表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

17.未来へ

 帰りの馬車に乗り込むと、すぐにアナスタシアに詰め寄られた。

 

「ところでリプライ様、もう隠し事はありませんわよね?」

「えっと⋯⋯、アナスタシアには、ない⋯⋯かな?」

「どういう事ですの?」

「いやだって、ヒーロムにまだ一言も言ってないんだ⋯⋯」

「やはり、そうでしたのね? 候補を王様にお2人伝えるなんておかしいと思いましたわ。もし断られたら、どうするおつもりですの?」


「それなら大丈夫かな? だって、アイツが自分に大神官の座を譲れ!って言ったのは本当だし。次代の者は大神官の心眼に導かれるみたいだし」 

「アッシャー様が嘘を仰るとは思いせんが、心眼とは結局、何なのですか?」

「結局、気になる存在って事以外、よくわからないんだ⋯⋯」

 

 神殿に戻って直ぐに、僕はヒーロムを呼びつけた。

 

「何ですか? 改まって⋯⋯」

 

 ヒーロムが不服そうな顔でこちらを見遣る。


「えっと、結婚する事にしたんだ⋯⋯」

「知ってますよ?」

「だよね⋯⋯」

「⋯⋯」 

「僕、結婚する事にしたから、君が次の大神官ね? ちなみに拒否権ないから」


 ヒーロムがキョトンとした瞳で僕を見つめた。


「⋯⋯はぁ? 何冗談言ってんすか?」

「冗談じゃなくて、本気だよ! だって大神官譲れって、言ったじゃないか」

「む、昔の話だろ?」

「まさか、嫌なの? でも、もう王様にも言っちゃったし⋯⋯拒否権はないって言ったよね?」


(断られたら、どうしよう?)


 僕は、最悪の結果を思い浮かべた。断られて、次が見つからなきゃ、アナスタシアと結婚出来ない。


「⋯⋯なんでそこで王様が出てくるんだよ?」

「えっと、兄さんだから?」

「はぁ?」

「だって、家族に結婚の報告くらいするだろ? ついでに次の大神官の話もしてきたんだ」


「い、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ〜!」

 

 ヒーロムが大声で叫んだけど、無視した。


「おい、無視するな!」

「えっ? だって、嫌でもやってくれるでしょ? 大人は嫌な事でもやらなきゃいけない時があるって、アッシャーがよく言ってるよ?」


 ヒーロムは、その後黙って僕の部屋を出て行った。


◇◇

 

「何で俺なんだよ?」

「まだ言ってるの? 結局断るとは言わないんだから、やるんでしょ?」

「やるにしてもだ、何で俺だ?」

「教えなきゃダメか?」

 

 今日は、結婚式当日。ヒーロムに大神官を譲る事を告げて、半年が経っていた。


 (やっぱり、アッシャーが前に言ってた通り、しつこいな⋯⋯)


「だって、アッシャー様とか、アッシャー様とか⋯⋯他にもいるだろ?」

 

 ヒーロムが食い下がってくる。


「いるけど?」

「だったら⋯⋯」

 

 ヒーロムが言い淀む。


(言いたい事はわかるけど、王様も賛成してくれたしな)


「なんだ、自信が無いのか?」

 

 僕は、最後とばかりに嫌味を言ってやった。


「そんな訳ないだろ? お前が、15歳から出来て、18歳の俺が出来ないわけない! でも⋯⋯理由くらい教えろよ」

 

 不遜な物言いだけど、大神官を押し付けるんだし、大神官は、王様の次に身分が高いらしいから許してやる。


「嫌いだからだよ? お前みたいに前向き過ぎて暑苦しいヤツ、大っ嫌いなんだ! 自分でも「嫌いだから譲らないのか」って言ってたじゃないか?」

 

 僕は正直に言ってやった。


「おい! 実力とか、そういうのじゃ無いのかよ?」

「そうだなあ、残念ながらアッシャーは公爵家の執事になる予定だから、神殿には残れないんだ」

「はぁ? 聞いてないぞ!」

 

 ヒーロムが怒りの目を向けた。優秀な補佐が抜けるんだから、仕方ない。


「うん、言ってないからね? 実は、アッシャーって、王家が秘密裏に付けた僕の教育係兼護衛だったんだ。アッシャーも結婚するらしい。でも、次の補佐への引き継ぎで3ヶ月は残るってさ。諦めなよ?」 


(何で嫌になったのかは知らないけど、ヒーロムならきっと大丈夫だ。だってあれだけ僕の前で前向きソングを歌ってたんだから、きっと前向きに頑張ってくれるはず!)


「諦めとか言うな! せめて君なら大丈夫だとか、激励の言葉を言えないのかよ?」

「はいはい。君なら大丈夫、大丈夫」

「はぁ⋯⋯」

 

 わざと棒読みで言うと、ヒーロムが盛大に溜息をついた。


「あれ? 溜息つくと、幸せが逃げるんじゃなかったっけ?」

 

 僕、結構根に持つタイプなんだよね。


「そろそろ式が始まりますから、無駄口たたくのはお控え下さい⋯⋯」

 

 アッシャーが結婚式の始まりを告げて、ヒーロムが先に式場へ入る。今日の司祭は、ヒーロムだ。


「アナスタシアを迎えに行ってくる」

 

 僕はそう言って、その場を離れた。この世界の結婚式は、僕が知っているのとは少し違っていて、新郎新婦が2人で一緒に入場するんだって。


 扉の向こうで、控えめな音楽が始まった。緊張しているのか、胸の奥が、じわじわと熱い。


「あのさ、こんなおじさんで良かったの?」

 

 式場に入る前に、恐る恐る一番気になっていた事をアナスタシアに聞いた。


「今ですか?」

 

 アナスタシアが僕を優しく睨む。


「仕方がない人ね? あなたがおじさんなら、私はおばさんよ? なかなか結婚相手に巡り会えなかっただけの、ちょっと不器用な、普通の青年でしょ?――でも、私が選んだのよ?」

 

 アナスタシアの言葉に心底ホッとした。だって、小学生の僕から見れば、ひげが生えただけで、立派なおじさんに見えたんだ。

次の話が最終話となります


※なぜ、ヒーロムは、栄誉ある大神官の座を嫌がったのでしょうね?

気になる方は、「目指せ、大神官〜公爵令息の聖水作り〜(連載版)18.前向きすぎた代償」をお読みいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ