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鉄と鋼のディグマイツェン  作者: 三上 渉
第三幕:遠い昔の約束
14/17

鉄と鋼のディグマイツェン

「行くよ! 2号機、腕部パーツ展開!!! 3号機とのドッキング開始!!!」


ディグ2号機の背中に折りたたまれていたバックパックが左右に展開し、2号機の腕部と連結し大型の腕へと変形!


「3号機、脚部展開……! 2号機とのドッキング完了……!」


それと同時に、同じ様に脚部パーツを連結させた3号機が2号機と合体し巨大な四肢を形作る!


「ラディ……!」

「おう! 1号機、ドッキング開始!!!」


そして巨大な四肢の中央、胴体の部分に1号機が重なり連結!

1号機の腕部と脚部がその巨大な四肢の内側で固定!

同時に機体全面が分厚い装甲により覆われる!


「腕部パーツ連結……完了!!! 脚部パーツ連結……完了!!!」


3機のディグのエンジンが同期され、共鳴する様に叫び声を上げる!


「3機のエンジンの連結……! 出力安定……!!!」

「フレーム固定!!! 操縦系統を回すよ!!!」


1号機の頭部が鉄兜の様なバイザーに覆われ、同時にモノアイカメラが光を放った!


「全シークエンス完了確認! 起動準備よし! 起き上がれ!!! ディグ!!!!!」


3機のディグが重なり合った巨大な鉄の塊が立ち上がった!

そして、柄も細工もない……ただの無骨な剣を手に!


「……突撃するぜ!!!」


薄れつつある煙幕を切り裂き! 地響きを上げながらヴィーアシュラウトに襲い掛かる!!!


ガギィンッ!!!


「何!!! こ! こいつは!!!」


鉄と鉄がぶつかるその衝撃と同時に煙幕が晴れ!

剣と剣を交わす、騎士と単眼巨人の姿が現れた!!!






「な、なんだアレはーーー!!!!! 整備科チームが張った煙幕の中から謎の機体が現れたーーー!!!!!」

「アレは!? まさか合体したのか!?」

「が、合体!?」

「はい! おそらくあれは3機のディグが合体し、大型の機体となった姿です!!!」


合体したディグの姿に実況と解説の二人、そして他の生徒達も驚きの声を上げる!


「しかし、魔力に依存しない巨大騎兵!!! 重量は跳ね上がり! あの状態を長く維持する事は難しいはず!!! 整備科は勝負を賭けてきたと思われます!!!」

「なんと!!! ただ逃げているだけではなかった! ここに来て整備科チームの切り札が登場ーーー!!! 決闘もクライマックスだーーー!!!」






「くっ! 合体だと!? 次から次へとふざけた真似を……!!!」


目の前の巨人に対し、マーベリックは驚きを見せながらもすぐにその表情を怒りへと変えていく!


「騎士の決闘を侮辱する不逞の輩が!!! このマーベリック・ハイデンクルトとヴィーアシュラウトが!!! 貴様等を粛清してやる!!!」


そしてその烈火の様な怒りに任せた様に!

ヴィーアシュラウトがその手の大剣を振り下ろす!!!


ゴオッ!!!


圧倒的な破壊力を纏い迫る鉄塊!!! だが!!!


「やってみろ!!! プライドだけが一流の三流騎士!!!」


ギィンッ!!!


その一撃を! ディグはその手の無骨な剣ではじき返す!!!


「なっ!? 何!? コイツ……!!!」


だがすかさず体勢を立て直し!

ヴィーアシュラウトは再度、大剣を振るう!!!


ガギィンッ!!!


しかし! その一撃もやはりディグの剣によってはじき返された!

鉄と鉄がぶつかり合う音が激しく周囲に響き渡る!


「コ! コイツ!!! 剣の心得があるのか!? ヴィーアシュラウトの大剣を、そんなみすぼらしい直剣ではじき返すなど!?」


そう、正面からぶつかればヴィーアシュラウトの持つ大剣とディグの持つ直剣

質量、威力の差は明らかだ。


だがラディウスは衝撃の中心点を見定め、自分の機体と剣に負荷をかけずにヴィーアシュラウトの攻撃を捌いていたのだ!

しかし! 原因はそれだけではない!


「ハアッ! ハァッ!!! くっ……クソッ!!! 重い!!! 剣が……!!! ヴィーアシュラウトの手足が重い!!!」


ヴィーアシュラウトの関節が駆動する際に発せられている魔力光。

それが徐々に薄まってきていたのだ!


「魔力……!!! 切れだと……!!!??? このマーベリック・ハイデンクルトが! この程度の戦いで息を切らせているだと!!!???」


焦燥の色を見せるマーベリックに対し、ラディウスは不敵な笑みを浮かべ答える!


「ここに来るまで散々走り回っただろ!? それにさっきは思いきり剣をぶん回して木をなぎ倒していただろうが!!! まあ大量に魔力を消費してるそっちに対して、こっちは燃料が少なくなって軽くなったぐらいだけどな!!!」

「ぐっ……! くうっ!!!」

「分かるぜ!? どうせ弱っちい平民相手だ! 魔力を温存しようなんて考えも無かったんだろうよ!」


ギィンッ!!!


動きの鈍ったヴィーアシュラウトに対し!

今度はディグが剣を打ち下ろし、ヴィーアシュラウトはそれを大剣で受ける!!!


「オマエらは最初から俺達なんて眼中になかった、俺達を敵だとすら思ってなかった! オマエらには正面から誇りを賭けて闘う覚悟がなかったんだよ!!!」


グググッ……!!!


「力負け……!!! するだと……!!!???」


そのまま力任せに剣を振り下ろそうとするディグ!!! しかし!!!


「……舐めるなよ!!! この平民がぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」


ガギィンッ!!!


「何ッ!?」


消えかけていた魔力光が再び輝きを取り戻し! ヴィーアシュラウトが息を吹き返す!!!


「誇りを賭けて闘う覚悟だと!? 貴様等蟲風情が偉そうに吠えるな!!! 私達は選ばれた人種だ!!! 産まれた時から財! 家柄! 才能! それらを全て与えられた人種だ!!! そしてお前らは選ばれなかった人種!!! いや! 人ですらない!!! 私達の為に働く道具! 運命の神が私達に与えた奴隷共だァァァッッッ!!!」


歪んだ執念が騎士機に取りつき!

災厄をまき散らすかの様に剣を振るう!!!


「くっ!!!」


その凄まじい攻撃をディグは後退しながらもなんとか凌ぐ! だが!!!


「ッ!!! マズイよラディ!!! フレームへの負荷が予想より激しい!!! これ以上受けると脚部が!!!」

「分かってる!!!」


機体へのダメージは確実に蓄積している! 受けに徹するのは悪手!!!

勝負は次の一瞬!!!


「やるしかねえ!!! オッサン……いや! 師匠直伝!!!」


その時!!! ヴィーアシュラウトが上段に剣を構える!!!


「潰れろォッ!!!!!」


ヴィーアシュラウトの真っ直ぐ打ち下ろした剣に対し!

ディグがそれを受けるように下から剣を振り上げる! そして次の瞬間!!!


ギィィィンッ!!!


鉄を滑らせる音が響いたと同時に! まるで迫る鉄塊をすり抜けるかの様にディグの剣が通り抜け!

逆にヴィーアシュラウトの大剣はディグの横を掠め、地面に打ち付けられていた!!!


「なっ!!!???」


そして高く振り上げたその剣を、地面に打ち付けられた大剣に向かって振り下ろす!!!

狙いは先程こちらの刃を滑らせ削っておいた一点!!!


「ソードブレイク!!!」


バギィンッ!!!


それと同時に大きな音を立て! ヴィーアシュラウトの大剣が根本から砕け折れる!!!


「なんだとォッ!!!」


すぐさま予備の剣に手を伸ばすがそこに武器は存在しない!

先程の投擲で捨ててしまったからだ!


「ぐっ!!! クソッ!!!」


武器を失ったマーベリックはすぐさま後ろへ飛び退こうとする! しかし!!!


「逃がさねえ!!!」


すかさずオレは追撃の態勢に入っていた!!!


「ば! 馬鹿な!!! こんな!!! ありえない!!! 私がこんな!!!」


恐慌状態に陥ったマーベリックは、すでにその意味をなさなくなった剣の柄を振り回し後ろへ下がろうとする!!!


「こんな平民なんかに!!! こんなみすぼらしい騎士機なんかに!!!」


その言葉に、ラディウスは操縦桿を握りしめながら叫ぶ!!!


「騎士機じゃねえ!!!!!」

「ッ!!!???」

「コイツは鉄鋼機!!! 鉄と!!! 鋼の!!! 『ディグマイツェン』だアァァッッッ!!!!!」


ドグシャッ!!!!!


それと同時に!!! ヴィーアシュラウトの頭部がディグマイツェンの剣により叩き潰された!!!






「ッッッッーーー!!!」


言葉にならない声を上げながら、マーベリックと頭部を潰されたヴィーアシュラウトが倒れ込む! そして……!!!


「頭部損壊を確認!!! 騎士決闘法第一条に則り! 騎士科チーム、ヴィーアシュラウトの戦闘不能を認める!!!」


その審判員の言葉と同時に! 観客席がまたもや歓声に包まれた!!!


「し!!! 信じられないーーー!!!!! 私は夢でも見ているのでしょうか!!!??? 騎士科チーム! 騎士科主席のあのマーベリック・ハイデンクルトと騎士機ヴィーアシュラウトが!!! 整備科チームディグ……!!! いや!!! 鉄鋼機ディグマイツェンにより撃破ーーー!!!!!」

「凄い……!!! いや、私からはもうそんな言葉しか出てきません……!!!」

「そして……! はい……! 今入ってきた情報によると! この騎士決闘は公式戦ルールに則って行われている為!!! 試合時間は30分と定められているとの事!!! そして……!!! なんと試合時間は先程29分を経過したとの事ですーーー!!!」


その言葉に生徒達から動揺の声が上がる……!


「えっ!? それじゃあもしかして勝つのか!? 整備科が騎士科に!?」

「嘘だろ……? アルテさんは!? ソード=レイシュラッドは今何処に!?」


会場席がざわめく中……。






「ハァッ……!!! ハァッ……!!!」


ヴィーアシュラウトを倒したオレはその場で荒く息をついた。


「やっ……! やった!!! 倒した!!! ラディ!!!」

「ああ……! だが……!!!」


そう答えながら、すかさずオレは周辺を見渡す!


「アルテがまだ残ってる……!!! どこだ!?」


まだ試合時間は1分程残っている、オレは最後に残ったソード=レイシュラッドを探すが……。


「み……見えないね。周辺に姿はないよ」

「うん……。森林地帯の向こうにも姿は見えない……」


居ない……のか?

いくらアイツでも、山岳エリアから引き返してくるのは間に合わなかったのか?

それとも何処かで魔力切れを起こして行動不能に……?






残り時間45秒。

しかし、周囲は静寂に包まれており、白い騎士機の姿は何処にもない……。


「……終わったのか? これで俺達の勝ち……なのか?」






残り時間30秒。

審判員は「その宣言」をする為時計に目を向け始め……

整備科生徒達からは歓喜の声が、騎士科生徒達からは意気消沈した様な声が上がる……。


「来ない……? アイツは……来ないのか……?」






残り時間20秒。

もはや……誰も整備科の勝利を疑う者は居ない……。

もはや……誰にもそれを覆す事は出来ない……。そして……!!!


「勝った……!!! 俺達が……!!! 騎士科に勝った……!!!」


その顔に、勝利の喜びが浮かんだ……その瞬間!!!!!











「まだだーーーーーッッッッッ!!!!! 小僧ーーーーーッッッッッ!!!!!」











通信機から聞こえてきたその叫び声にオレの意識は一瞬で覚醒する!!!!! それと同時に!!!!!


音が響いた──!!!


まるで空から星が降ってきた様な激しい衝撃音!!!! 何かがディグマイツェンの前に落ちてきた……!!!!! それは……!!!!!


「……来たぞ、ラディウス!」


白銀の鎧を身に纏った騎士!!!

白騎士ソード=レイシュラッドだった!!!!!

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