第2話 皆が希望の職業になっている中、俺は
選定が始まった。
100人以上の子供たちが、順番に選定板に手をかざしていく。
俺は、その様子を見守っていた。
みんな――どんな職業になるんだろう?
「おお! 其方は上位職の魔法戦士ではないか! 素晴らしい!」
司祭様の声が、教会に響く。
「え? マジ? 剣で戦いつつ魔法も使えるの? 一つの職業で?」
選定を受けた少年が、驚いた声を上げる。
「ああ、通常なら戦士と魔術師の2つの職業を兼ねる必要があるが、運が良いのう!」
魔法戦士――
うわ、凄いな。
上位職だ。レアな職業だろう。
剣で戦いながら、魔法も使える。
普通なら2つの職業を持たないといけないのに、1つで済むなんて。
周りの子供たちも、羨ましそうに見ている。
「お? 其方は剣士か!」
次の少年が選定を受ける。
「戦士じゃねえのかよ」
少年が、少し不満そうに言う。
「どうせ世の中の武器の半数は剣じゃ! 剣を極めるべきじゃないのか?」
司祭様が、励ますように言う。
「まあそうだよな、どうせ剣しか使わなかったし」
少年は、納得したようだ。
剣士――
それも、いい職業だ。
剣を極めれば、強くなれる。
「おお! シスターか!」
今度は、女の子が選定を受けた。
「え? じゃあ私回復魔法が使えるのかしら?」
女の子が、目を輝かせる。
「それはいいのう! 回復魔法の使い手は何処のパーティーも喉から手が出るほど欲しがるからのう! それに儂のジョブも司祭だしの!」
「そう? それは良かったわ! 前衛になっちゃったらどうしようかと思ってたから! じゃあ司祭様後で魔法を教えて下さいね!」
女の子は、嬉しそうに笑っている。
回復魔法か――
羨ましいな。
回復魔法が使えれば、どこのパーティーでも必要とされる。
冒険者として活動する上で、回復役は絶対に必要だからだ。
「精霊使い?」
別の女の子が、自分のカードを見て驚いている。
「後衛職の中でも珍しい職業です」
司祭様が説明する。
「精霊様を使役するのかしら?」
「そうだのう。レベルが上がればものすごく強力な精霊を使役できると聞く。しっかり励んでくれたまえ!」
精霊使い――
それも希少な職業だ。
レベルが上がれば、強力な精霊を使えるらしい。
後衛職として、かなり強力な職業だと聞いている。
皆、なかなかいい職業を選定できている。
誰も、セカンドジョブを選ばずに済んでいる。
それが――当たり前なんだ。
ほとんどの人は、最初の選定で満足できる職業を引ける。
鍛冶屋の息子みたいな、親が職人という子供もいる。
「まあそうなるわな、君は鍛冶師だ!」
司祭様が、その少年に言う。
「うわ! 俺冒険者になりたかったのに!!」
少年が、不満そうに叫ぶ。
「冒険者の武器を作る人も必要なのだよ、よかったじゃないか!」
司祭様が、なだめるように言う。
鍛冶か――
それもいいよな。
自分の思い通りの武器を作る――打つというべきか。
自分の手で、何かを作り出せるのは、素晴らしいことだ。
今この場には、100名程いる。
みんな、おおよそ予想通りの職業になっているようだ。
中には――
「ちょっと何よこれ!」
女の子が、不満そうに叫んだ。
「洗濯女? はっはっはっ! 頑張ればメイドになれるから、そのままにした方がいいぞ?」
司祭様が笑いながら言う。
「え? やだ! セカンドジョブを選ぶ!」
女の子が、選定板に手を伸ばそうとする。
「まあ落ち着きなさい。実はな、その職業秘かに当たりなのじゃよ?」
司祭様が、女の子を止める。
「え? 何で? 外れじゃないの?」
「しっかりとその職業に励めば、女性にとって極めて大事なスキル【浄化】を得られるのじゃよ?」
浄化――
それは、汚れを落とすスキルだ。
「え? 本当? 浄化って結構需要あるってお母さんから聞いてるよ?」
女の子が、目を輝かせる。
「女性たるもの常に身支度には気を使うもの。そんな折、汚れてしまえばの、そんな時浄化は大いに役立つ!」
「やったー!」
女の子は、嬉しそうに笑った。
冒険者は、冒険中は風呂に入れない。
だから、浄化のスキルがあれば便利だ。
頑張れば、いいスキルが手に入る。
あれはあれで、いい職業なんだな。
俺も、頑張って浄化を覚えたいな――
そんなことを思った。
そして――
ようやく、俺の番が来た。
「お! ついにデルクの番か! お前には期待してるぜ! 何せパーティー結成したらお前が司令塔だからな!」
友人のマルクが、俺に声をかけてくる。
「いやいや俺にリーダーなんか務まらないって!」
俺は、笑いながら答える。
「そんな事ないよ? デルクって色んな知識あるしさ? 何かあった時にすぐ解決してくれるし!」
別の友人も、俺を励ましてくれる。
「まあどんな職業になるかまだ分かってないからね」
俺は、そう言って選定板に向かう。
この時、俺の周りにいた幼馴染たち――
彼らとは、15歳になったらパーティーを結成する予定だった。
だが、みんな俺がどんな職業になるのか、実はあまり分かっていなかった。
何せ俺は、色んなことを器用にこなしてきたから。
「やれ剣士だ」「やれ魔術師だ」「いずれは賢者になれるんじゃね?」
無責任な声が、飛び交う。
「いやあいつなら賢者になれるぜ!」
「いえいえ聖騎士よきっと!」
賢者? 聖騎士?
そんなわけないだろ。
それに聖騎士って、神聖騎士の事じゃないのか?
そんな突っ込みを入れたくなるが、今は目の前の事に集中しないと。
「次デルク!」
司祭様が、俺を呼ぶ。
「は、はい!」
俺は、選定板の前に立つ。
「君は確か、今期の期待の星じゃないか! 是非聖職者になりたまえ!」
司祭様が、励ますように言ってくれる。
聖職者――
回復魔法や補助魔法を使える、重要な職業だ。
でも、そう都合良く行く訳がないだろう。
それに、聖職者向けの職業なんて無理だろう?
俺は――
選定板に、手を触れた。
温かい光が、俺の手を包む。
そして――
カードに、文字が浮かび上がる。
皆が期待している中――
そこに表示があった職業は――
【遊び人】
だった。
え?
俺は、自分のカードを見つめる。
遊び人――
外れ職業の代表格。
生産職の役にも立たず、冒険者としての活動もほぼできない。
間違っても前衛での戦闘は期待できない。
役立たずの職種の代表格。
ただただ残念な職業。
それが――
俺の職業?
え?
え?
ええええええ????
頭が、真っ白になった。
え?
と思ったのは、周りの人も同じだった。
司祭様も、驚いた表情で俺を見ている。
「へ? あ、遊び人じゃと? そんな馬鹿な! かれこれ10年この教会では出ておらぬ職業じゃぞ? しかもデルクは元々才能ある少年じゃ! おい! ちょっと選定板を調べろ!」
司祭様が、慌てて指示を出す。
教会の人たちが、選定板の周りに集まる。
何かを調べているようだ。
俺は――
ただ、立ち尽くしていた。
遊び人――
俺が?
「司祭様、異常は見当たりませぬ!」
神官の一人が、報告する。
「なんと!」
司祭様は、困った表情で俺を見る。
「どう言葉をかけてよいか、残念じゃデルクよ。どうする? ここ5年程誰もセカンドジョブを選択しておらぬが」
セカンドジョブ――
もう一度、選定を受けられる。
それしか――ないよな。
俺は、唖然としていた。
外れスキルの代表格である遊び人。
まさか俺がそれになろうとは。
「え、ええと、どうしましょう?」
俺は、混乱しながら聞く。
「もう一度引いた方が良いじゃろうな」
司祭様が、答える。
引く――つまり、選定をもう一度行うという意味だ。
それしかない。
「そ、その申し訳ありません司祭様。も、もう一度選定します」
俺は、頭を下げて答えた。




