表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

03.家族に会いたい

「そういえば、ずっと家に帰ってないんだけど⋯⋯」

 

 信者さん達へのアドバイスに余裕が出てきたら、自分の事がすごく気になって、アッシャーに尋ねた。


(僕はおじさんになっちゃったけど、きっとこのリプライ様にも家族がいて、少なくても僕になってから1ヶ月は会ってないんだから、心配かけちゃってるよね?)


「え? 家へ帰られるのですか?」

 

 アッシャーがすごく驚いた顔をしてる。


(ダメなの? 変な事言っちゃった? どこへって、僕、家がないの? まさか孤児?)


 何だか次に言葉を発するのが怖くなって、黙っていると、アッシャーが溜息をついた。


「いくら死に目にあったからと言って、そうやすやすとお城には戻れませんよ? リプライ様が死にかけた事は公に出来ませんし、王様に会うだけであっても、口実を作らなくちゃなりませんからね⋯⋯」


(ん? 僕の家族、王様なの?)

 

「ご、ごめんなさい」

 

 よくわからないけど、謝ってしまった。


(リプライに転生した事がわかってから、できるだけ、自分の事を『僕』って言わない様にしたり、少しずつ大人っぽい言葉を使う様に努力してるつもりだけど、ごめんなさいは、違うんだろうな⋯⋯上手くいかないや)


「帰る家が欲しかったら、大神官を辞めて、早く結婚するんですね? お相手がいらっしゃればですけど⋯⋯」

「え? なんで結婚?」 

「神官は未婚の男性にのみ許された職務ですから、結婚すれば、自ずと辞めるしか無くなるじゃないですか」

「だよな⋯⋯でも、辞めて、何の仕事ができる?」


 本当は、知ってなきゃおかしいんだろうなと思って、誤魔化すような返事をした。 


(僕だって、生活にお金がかかる事くらい知ってる。働かなきゃ、食べていけない。何して稼げって言うんだ?)


「リプライ様、大神官を辞めたら、公爵位の叙爵と領地経営が待ってるなんて羨ましいです。幼い頃に神殿に預けてしまったから、王様には罪悪感があるんでしょうかね? まぁその、とにかく配慮しなくては、というお気持ちがあるんでしょう」

「そう」


 僕は、相槌を打った。


「まずは結婚のお相手を決めて下さい。明るい未来は、それからです。あと、あちらこちらから届く釣書、いつまでも放置するのは良くないですし、せめてその気がないなら、お断りのお返事くらいは送るべきかと……」


(明るい未来って、家族と過ごす未来? 幼い頃に神殿に預けられて、家族と過ごせなかったなんて、このおじさん、ちょっと可哀想だな)


「力なんて無ければ、家族と過ごせたのにね⋯⋯」

「何を仰るんですか? 聖水は、病人の治療や魔物の退治とか色々なものに使われるんですよ。とても貴重で、大事なものなんです。 それを作る力がどれほど尊いものか。それに⋯⋯」

「それに?」

「いえ、わかりきった事を申し上げて、失礼いたしました。」


 聖水は、普段、瓶に詰められて、直ぐに必要な人に配れるようにしてるみたい。その数が減ると僕の出番。なぜ倒れてしまったのか、はっきりとした原因は、まだわかってない。普通は5年位で退任するのに、僕は15 歳からずっとこの役目を担ってて、既にその期間は、常人の3倍だ。長く務め過ぎたせいで、力が枯渇し始めたのかもしれないなんて、アッシャーが笑ってた。


(笑い事じゃないよね? たぶんこの人、それで力尽きちゃって⋯⋯だから僕の魂が転生できたんじゃない?)


「辞めるって言ったら、直ぐに代わりが見つかるの、か?」

 

(すぐ辞めても良いのかな? 僕と同じ様な人、この世界にたくさんいるのかな? アッシャーは笑ったけど、もし力の枯渇が原因なら、この力が無くなる前に代わりを見つけなきゃ! みんなに迷惑かけちゃうよね)


「⋯⋯過去にはスペアの人材を常に置いていたんです。ですが、リプライ様の在位が長引くにつれ、その存在が蔑ろになり、今はおりません」

「じゃあ、直ぐに探してくれ、次の代に引き継ぐ」

「え? 引き継ぐ?」


 アッシャーが、眉を顰めた。


(僕の本気、伝わったのかな?)


「在任中に引き継ぎがない事、ご存知ですよね?」


(ち、違った⋯⋯)


「そ、そうだったっけ? じゃあ、何から始めたらいいんだ?」

「とりあえず、気になる神官を私のところへ寄越して下さい」

「気になるとは?」

 

(言われた意味がわからなくて、尋ねたけど、大人っぽく話そうとすると、何だか偉そうな感じになっちゃったり、咄嗟の言葉は、どうしても繕えない。ムズっ!)

 

「何でも良いのですよ。その者の野心でも、若さや容姿でも、貴方様が気になるという事が重要です」 

「意味がわからない」

「でしょうね? でも、次代の者は、大神官の心眼に導かれると聖典に記されております」


(でしょうね? って僕、馬鹿にされてる?)

 

「それって、適当過ぎないか?」

「大丈夫ですよ。きちんと神殿の判定テストを行い、本人の意思も確認しますので」

 

 アッシャーの言葉を聞いて、少しホッとした。だって、誰でも良いからなんて言って、押し付けて良い仕事じゃないと思ったんだ。


「ところでアッシャー、釣書を持ってきてくれる? 返事を書かなきゃいけないんでしょ?」

 

(釣書がなんなのかよくわからないけど、お返事書かなきゃいけないって言うんだから、手紙の事かな? まず目を通さなきゃね?)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ