第208話 トゥーニス その8
俺はユスティネと付き合い始めた。
そして俺とユスティネが愛し合うまでそう時間はかからず、俺はユスティネを愛した。
彼女も俺を愛してくれた。
だが当時、修道院の教母はユスティネを手放そうとせず、結婚できなかった。
俺とユスティネが愛し合って5年、それは唐突にやってきた。
「トゥーニス様、私はどうやら赤ん坊を授かる事の出来ない身体のようです。トゥーニス様は準男爵さま。いずれもっと上の爵位を得る事になりましょう。さすれば何れ子が後を継げる爵位を得る事になりましょうが、私は子を授かる事が出来ません。ここでお別れです。」
「待てユスティネ!君が妊娠しようが妊娠出来ない身体だろうがそんな事は関係ない!」
もっと気の利いた事を言えばよかったが、俺は動揺し上手く説得できなかった。
それに彼女が妊娠しにくい事は気付いていたので、回復魔法を独占的に管理している教会に見てもらおうとした事もある。だが足元を見られ、俺の財力ではどうにもならないほどの金額を請求され断念した。
修道院の教母は教会派で、修道院に住んでいる女性だからと決して無料、若しくは格安で治療をしてはくれなかった。
ユスティネの身体がそうなったのは、あの時山賊に受けた傷が原因なのか、あるいは精神的なものなのかもわからない。
そして俺の見立てでは回復させるには回復魔法のレベルが9以上が必要だ。
普通の冒険者ではレベル9に到達する事は難しい。
俺も立場があるので特定のスキルだけレベル9にするのは相当無理がある。
だが諦めない。
俺は時間の許す限り1人でダンジョンへ向かいレベルアップをしようとしたが、無理だった。
1人ではレベル8が限界。
それ以上は常に死と隣り合わせになる。
俺個人ではそれも吝かではないが、俺の立場が俺の死を許さない。
そして単にレベル9に到達できる可能性はあっても、回復魔法を扱えるジョブを9にする事は困難過ぎた。
だが、父は何とかしようと約束してくれた。条件は教会の勢力を何とかする事、だった。
この頃から俺は、教会に関し父の密命を受け徹底的に調べ上げた。
そして最終的にはこの国から教会の勢力を一掃することを決めた。
このまま教会の勢力を野放しにしていれば、いずれ国にとって取り返しのつかない事態になる事は明白。
俺個人の事を言えばそれはまあいい。それよりもユスティネだ。
「ユスティネ!君は子を授かれないからと俺を拒絶するのか?」
「うう……愛しておりますわトゥーニス様!ですがそれは許されないのですわ。」
「俺は必ずユスティネが子を産める身体になるようにする!いいか、そんな理由で俺と別れる事は許さん!5年待っていろ!俺が何とかしてやる!そして迎えに行く!」
「ああ!トゥーニス様!ですがいいのですか?そのような事になれば、後ろ指をさしてくる輩も出てきますわ。」
「言わせたければ言わせればいい。俺は約束は必ず守る!俺を信じて待っていろ!」
「はい!トゥーニス様!」
そうは言ったが出来るのか?
今ユスティネは20代半ばだろう。
5年経てば20代後半だ。
あまりにも時間が経てばそもそも年齢的に妊娠しにくくなる。
だが俺はやる。
女と国を天秤にかけるなんてとんでもないと言われるかもしれぬが……俺はやる!
やらなければ俺の誓いに意味がない。




