偶像崇拝
神は信仰されないと力を持たない。そのため、偶像も神の部類に入るのではないか。それは、否定しがたい。しかし、その偶像が人工知能でもそのことが言えるのか。分からないことが多いのが偶像である。
「偶像観覧ペアチケットぉぉぉ?!」
とあるマンションの一角で男性の叫び声が聞こえる。彼は、神薙相間。
何故こうなってしまったのか。
事務所にお金を貸してくれといつも通り金欠な神薙家に新たな家族が加わったからいつも以上に必死で言っていたら、
『息抜きも大事ですよ。』
と、この偶像観戦ペアチケットが届いたのである。
まあ当然、この御時世だ。入手困難でも売ると捕まる。例え、神殺しと言う特別な職業でもだ。
「その偶像ってまさか、ここのんの!」
と金髪ピンク目の可憐な少女が言った。彼女は彼の義妹の永遠。そして、白髪の素敵な身体を持つ女性が
「留守番するよ、2人で行ってらっしゃい。」
と言った。彼女は、義姉のゼウス、本当にかの最高神である。
妹は目を輝かせ、「お兄ちゃん、行きたい」と言った。彼は
「行きたいなら行こう。」
と言い、ライブ当日まで妹とワクワクしながら待っていたのであった。
当日になり、相間は違和感を覚えた。
ライブ会場に入るとそこは幻想的な空間が広がっていた。
相馬は、偶像について詳しく知らなかったが、幻想的な空間と、1人の美少女“一ノ瀬九重”と言う存在が織りなす世界がとても輝かしかった。永遠は
「お兄ちゃん、気に入った?」
と感想を求めてきた。彼は小さく頷き、はまっていることにも気づかずにその時を過ごした。
マンションに帰宅すると、義姉は
「ニヤけてるよ、そうま。」
と相間の少しの緩みに気づき、嬉しそうに指摘した。彼女は、相間の喜んでいる顔を見て嬉しそうだった。しかし、相間は
「まさか俺がニヤけてるって言いたいのか、義姉さん。ニヤけてない、ニヤけてない、あんな奴にニヤけるなんてあり得ない。」
ととても強く否定した。それも嬉しそうに。
永遠は兄が気に入ってくれたことを喜び、
「これが偶像の人の心を動かす力だよ。お兄ちゃん。」
と言った。すると、彼は
「確かに楽しかったかもしれない。」
とさっきの言葉とは真逆のことを言った。