-こもれびの糸とお天気操縦士-1
昔か今か、未来の話。
どこにでもありそうでない星の
色とりどりの木々が生える、“絵の具の森”。
その森のどこかその辺に生えている、
白い木の下に
ちいさな小屋がありました。
「あれぇ・・まちばりさん、オレンジの木の糸、どこだっけ?」
「もう…先生、目の前の箱の中にありますよ…」
「うわっ、ほんとだね、まちばりさんは探し物の天才だよ」
「いや、ある意味探し物の天才はあなたです、先生」
その小屋には、
「まちばりさん」というかわいい妖精と、
「おはりこ先生」というやさしい魔法使いが暮らしていました。
まちばりさんとおはりこ先生の毎日は忙しく、
2人はせっせと服や帽子やかばんを作っています。
彼女たちが作るものはどうやら特別のようで、
この星の魔法使いや妖精はみんな、こぞっておはりことまちばりの作ったものを欲しがります。
たくさんの注文で、今日も忙しい2人。
「まちばりさん、赤い木の糸のストックはある?
手元にある分だと襟の分が足りないんだ」
「昨日、先生が余分にポーチ作っちゃったから、ほとんど使い切ってますよ…
今から作ったとして…うーん、今日ちょっと曇り気味だからなぁ…でも襟の分くらいなら今日中にはできるかな」
二人の作るものが特別な理由は、
絵の具の森の木漏れ日の光をつむいで出来る糸。
二人は”こもれびの糸”と呼んでいます。
その糸を使って作る服や帽子やかばんは、美しくあたたかな光を放ち、他の糸を使ったものとはまったく異なるようで。
あまりの違いのせいか、「こもれびの糸は身に着ける人を”特別”にさせる」という噂が自然と広まっていきました。
そして、
こもれびの糸を紡げるのは、この星にまちばりさんだけで、
こもれびの糸を使えるのは、この星におはりこ先生だけ。
だから、二人はこんなにも忙しいのです。
「先生、じゃあちょっと紡ぎに行ってきますけど、ちゃんとお昼ご飯は食べておいてくださいね!」
「わかってるよ、まちばりさん。気をつけてね、何かあったら手をたたくように」
「はい、行ってきますね(絶対に食べないだろうな…)」
まちばりさんは、小屋を出て、黄色い木を右、青い木を右、黒い木を左に進み、あとは適当に進むと
目の前に赤い木が見えました。
「よしよし、思ったより光が落ちてるからすぐ終わりそうだな」
まちばりさんはそう言って、腰のベルトにかかった細長い革袋から、長いまち針を取り出して、
赤い木の下の、赤みがかった光が落ちている地面に、そのまち針で八の字を書きつづけました。
しばらくすると、だんだん赤い光の糸がまち針に絡み始め、ある程度絡まると、
まち針を鮮やかに振り上げました。
自然と、空で綺麗な糸の束ができ、まちばりさんの手の上にストンと落ちていきました。
何回かそれを繰り返し、
「ふぅ、襟の分ならこんなもんかな」
そうひと段落ついた頃、まちばりさんの胸元の丸いガラスでできたネックレスが青色に光りました。
「青…?まったく、こんな忙しい時に…」
まちばりさんは、急いで帰り支度をしてネックレスを3回撫でました。
すると、まちばりさんの目の前に見えるのは、さっきの小屋です。
まちばりさんは驚きもせず、小屋の扉を開けました。
「先生、この忙しい時に急ぎの案件ってどういうことなんで…」
先生はしーっの合図の後、奥の机を指さしました。
指さしの先には、二人が以前に作ったローブを纏ったご老人がひとり。
優雅に紅茶を飲んでいました。(つづく)
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