第222話 国王、再び
国王が去って場がすっかりデルタさん中心になってしまっていました。
きっと彼女は一度にこれほどの人と接触した事がないと思うので、俺はいい機会と思いそのままにしていました。
流石にメヒテルトさん(トゥーニスさんのお母様)が短剣でデルタさんに切りかかった時はドキッとしましたが、何と短剣の方が折れたので一寸驚きました。
こう言っては何ですがデルタさんって戦闘能力皆無のようですし、実際切りかかられている時も身動き1つせずじっとしていましたから。
それでいてあの防護性能というのは、本当に不思議な存在です。
そしてその後女性達に囲まれ色々な触れ合いがあったのですけれど、さてこれからどうなるんだろうと思っていたら王妃様が、
「そろそろですわね。それでは失礼。」
謎の言葉を残し、この場を去ってしまいました。
王妃様が退場なさって直ぐに、謁見の間に何やらけたたましい音が響き渡り、
「国王陛下のおなーりー!」
と言う声が聞こえたかと思うと、身分のある方が本来行き来すると思われる扉が開き、そこから王妃様が腕を組んで、荘厳な雰囲気の陛下が戻ってきました。
そしてそのまま陛下は椅子の前に立ち、王妃様もそれに習います。
そして場の空気が一気に変わっていきます。
さっきまでのまた陛下が……と言う感じの何処か緊張感に欠けたそれとは違い、今は本来国王を目の前にしたらきっとこんなのだろうという雰囲気に変わっています。
同じ人間なのに、こうも変わるものか、と正直驚きました。
因みにこの国では正式な作法として、陛下が入城した時は立って出迎え、椅子に到着したと同時に一礼するようです。そして陛下が着席するまで待つようです。
「余がヴィッテヴェーン王国国王アウフスタイン・シャーク・ノルベルト・ルドルフ・ヴィッテヴェーンである!」
どうやら先程の出来事は無かった事になったようです。
それでいいのか、とは思いますが……まあ、いいのでしょう。きっと。
そして宰相閣下が今からの流れを説明していきますが、どうやら俺達関連を真っ先にやっつけるようです。
その後は王族だけでの謁見になるようですが、これはもう既に終わっているので形式だけのようです。なので実質俺達の為だけに今回の謁見が行われたようです。
ただあんな始まり方だったので面喰いましたが。
「本日デルク一行に来てもらったのは先だって発生したダンジョンの変化についてだ。まず第一にスタンピードについてだ。あれはどう説明する?」
先程までのスケベ親父にしか見えなかった雰囲気が一転し、厳格な国王陛下そのもの。
しかしあの魔物の異常発生については既にギルド経由で報告が行っているはずなんですが。
陛下は何を聞きたいのでしょうか?
俺達しか知りえない何かがある?しかも俺が見落としている?
俺は陛下の真意を見極めようとしますが、さっぱり分かりません。
だけどどう見ても俺に聞いているよね?周囲の視線も全て俺ですし。
「それにつきましては既に報告が行っていると思いますが、ギルドマスターが何やら魔道具を鳴らし、その影響でダンジョンの魔素が異常な状態となり下層の濃い魔素がダンジョン外に放出、それを追って魔物がダンジョン外に出てしまったのが直接の原因だと聞いています。そしてギルドマスターの目的ですが、単に周囲を混乱させ、その場からの離脱のために講じた措置と思われます。ただタイミングが悪すぎ、丁度ダンジョンは大穴の修復作業に入っていて、その時ダンジョンの防御機能が不安定になっていて、そのタイミングで笛を鳴らすという、偶然もあってあのような魔物のダンジョン外への出現に繋がってしまった結果と理解しています。」
俺の知っている事を伝えただけなのですが、報告って行っているよね?
「デルクはスタンピードは人為的に発生させたと言うのだな。」
「はい。あの笛は魔道具です。ただ本来はスタンピードを引き起こす能力はないと考えています。」
「ほう、ではどういった目的なのじゃ?」
「特定の魔物を呼び寄せる魔道具です。」
「何故そう思うのじゃ?」
「笛を吹いて後暫くしてギルドマスターは一匹の空飛ぶ魔物に連れられ去っていきました。その折抵抗しておらず、むしろ魔物を従えておりましたので、本来そう言う機能なのだと考えた次第です。」
何でこんな事を確認するのだろう?
ギルド経由の報告と俺の証言に食い違いがあるのかもしれません。
それを確認したかったのでしょうか。




