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02.初めてのお客様

(夢? 何だか疲れたな⋯⋯良し! もう一回寝よ。僕、勉強のし過ぎで疲れてて寝ちゃっただけだよね?)


 そう思って寝たのに、目覚めても、僕の身体はやっぱりおじさんだった⋯⋯。そして、現在、2日目の食事中。


「さて、今日の予定は取りやめましたが、明日からは、懺悔室に出向いて貰いますよ?」

「懺悔室って?」


 アッシャーの言葉がわからず、疑問を投げかけた。


「もう、そこからですか? しつこくありません?」

 

 溜息混じりに、アッシャーが信者の悩みを聞いて、ありがたい言葉を授けたり、勇気を与える部屋だと教えてくれる。


「できない⋯⋯記憶がないんだ⋯⋯」

 

 呟いた言葉を、アッシャーは全く信じてくれない。むしろサボる口実だと思ってるみたい。


(人生12年しか生きてないんだぞ、僕にそんな事出来るわけないじゃないか⋯⋯)


 どんなに頭をフル回転させても、出来る気がしなかった。仕方なく、もう一度布団を被って目を瞑る。


(姉ちゃんが読んでた漫画は、悪役令嬢の幼い頃に転生したり、少なくても自分と同い年くらいに転生してたよな? 何で僕だけおじさんなんだよ⋯⋯っていうか、僕の身体の持ち主の記憶、どこ行ったんだ? 死んじゃったの? ありがたい言葉って何だよ? 僕の知ってる言葉なんて⋯⋯)


 ――そう思っている内に眠りに落ちて、気づいたらまた朝だった。

 

「さあ、食事が済んだら、お仕事ですよ」

 

 アッシャーの容赦ない言葉が刺さる。


「悪いけど、過去の記録とかある?」

 

 悩みに悩んだ末、僕が出した結論は勉強だった。受験勉強で散々過去問をやってきたのと同じだ。


(答えが分かっていれば、簡単に解けるはず!)


 そう思った。


「ございますよ」

 

 アッシャーは、すんなりと記録帳を持ってきてくれた。


「それでは、お願いいたします」

 

 アッシャーに促され、暗い小部屋に過去の記録帳と今日記録するための新しい記録帳を持って入った。目の前には、記帳台があり、そこで記録帳を広げる事ができた。顔を見えない様にするためか、壁に小さな穴が開いているだけで、相手の顔は見えない。


(ここで、信者の言葉と自分の話した内容を書くんだろうな⋯⋯)


「あの? よろしいでしょうか?」

 

 穴の開いた壁から女性の声がかかる。


「はい、どうぞ」

 

 仕方無しに、相手の発言を許す。


(できるだけ落ち着いた声色で返事をしたつもりだけど、緊張でこの後、気の聞いた言葉なんて言えそうにない⋯⋯とりあえず、真面目に相手の話しを聞かなきゃ!)


 それだけを僕は心に誓った。


「私には息子がいるのですが、急に部屋に閉じこもり、外へ出なくなってしまったのです⋯⋯どうしたら⋯⋯」


 声の主は、切羽詰まった様子で話し出した。


(ん? これって引きこもり?)  


「ご年齢は?」

「13歳で、やっと学校へ通い始めたところです⋯⋯」

「放っておきましょう、人生は長いのです」

「えっ? ですが、このままでは息子は⋯⋯」

 

(あぁ、いるよね? こういう過干渉のお母さん。何とかしたいのは子供のためじゃなくて、自分が安心したいだけなんだろうな?)


 緊張より、怒りが湧いた。


「食事は取れていらっしゃいますか?」

「はい、食事は⋯⋯」

「それでは、問題ありません!」

「え? で、ですが」


 食い下がる女性に語りかける。


「それでは、自己責任だと伝えてあげて下さい」


 更に続ける。

 

「ご自身がお子様に声をかけるのは、ご自身が放置して後悔しないための責任を果たすため。お子様は自己責任で無視するも従うも自由だと、そしてその結果は、自身で責任を負わねばならないと」

「まだ13ですよ?」

 

 女性が反論する。


(あれ? 失敗しちゃったかな? でも、僕、大神官だもん、怯んじゃ駄目だ⋯⋯)


「いえ、もう13歳なのです。何でもしてやらなければならない年齢ではないはずです。⋯⋯失礼ですが、未だに全てをしてやらなければならない様な育て方をなさったのでしょうか?」

「い、いえ⋯⋯」

「そうですよね? あなたの事は、お声しかわかりませんけれど、凄く優しそうだ。子供を見守るのも、親の務めですよ」 

「や、やってみます、ありがとうございます」


 女性は漸く納得してくれた。


(ふぅ⋯⋯こんな人生相談、僕が受けて良いの?)


 そう思ったし、本物の大神官でない僕が応える事に心が痛まないではないけど、これが仕事だと言われたら仕方ない。記録帳に今の話しを書いて、前の記録を1つ読む。だって、不安だったんだ。


(うん、僕のアドバイス、強ち間違ってないな、良し!)


 相談を受けつつ、『過去問の』勉強もする。やっつけ仕事みたいで申し訳ないけど、これが今の僕の実力だし、精一杯なんだから、仕方ない。

  

「どうぞ⋯⋯」


 こうして、この日、5人の信者の悩みや相談に対応した。けれど、今日はラッキーだっだ。僕と年齢の近い子供の相談や、聞いて欲しいだけの相談が多かった。


 一番難しかったのは、身分違いの恋ってやつだったんだけど、『天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず』っていう昔の偉い人の言葉をあげた。あとは、まず出会えた事に感謝しなさいって。出会いに感謝っていうのは、僕の好きな歌から拝借したんだけどね。


 そうして僕は、1ヶ月近く、信者さん達の懺悔を聞きながら、過去の記録帳を熟読し、アドバイスを繰り返した。

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