の奥底で思っていた所、セシルが降ってきて……。
セシルが闇に葬り去られるのは時間の問題だった。
それをデルクの強運がセシルを自らの運命に取り込んだのだ。
その後セシルと共にレベリングを行っていたデルクだが、やがてどう考えても2人ではダンジョンを脱出するのは困難と悟る。
何せ当時セシルはレベル5。デルクのレベルは遊び人でそれぞれ6だったが、セシルを守りつつ脱出できるとは到底思えない。
そしてセシルを見捨てて自分だけ生き残る選択肢はデルクにはない。
更に言えばそういう選択をセシルにさせるような状況になってはいけないし悟られてはいけない。どうすれば?
仲間が!信頼できる仲間が欲しい!
セシルに悟られてはいけないこの想い……そんなデルクの想いに呼応したかのような出来事がまたもや起こる。
つまりここに来てまたしてもデルクの強運が発動をしたのだ。
デルク達がこの日このタイミングで上の階層へ向かおうと考えなければ……食料の残りに不安がなければ……新たに試作した3代目の囲いがこのタイミングでできていなければ……。
それら全てが信じられないぐらい完璧なタイミングで噛み合わさり、囲いで上に向かおうとする2人。
そしてそこにレイナウトとロースの2人が落下。
いくらレイナウトが何とかあがいて少しでも落下の速度を落とそうとフライの魔法を使用していたとはいえ、その落下速度はすさまじく、デルクが囲いに落下物に対する衝撃の緩和の工夫をしていなかったらどうなっていたか?
これも全てデルクの強運が呼び寄せたのだが、誰もそれに気付く訳もなく……。
本人も気付いていない。それがまたデルクらしいところだ。
あ、気が付けば陛下が大泣きをしている。
「デルクは頑張った。だが……お前達にそれができるのか?その覚悟は?」
セシルが厳しい。
「その、知らなかったのよ私達。これでも私達ってほら、教会の勢力に追われていたじゃない?だから自分達はこんなに苦労したんだって、そう思いたかったのだわ。ほらあんたももっとこの2人を見習わないと!」
「そのすまない。今すぐには変われないが、少し待ってくれ。俺も心を入れ替え、もっとこいつに釣り合うよう努力をする!」
……ええとどうしたら?遊び人の人達がそれぞれ決意を新たにしてくれてるというのはいいのですが、少しベクトルが違うというか、ねえ?
「私ももっとグイグイ行く!」
いやセシルさん、何処にグイグイ行くのさ?
まあセシルが前向きなのはいい事なので……そっとしておきましょう。




