表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

04.モテ期到来

(釣書って、なんなんだろう?)


「やっと、読む気になったんですね? 読まないから、燃やせ!! なんて仰るんで、取り敢えず半年経ったら、仕事として燃やしてますけど⋯⋯」


「ごめんなさい。他人に、嫌な事押し付けてたよね? そもそも人から貰ったものを読まずに捨てるなんて、人として⋯⋯捨てるなら自分で捨てれば良かったんだ⋯⋯」

 

(このおじさん、大神官だし、てっきり良い人だって思い込んでたけど、実は悪い人なのかな?)


「いえ、私が頂いても、読みはしないでしょうから」

 

「えっ? アッシャーも読まないの?」

 

「まあ、その量と内容をもう一度見て、どのようなお返事にするかだけ決めて下されば、私がお断りの返事を手配しますよ。今、お持ちしますので、お待ち下さい」


 そう言って、アッシャーは、部屋を一度出ていった。


「お待たせいたしました!」

 

 戻ってきたアッシャーは、お供の者を連れて、サービスワゴンの上にいっぱいの釣書を持って来た。木箱4つに収められたそれらは、今にも崩れ落ちそうだ。


「これで全部?」

「古い物から3ヶ月分ですよ。取り敢えず、分類用の箱を他に2つ用意しますから、断るか断らないか分けて入れて下されば結構です」


「うん」

 

 そうして初めて、僕は、釣書とやらを目にする事にした。


「か、可愛い〜!!」

 

 中を開くと、可愛い女の子の絵が出てきた。思わず顔がニヤける。


「え! 僕と結婚したいから、会って欲しいって?」


(これって、お見合いってこと? 釣書って、お見合いの申込書のことだったんだ)


 取り敢えず、申し込んでくれた子には申し訳ないけど、好みの顔かどうかで、分けることにした。だって、3ヶ月だけで100通以上あるんだもん。絵を見るだけできっと1時間はかかる。


「ねぇ、アッシャー、これって、モテモテってことだよね?」

 

(こんなおじさんが、何でモテるんだ? この世界の人って、趣味が悪いのかな? 太ってる人がモテる国もあるって、学校の先生が言ってたから、おじさんがモテる国もあるのかな? 僕には、どんな子が良いんだろう⋯⋯)


「はいはい、モテモテですよ⋯⋯。まぁ、あなたのスペックしか見てないですし、ご令嬢というよりは、その親御さんが結婚させたいだけですけどね?」


 アッシャーが溜息をついた。


「ヘヘッ、それでも、たくさんいる男の人の中から選んでくれたって思ったら、何だか嬉しいな!」

 

 思いっきり笑顔を向けると、アッシャーが何だか残念なものを見る目で僕を見た。


「取り敢えず、こっちの箱の子は断ってもらって良い?」

「理由はどのように?」

「ん〜、正直に言うと、好みの顔じゃないだけなんだ。でも、そんな事言ったら怒られちゃうよね?」


「はぁ⋯⋯、わかりました。今回は御縁が無かったと無難にお断りしておきます」

「ありがとう!!」

「で、そちらの残りは? どのように?」


「だよね? 正直、会ってみないとわからないけど、まだ15通くらいあるし、全員に会うわけにはいかないよね? アッシャーは、どうやって選んでるの?」


 僕は、アッシャーに聞いてみた。『わからない事は恥ずかしい事じゃない』って、昔、母さんに教えてもらったんだよね。大人に聞いたら、大抵の事は知ってたり、知らなくても調べて教えてくれる。


「わ、私ですか?」

「そうそう、だいたいアッシャーだって、結婚してないから神官してるんでしょ?」

「⋯⋯私の場合、幼い頃から決められた相手がおりますので、特に考えた事、ないんです。⋯⋯お役に立てず、申し訳ありません」

 

 アッシャーが珍しく謝った。


「あ、謝らないでよ。凄いな! 恋人がいるって事? どんな人? ねぇ、どうやって知り合ったの? どこが好きなの?」

 

 僕は、興奮してアッシャーを質問攻めにした。


(恋人がいるって、どんな感じなんだろう?)


「⋯⋯い、言いません!」

 

 アッシャーが顔を真っ赤にして、部屋を出て行った。


「あんなに真っ赤になるなんて、アハハッ」


 僕は、声を立てて笑った。思えば、この世界に転生して、初めてかもしれない。

 

(あんなに顔を真っ赤にして⋯⋯。そんなに恥ずかしがる事なのかな? だって、相手の子にはそれだけ素敵な所があるんだよね? 友達の素敵な所を見つけられるのは、良い事だって、担任の先生が言ってたけど⋯⋯。友達の好きとは違うんだよね?)

 

「ぷふっ」


 僕は、アッシャーの真っ赤な顔を思い出して、もう一度笑った。アッシャーには、いつも叱られたり、嗜められてばかりだから、可笑しくて仕方ない。


(まぁ、取り敢えず、何とかなるかな? 誰か1人だけでも会ってみよう! わからなきゃ、やってみたら良いよね?)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ