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水着は海で

「なぁ、詩織、普通に恥ずいかも」

「何言ってんだマネージャー! 自信持ってこの海で一番いい女だと思い込むんだよ!」

 冷房の効いた寝室を乗り越え、計画通り海に来たはいいものの、今になって羞恥心がピークを迎えている。

 取り敢えずタオルで隠してはみる。少し周りを観察すると、自分の水着は露出が少ない方ではある。至って普通の黒のビキニ、ではないんだろうな。なんかお会計の時五万円ですって言われたし。

 店員さんは、「勝負に行くならこれ!」と言い、詩織が「じゃあ、私、楽しみにしてるんで見てないですけどそれで!」と言って、俺が「勝負って何?」と言って、結局買ったものだ。

「大丈夫、マネージャーは可愛いよ。一番可愛い。マネージャーがちょっと悪いことしても、申し訳なさそうにしてたら世界中の人が庇ってくれるよ」

 詩織は俺を洗脳しようとしているのか、耳元で囁くように俺のことを褒めてくる。

「俺も男だ、なんだかわかんないけど勝負なんだろ? やってやる!」

 洗脳が効いたというよりも、なんか弾け飛んだような感じだが、俺はタオルを外す。

「めっちゃいいじゃんマネージャー! ルージャーで試着の時見なくて正解だった!」

 そう言う詩織はオレンジの映える可愛らしい水着を着ている。活発な詩織の印象に、よくあっていて、「夏百パーセント!」とでも主張してきそうだ。詩織はいつもの変装メイクをやめていて、アイドルが好きな人が見たら一発でわかる。俺はいいが、詩織の考えがいまいち読めない。

「どうしたのマネージャー、考えこんじゃってさー」

「えっ、ああ、詩織こそ似合ってるなその水着」

「そうでしょうそうでしょう」

「あっ、あの、しおりんですよね」

 大学生だと思われる男が、詩織に近づいて来る。それを塞ごうとした俺のことを詩織は手で制す。

「あっ、えーと、君見たことある! 全国ツアーの時に大学入試まで一週間切ってるって言ってた子だ! ヒロヤ君だっけ? 受験成功した?」

「おかげさまで、第一志望受かりました! マジですか! 俺の名前なんてよく覚えてましたね。めっちゃ嬉しいです。あの、写真撮ってもいいですか?」

「いいよー、可愛く撮ってね、マネージャー」

「あっ、マネージャーさんだったんですね、お綺麗だからしおりんの同業者かと思いました」

「あっ、はい、うん」

 初めて見ず知らずの人から綺麗と言われたら俺はなんだか恥ずかしくなり、脇に抱えていたタオルを羽織ることも考える。

 ばっちりとアイドルポーズを決めて来る詩織と、なんのポーズをしていいのかわからなくなって不完全なピースをしているヒロヤ君を撮ると、なんだか詩織の水着姿を奪われたような気がして悔しくなったので。

「すみません、俺と詩織のツーショットも撮ってもらってもいいですか?」

「俺っ娘……いいですよ」

 なんか怪訝な顔をされたが、取り敢えず了承を貰い、詩織の隣に向かう。俺がポーズを悩んでいると、詩織が手を組んできた。

「撮りますよー」

 ヒロヤくんに託したスマホを受け取り、「ありがとう」と言うと。

「すみませんでした。デート中に、お付き合いされてるんですよね」

 耳元でこそっと囁かれた。

「うぇ?」

「いやいや、わかりますよ。しおりんの幸せそうな顔、ほら、見てくださいよ」

 大学生が俺からスマホをもぎ取り、詩織の顔をアップにする。

「こんなニコニコして、相手のこと信頼してるんですよ? これで付き合ってないわけないじゃないですか」

「お、おう」

 異常な熱量で力説され、納得したふりをしてみたが、そんなわきゃない。詩織さんが俺なんかのことをねぇ。

「そうだよ! 私たち付き合ってる!」

 ヒソヒソ話していた俺たちの間に入り、意気揚々と言う詩織。

「違うんだよ違うんだよ」

 に続けて「ドラマの役が決まってて、その練習で、なんかこうお付き合いする振り、みたいな? シュミレーションしてんだよ」と言いたかったが、まだ公には発表されてない情報だから、言い訳も出てこず、押し黙る形になった。

 それを見たカズヤくんは、「誰にも言わないんで!」といい笑顔で去っていった。

「そう言えば詩織、なんで変装用のメイクじゃないんだ?」

「彼女に可愛い姿を見せたくない女の子なんていないんだよ?」

 少し先の方へ駆けて行った詩織が振り返りながらそう言った。


side 詩織


 マネージャーはやっぱり鈍感だ。いくら練習で付き合ってる。なんて設定をでっち上げたとはいえ、一緒にお風呂に入ったり、水着を選んでみたり、海に来てみたわけですけど流石にさぁ、ねぇ。まぁしゃあない。まだまだ戦いは始まったばかり、こっからこっから。すぐに結ばれてもつまらんし。

 (はぁー、完璧だよ。プロポーションがさあ)カズヤくんに顔を寄せて話を聞いているマネージャーを見て思う。

 ルージャーの店員さんは信頼できるから、私なんかが選ぶよりも、マネージャーの魅了をガツガツ引き出してくれるはずだと、選んだ水着を見ることはなかったが、今日見た瞬間にその選択が最高だったことを認識した。

 ちなみに、私が昨日を無駄にしようとしたのはわざとだ。今日、この海でのイベントを狙ってのこと……。

はぁはぁ、頭がおかしくなっちゃうくらい色々書いてますね。これが心の安らぎ……遅くなっちゃうかもしれないですが、描きたいので描きますよ!

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