第119話 ロースとレイナウト
ああ――
何て事!
レイナウトは――
自分で自分のハードルを、上げてしまっている!
しかも――
絶対、気が付いているのに!
そう感じた――
ロースは、ここである決心をする。
「……レイナウト、ちょっと頭に何かついてるわよ? 少し屈んでよ?」
ロースは――
つい、そう言ってしまう。
レイナウトは――
??と思いながら、屈む。
すると……
ロースは――
思わず、レイナウトの頭を――
自分の胸に押し付け、抱きしめる。
「ロ、ロースどうしたんだ?」
戸惑う――
レイナウト。
「馬鹿ねレイナウト。魔法戦士が戦闘で魔法と剣を同時に使わないといけないって誰が決めたのよ?」
ロースが――
言う。
レイナウトは――
ロースに抱きしめられたまま、固まった。
指摘されるまでもなく――
本当は、同時に魔法を使う必要は無い。
だけど――
自分は、デルク達にずいぶん先を進まれてしまい――
焦っていたんだと、今更ながら思う。
今すぐに――
魔法と剣、同時に使う事を――
身につけなくても、いいじゃないか。
そんなのは――
双方を極めてから、でも遅くはない。
それに――
前もって、フライをかけておけば――
魔法の効果を発揮させたまま、戦えるし。
そして……
ロースは――
こんな僕の事を、好きでいてくれるのだろうか?
こんな事をされると――
勘違いしてしまう。
ロースは――
とても素晴らしい、女性だ!
将来――
ロースが妻になってくれたらと、常々思う。
だけど――
僕なんか、ロースに釣り合わない。
ロースは――
まさしく理想の、女性だ。
理想過ぎて――
高根の、花。
レイナウトは――
思わず、ロースの抱擁から無理やり逃れ――
今度は、レイナウトから抱きしめる。
そして――
ロースを、見る。
ロースの目が――
潤んでいる?
何かを察したのか――
ロースは、目を閉じる。
……この日――
ロースは、ファーストキスを――
レイナウトに、捧げた。
レイナウトにとっても――
初めての、キス。
【うわ……どうしたら? まさかキスまでしちゃうとは。よかったなロース】
俺は――
思う。
一寸――
アイテムを作って戻ってきた、俺。
見てしまったのは――
レイナウトが、ロースを抱きしめ――
キスをする、所だった。
そして――
忘れ物を受け取った、セシル。
セシルも――
俺と共に、こっちに戻ってきた。
だが……
【あ……ロースよかったね。羨ましい。私はこのヘルメットのせいでキスできない。そしてデルクが私の想いに気が付くとは考えられない。どう考えても妹扱い】
セシルは――
顔が真っ赤になっていくのを、意識していた。
だが――
ヘルメットのせいで、その表情は――
俺には、気が付かれなかった。
「もう少し2人っきりにしておこうか。セシル?」
俺は――
聞く。
「ん。わかった」
セシルが――
答える。
思い切って――
セシルも、俺に抱き着いてみる。
だが――
「どうしたんだい? セシルも甘えたいのかい?」
俺は――
セシルの頭を……ヘルメットだが――
そっと撫でて、その場を離れる。
【やはり妹扱い……いつになれば女として見てもらえるのかな?】
鎧と――
ヘルメットのせいで、女らしさのかけらもない(と思っている)セシル。
そう――
感じる。
だが――
デルクから告白してほしいと思っている。
なので――
口が裂けても、言えない。
そして――
俺は――
【あんなの見ちゃったから寂しくなったのかな?】
そう――
思っている。
勘違いも――
甚だしい。
戦闘スキルや――
生産系のスキルは、しっかり身についた、俺。
だが――
男女の機微については、全く分かっていなかった……
【デルクの鈍感!】
セシルは――
1人、落ち込んだ。
レイナウトと――
ロース。
2人――
結ばれた。
良かった――
本当に、良かった。
幼馴染――
ずっと、一緒だった。
やっと――
想いが、通じ合った。
俺は――
嬉しかった。
でも――
セシルは、違う。
セシルは――
羨ましいんだ。
俺――
気づいていない。
セシルの――
気持ちに、気づいていない。
妹――
としか、見ていない。
ヘルメット――
脱げばいいのに。
でも――
セシルは、脱がない。
俺から――
告白してほしい。
だから――
言えない。
鈍感――
本当に、鈍感だ、俺。




