第205話 トゥーニス その5
魔道具はかなり俺を消耗させる。
周囲に誰も居ない事を確認し、2層で魔道具を解除した。
ジョブチェンジし、今度はもう少し消耗を抑える魔道具を装着。
これで遊び人とは認識されないはず。
4層へ向かう。
3層まではダンジョンの中心付近に冒険者を見かける。
今この近辺にいる冒険者は全て教会の差し金とみて間違いない。
4層は弱いとはいえ魔物が出現する。
俺は大穴を避けつつ5層へ向かう。
だがそこで冒険者が階段を上ってくるのが見えた。
「上に行ったようだ!ロープを使いやがったぞあいつら!」
あいつら?ロープ?
俺は急いで階段の前に立ち、冒険者の前に立って行く手を遮る。
「あ、どうしたこんな所で?」
俺を仲間だと思っているのか、気軽に声をかけてくる。
「上に行ったって、何処でしょうか?」
「お前持ち場は何処だ?」
「あ、すいません、ちょっとトイレに行きたいんすよ。」
「穴でしちまえ穴で!おっといかん、その大穴だ!あいつらこの階層にロープで辿り着いたらしい!」
「あいつらってなんすか?ああいや、何人っすか?」
俺はとぼけて聞いてみる。情報を引き出せれば儲けものだ。
「知らん。俺は男が1人先行して登ったと聞いたぞ。山張ってたのは5層から下だからな。ここには誰もいないはずだ、違うか?」
いい事を聞いた。まだ間に合う。
俺は相手を確認し、せいぜいレベル6までの5人と把握。一番近くにいた男の顔面を思いっきり殴り飛ばし、後ろにいた女もついでに吹き飛ばす。
「おい何やっちゃうぎゃあ!」
そのまま5人全員をその場で殴り気絶させる。
時間稼ぎにしかならんが、このまま放置。
急ぎ4層の大穴へ。
しかし俺がいたのは大穴の反対方向だったようだ。
大穴の下から「キャアア!」と聞こえたと思ったが、大穴の向こうから、
「デルク―――――!!!!!」
あれはヴィーベだな。
ヴィーベとリニを確認した。人間と戦っている。
相手はどうやら2人と同じレベルらしい。同じレベルであれば人数の多い方が有利だ。
「暫し待て!」
可能な限り大きな声でそう言い放ち、2人の元へ駆けつける。
しかし誰も俺の事を気にする奴はいない。ヴィーベも余裕がないようだ。それに今、俺は認識阻害の魔道具を身に着けているので俺とわからないのだろう。
その後何とか間に合い、その場にいる敵を全員ぶちのめした。
だが、デルクの姿が見当たらない。
「ヴィーベ・リニ、俺だ、トゥーニスだ。」
「あ、え?トゥーニスさん?どうして?」
「街で騒ぎがあってな、どうもダンジョンがきな臭いと感じ、急ぎやってきた。デルクはどうした?」
ヴィーベとリニがかわるがわる説明をしてくれたが、デルクがロープを登っている途中、9層付近で大穴から誰かが突き落とされ、デルクもろとも落下していったらしい。
……デルクが落ちた?
胸の奥が冷えるような感覚があった。
だがおかしい。俺は今、街にいる全ての遊び人見習いの行動を把握しているが、そもそも今この街には遊び人見習いはデルクだけだ。他のメンバーは全て王都へ逃がした。
時々身分を偽りこの街に来る事もあるが、ここ最近はいない。
では誰が突き落とされたのか?
俺はデルクを救助しに行きたかったが、まずは2人だ。
デルクの事だ、突き落とされた人と接触したかもしれないが、打ち所が悪く即死あるいは意識を失わない限り何とかするだろう。
それにもし最悪の事態であれば今更間に合わん。
あいつは機転が利く。それに色々なスキルを持っている。
あの年であのスキルは正直異常とも思えるが、あいつは選定を受ける時に生産職になりたかったようで、可能な限りそういったジョブになれるように色々な職人の元で手伝いをしていたようだ。
だから何とかなるだろう。
それにあいつは容量が少ないながらも自前の収納かばんを所持しているはずだ。
例え大した荷物を持っていかなくていいと言われていても、それなりの荷物は備えていただろうしな。
さて、このまま無事にダンジョンを脱出できるのだろうか。
どうやら外に居た冒険者どもは、魔法陣で脱出できないようにあの場に留まっていたようだからな。
既にヴィーベとリニ・デルクも試したが駄目だったと言っている。
ではこのまま地上に向かうしかないか。
まあ俺よりレベルの高い奴があの場にいるとも思えんしな。
あとはデルクを信じるだけだ。




