あとがたり
はじめまして。『白の目覚め』を読んでくださった方はお久しぶりです。バトレボです。『とぐろ』を手に取っていただき、ありがとうございます。
今回は、少しダークな側面を正面から描いてみました。読後に残る重みや、静かな明るさのようなものを、物語の呼吸として感じてもらえていたら嬉しいです。
主人公たちの固有名をあえて伏せていたのは、名前を考えるのが面倒だったから…というものありますが笑。でも、物語の節目で、名が自然に立ち上がる瞬間を大切にしたかったからです。終盤で“ゼン”と“環守”という呼び名が定まり、ようやく彼らの歩幅がはっきり見えた気がします。
『とぐろ』という題には、呪いが大地と大気に沈み、歴史そのものに巻き付き続ける世界観を込めました。蛇狩と蛇呪の終わりなきせめぎ合い、祓っては巡り、巡っては受け渡す輪――その螺旋に、人がどう息を合わせて生きるのか。
『白の目覚め』を読んだ方は、どこか響き合う部分に気づかれたかもしれません。実のところ本作は、「あの物語を反転させたら何が見えるだろう?」という発想から出発しています。同じ“蛇”でも、視点と置き場が変われば、まったく別の姿を取るのだと、書きながら何度も驚きました。勢い任せの見切り発車ではありましたが(笑)、筆が勝手に走ってくれた場面も多かったです。
第2章の構想も、ゆっくりと、しかし確かに動き始めています。いまは輪郭だけがふわりと立ち上がっている段階ですが、ゼンと環守の名にふさわしい旅路を用意できればと思っています。
最後になりますが、いつも読んでくださる方も、貯め読みで一気に追ってくださる方も、本当にありがとうございます。皆さんの反応は、次の一行へ踏み込むための杖のように、私の背を押してくれます。ときに自分と、ときに読者の皆さんと対話するつもりで、これからも書き続けます。
ゼン、そして環を守る者たちの物語は、まだ途上です。どうか今後も彼らの歩みを見届けていただければ幸いです。




