第123話 振り返るとそこには……
あれ?
何だか――
様子が、変だ。
俺は――
ボス部屋に閉じ込められたと、思っていた。
だが――
何やら周囲の様子が、おかしい。
扉が――
閉まったので、振り返る。
すると――
先程までの場所とは、違う事に気が付く。
まず――
床が、つるつるで四角い……
人の頭ほどありそうな板が、張り巡らされ――
綺麗な壁が、左右にあり――
天井には、明かりが点いていて……
明らかな――
人工物。
さっきまでは――
広大な草原みたいな、場所だったのに――
この変化は、何だろう。
そして――
ふと背後に、風の揺らぎを感じた。
なので――
振り返る。
すると――
驚く事に、そこには1人の女性が――
立っていた。
え?
気配を――
感じなかった!
俺は――
驚く。
だが――
その女性に、殺気を感じず――
こちらを攻撃する意図が、ないと感じ――
じっと、見る。
【សួស្តី។】
は?
言葉が――
わからない。
「申し訳ありません。僕には理解できない言葉です」
俺は――
言う。
暫く――
じっと見つめ返してくる、女性。
【ごめんなさい。分かりますか?】
今度は――
わかる。
「あ、はい、今度は分かります」
俺は――
答える。
えっと――
なんだろう、この女性。
【突然の事で申し訳ありません。お連れの方は扉の向こうで無事です。今……デルク様の脳を拝見させて頂きました。そして私は今、デルク様の脳へ直接働きかけております】
え?
喋ってないの?
「その、僕も今喋ってないのかな?」
俺は――
聞く。
【いえ、デルク様は言葉を発しております。私は機能の一部が、言語を発する部分が損傷し言葉を発せる事が出来ない状態でございます】
女性が――
答える。
うーん――
意味が分からない。
だけど――
この女性は、喋る事が出来ない。
だけど――
何らかのスキルを用いて――
俺の頭へ、直接語り掛けているのかな?
【そのような認識で問題ないと思われます。詳細は省きますが】
??
思考を――
読んだ?
【はい】
えっと――
その、お姉さんって誰?
【これは申し訳ございません。私δ197型と申します】
デルタ――
さん?
「デルタさんですか? その、数字は分かりませんが」
俺は――
言う。
【私はδ、このダンジョンの管理を担当いたしております。そして数値はδの197番目の個体でございます】
ダンジョンの――
管理?
197番目の――
個体?
「よく分かりませんが、デルタさんですよね?」
俺は――
聞く。
【デルク様のお好きなように呼んで下さって結構でございます。さて、申し訳ございませんが、本題に入っても宜しいでしょうか?】
本題――
なんだろう。
「はあ、何でしょう?」
俺は――
答える。
【このダンジョン管理システムが、おおよそ300年程前に損傷し、その影響で管理システムに重大な損傷が発生、自動修復機能が損なわれた結果、私共の育成装置に致命的な損傷が発生、それを修復できず今現在私の言語機能に致命的な影響があり、この様に言葉を発せなくなっております】
デルタが――
説明する。
えっと――
色々訳が分からない。
だが――
300年前――
損傷。
自動修復機能――
損なわれた。
言語機能――
損なわれた。
「えっと色々訳が分かりませんが、僕にどうしろと言うのでしょうか?」
俺は――
聞く。
【過去ここまで到達した方は数名。その方は全員戦闘タイプの方で、デルク様のように非戦闘スキルを多数所持している方がここまで到達したのは初めてでございまして、ぜひ力をお貸し願いたく、こうしてお会いしている次第でございます】
非戦闘スキル――
多数所持。
力を――
貸してほしい。
「僕に何ができるのでしょうか?」
俺は――
聞く。
【ダンジョンの修復を……修復装置の修復をお願いしたいのです】
修復――
装置の、修復。
「どう考えても僕達の住んでいる場所よりも色々高度な技術ですよね? 僕にできますか?」
俺は――
聞く。
【スキルを使っていただければ大丈夫です】
デルタが――
答える。
俺は――
悩む。
拒否をしたら――
どうなってしまうのか?
目の前にいる――
女性は、友好的に感じる。
だが――
もし思い通りにならなかったら?
【その場合は残念ですが、デルク様を元の場所にお戻り頂くだけでございます。できれば世界のバランスもありますので、ぜひともご協力して頂きたいのですが、無理強いは致しません】
デルタが――
答える。
気になる事は――
いくつもある。
だが――
一体この女性は、何者だろう?
実際に――
女性は名乗って、色々教えてくれる。
だが――
俺の理解の範疇を、超えており――
訳が、分からない。
「その、色々聞きたい事はありますが、そもそも損傷って何ですか?」
俺は――
聞く。
【このダンジョンには、大きな穴が開いているのをご存知でしょうか?】
大きな――
穴?
「ええ、知っています。周囲のダンジョンではここだけと聞いています」
俺は――
答える。
【この大穴が発生した時にダンジョンのシステムが損傷したのでございます。本来なら自動修復すべきところですが、修復機能が損傷した事により修復不可能になり、今現在まで大穴が放置されているのでございます】
デルタが――
説明する。
……これは――
大変な情報では、ないのでしょうか?
大穴――
300年前。
ダンジョンの――
システム、損傷。
修復機能――
損傷。
自動修復――
不可能。
大穴――
放置されている。
そして――
俺に、修復を頼みたい。
デルタ――
ダンジョンの管理者。
言語機能――
損傷している。
脳へ――
直接、働きかけている。
思考を――
読める。
俺――
何ができる?
非戦闘スキル――
多数所持。
だから――
選ばれた。
修復装置――
修復してほしい。
スキルを――
使えば、大丈夫。
本当に――
できるのか?
俺には――
分からない。
でも――
やってみよう。
デルタ――
友好的だ。
拒否しても――
元の場所に、戻してくれる。
無理強いは――
しない。
なら――
やってみよう。
俺は――
そう決めた。
修復――
してみよう。
ダンジョンの――
修復装置、修復してみよう。
俺の――
スキルで、できるなら。
やってみよう――
俺は、そう決めた。
デルタ――
待っている。
俺の――
返事を、待っている。
大穴――
300年前から、ある。
それを――
修復できるかもしれない。
俺は――
そう思った。




