第16話 国家権力と教会の勢力
明け方――
トゥーニスは自宅の書斎に設置してある、とある魔道具を操作していた。
魔道具――
遠く離れた人と会話ができる、貴重な道具だ。
トゥーニスは、魔力を込める。
魔道具が、光り始める。
暫くすると――
魔道具から、声がした。
「トゥーニスか、こんな明け方から余を呼び出すとはどうしたのだ?」
低く、威厳のある声。
国王――
トゥーニスの父親だ。
「すまないな親父、いよいよ教会の遊び人狩りが始まったぞ」
トゥーニスが、緊張した声で言う。
「何? そう言われるともうそんな時期か……相変わらず教会は遊び人を追い回しておるのか、口惜しいのう……」
国王の声に、悔しさが滲む。
「今日も10名程保護、若しくは救出したがどうにかならないのか?」
トゥーニスが、訴える。
10名――
それでも、半分は間に合わなかった。
「すまぬな……国王と言えども、教会には手が出せぬのだよ」
国王の声が、重い。
「どうしてこうなったので?」
トゥーニスが、苦しそうに聞く。
「仕方あるまい……教会は大陸中に勢力を伸ばしておる。わが国だけではないからな」
国王が、説明する。
今、魔道具で会話をしているのは――
デルクが訊ねた先で、デルクを留めおいているトゥーニス。
そして、その父親。
つまりは――
国王その人。
「ですが私にも限界がありますよ? きちんと教会に遊び人の出現を報告している司祭は問題ありませんが、隠している司祭もかなりおりますからな」
トゥーニスが、困った声で言う。
「ああ……自身の昇進に響くと思っておるのだろう。司祭なら誰でも大司祭になりたいものだしな。そしていずれは枢機卿に……と」
国王が、苦々しく言う。
この大陸にある教会の権力は、公にはなっていない。
だが――
国を上回るという認識がなされている。
特に影響が大きいのが、子供はおよそ10歳になると受ける職業選定を取り仕切っている事。
そして、管理している事。
その後、子供が15歳前後になるまでの影響は大きい。
更に――
正式に職業へついてからも、絶大な影響を持っている。
冒険者ギルド、商人ギルド、各種職人ギルド――
全てに、教会の息がかかっている。
そんな中――
何故か遊び人については、執拗に管理をしている。
中には――
遊び人が現れると自身の出世に影響があるのを懸念し、遊び人が現れると自身の街からひそかに闇へと葬り去っているという、もっぱらの噂。
そして今回も――
冒険者を雇い、若しくは教会所属の冒険者や、人には言えない公になっていない組織に頼んだり……
トゥーニスは貴族の立場から、何とか遊び人になったばかりの子供を探し当て、保護しようと努めていた。
だが――
それも限界がある。
なので、父親である国王に頼むのだが――
「その、すまぬな。教会に対し、国は無力なのだよ」
国王の声が、申し訳なさそうに響く。
この後、何を話したのか――
暫く経ってから、起動している魔道具を止めるトゥーニス。
さて――
どうするか。
この街の事なら、大抵何とかなる。
だが、それ以外は現地の同志に託すしかない。
ただ――
元が遊び人の彼・彼女達を動かすのは容易ではない。
一歩間違えれば教会を敵に回し、自身の命も危なくなりかねないからだ。
ここは――
地道に行くしかないか。
トゥーニスは、溜息をつく。
それに――
今回は、過去になかった出来事がある。
つまり、自分が遊び人になった場合を想定し、前もって接触をしてきていたデルクという少年の事だ。
彼は運良く?
3つの職業を引き、その全てが遊び人という今まで存在していなかった人物だ。
ひょっとしたら――
彼が教会の考えを改めさせる事ができるのではないか……
つい――
そう思ってしまうのだった。
そして彼には、愛弟子の中でも最も優秀な2人――
ヴィーベとリニに任す事にした。
本来なら、彼自身の手でじっくり育てたい。
だが、他の遊び人を救出すべく動く必要があるため、それも適わず。
【無事に15歳を迎え、レベルが上がってくれればよいが……】
トゥーニスは、デルクの部屋の方を見た。




