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06.聖水リベンジ

「はぁ⋯⋯」

 今日も溜息から1日が始まる。


(最近、溜息ついてばかりだな。でも、仕方ないじゃないか、自信がないんだもん)


「さ、行きますよ~!」

 

 アッシャーが呼びに来た。


「祈りの泉だよね?」

「ええ」


 僕が倒れたあの場所で、今日は再び聖水を作れるか、検査するんだって。


「やらなきゃダメだよね?」

「あなたがやらなきゃ、どなたがやるんです? まだ、次代の大神官を決めていないんですから、あなたしかいないんですよ?」 

「だよねぇ⋯⋯」

 

(でも、いくらテストがあっても、簡単に大神官の地位を譲るなんて、無責任な事できないよ。それに、どんな人が良いのか、情報が少なすぎるんだよね⋯⋯)


 僕は、次代の者を探すって宣言したのに、2ヶ月経っても、誰も推薦できなかった。


「こちらで、着衣を脱いで頂けますか?」

 

 僕が裸になると、アッシャーが何かを唱え始めて、僕の周りがキラキラした。


「これは?」

「浄化魔法ですよ? 嫌ですねぇ、忘れちゃいました?」

「いや、大丈夫」

 

 本当は大丈夫でも何でもない。知らないから聞いただけだ。


「そのまま泉に浸かって下さい、今回は泉の水を五分の一程度に減らしておりますから、順調ならば、20分くらいで聖水が出来上がるはずです」

「あ、気持ちいい⋯⋯」

 

 僕は言われるがままに、泉へ進み、中に置いてあるビーチベッドに横になった。


(今日は朝から気温が高くて、ムシムシしてたから、水風呂みたいで気持ちがいいな)


「では、力を放出して下さい」

 

 アッシャーに促されて、力の放出を試みる。


「⋯⋯」


(う⋯⋯、身体に力を入れてみるけど、何も変わらないな。失敗?)


「何、遊んでるんですか? 脱力して頭を空っぽにするんですよ⋯⋯はぁ⋯⋯」

 

 一生懸命、力を出そうとしていたのに、叱られた。言われた通り、力を抜いて、出来るだけ、何も考えない様にする。


「わぁぁ⋯⋯」

 

 すると、僕の身体が光り出して、思わず小さな声をあげた。何だか、マラソン大会で走ってる時みたいに、徐々に体力を抉られる感じがする。そのうち、僕の身体のキラキラした光が泉の水に溶け出して、薄いピンク色に色付いた。


「そこまで! リプライ様、ご自分で出られそうですか?」

 

 アッシャーが、気遣って声をかけてくれたけど、まだ余裕がありそうだから、頷いて自分で泉を出た。

 

(何分経ったかわからないけど、一応成功なのかな?)

 

 アッシャーの側にいた神官が、リトマス試験紙みたいな紙を泉に浸ける。


「成功です!」

 

(良かった〜)


 僕がホッとすると、アッシャーも同じだった様だ。


「良かったですね⋯⋯」

 

 アッシャーが、今まで見た事がないほど穏やかな顔で、僕を見つめた。先ほど、聖水の出来を調べてくれた神官が、ローブをかけてくれる。


「ありがとう」

 

 僕がお礼を言うと、神官が驚いた顔で僕を見返した。


(なんでお礼を言っただけで、驚くんだよ⋯⋯)


「今後は、この量で月1回お務めをお願いしますね?」

 

 アッシャーの言葉に、僕は耳を疑った。


「えっ? 月1回で良いの? 五分の一って事は、最低でも1週間に1回は」


「はぁ⋯⋯、それは、あなたがお務めをサボって、まとめて作っていらしたからでしょう? しばらくは体調に変化があるといけませんから、量も増やしませんし、月1回です」

 

 またアッシャーに、溜息をつかれた。


(このおじさん、どんだけものぐさだったんだよ⋯⋯さては、夏休みの宿題を最終日に慌ててやるタイプ?)


 色々リプライについて思う事はあったし、本来は、もう少し継続して力を出せる様にならなくちゃいけないのかもしれないけど、一安心だ。


「この後は、休んでいいんだよね?」

「どうぞごゆっくり」

「アッシャーも休めるのか?」

 

 僕は、自然とアッシャーに尋ねていた。


「えぇ、ゆっくりさせていただきます」


(良かった⋯⋯、きっとアッシャーには、今までいっぱい心配かけたんだろうな?)

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