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チート級の魔力量で最強目指します。  作者: シャルシャレード
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第四話 家出

 ---物心ついた時から自分は後ろ指を刺されていた。


 魔法が使えない落ちこぼれ。


 皆口々にそう言った。


 そんな自分に母は味方をしてくれた。


 カイリの母は、黒く長い髪を持ち、この世のものとは思えないほど凄みのある美しさであった。


 しかし、母は体が弱かった。美人薄命をじでいくような女性であった。


 『カイリ、あなたには強い心がある。

だから、魔法が使えなくても何も問題ないのよ。

私はいつまでも見守っているから。』


 そう言い残し母は亡くなった。

 カイリが、4歳の時だった。


 カイリの母が亡くなってから父や兄弟はカイリをいないものとして扱った。

父は目も合わされず、兄や弟には陰口を叩かれ。

時に兄弟には暴力を振るわれ。

そんな中、唯一、次男のコウキだけは味方になってくれた。

毎日毎日、夜になると剣や体術を厳しく教えられた。

そして、兄を超えるほど強くなった。

 

 しかし、ユウキは遠くに行くことになった。

 元々、騎士団に所属しているため、家を空けるということは多々あったが、本格的に移動させられてしまった。

 理由は、結婚し婿入りするためである。

 結婚相手の家を守るために婿入りすることは何ら不思議な話ではない。ましてや長男でなく次男。

 家と家を繋げる、むしろありがたい話なのである。

 ただ、ユウキの結婚はそれとは少し外れたものである。長男レンの策略である。

 単純な武だけならまだしも、その家を引っ張って行くために必要な知識とカリスマ性。

 この二つにおいても、レンはユウキに遠く及ばなかった。

 つまり、レンはユウキを恐れたためにこの行為を実行した。

 この行為は相手の方が上と認める行為とも取れるため、あまり良い手ではない。

 しかし、団の長期滞在先と嫁ぎ先を上手く合わせる形を取ったため形式上その問題は起きなかった。

 ただ、簡単なものではない。レンの用意周到な準備があってこそ成し遂げたわけである。

 

 ただ、レンよりユウキの方が優秀というのは周知の事実であるため、そこまでの影響は与えていない。

 


 話を戻すと、兄が婿入りしたのは、カイリにとって実に良くないことであるのは間違いない。修行の相手もそうだが守ってくれる、壁が居なくなったため、陰湿な嫌がらせなどを直接受けるようになってしまった。しかし、カイリにとってその程度の問題はもう問題ですらなくなっていった。


 カイリは、ユウキとの修行代わりに、近くの魔物がある森に入るようになった。

 そこは、昼でも陽の光が通りにくいほど木が鬱蒼と生い茂る。まるで外界から来るものを拒絶するかのように閉ざされた雰囲気を持っている。

 実際に騎士団や冒険者以外の一般人はここには立ち入らない。


 そして、初等学校の受験に行けなかったカイリは今日も森に入っていた。

 腹いせもあるが、今日の一件はさらに強くなろうとカイリに火をつけたのだ。


 『よし、こんなものかな。』

 父に森に入るのは禁止にされていたが、隠れて入っていた。カイリから父や兄たちへの一種の反抗である。


 『今日はついにドリルラビットを狩れたぞ!!』

ドリルラビットとは文字通り、角がついたウサギで角にさえ気をつければさほど気にする相手ではない。

ドリルと呼ばれる角の部分は装飾品や武器の素材としても使われて人気がある。

もふもふな毛皮は、衣料に使われて、体の方は臭みがなく、淡白な味でこの国の一般的な肉になっている。

魔法を使えれば問題なく倒せるのだが、カイリにはなかなか手強い相手である。


 『やっぱり、落とし穴は強いなぁー。

今日はこれを持って帰って焼いて食べよう。』

 ここ数回は、良質な肉が手に入るようになったため、工夫を凝らして料理を考えている。


 血抜きや解体を済ませて家に帰る。

 これをしないと味が落ちる上に臭いの最悪なことになるため、この作業に手を惜しまないのである。

 カイリは、この作業を5歳になる頃にはほぼ完璧にこなせるようになっていた。


 

 そして、家に着いたカイリは驚いた。

 『あれ、馬車がある。』

 しかし、森から帰るとすでに父がいた。

 カイリの兄の時はその日の夜まで帰ってこなかったはずだった。


 カイリの父は庭でカイリを見つけると睨みつけるようにして近づいてくる。その体つきは、カイリの母とは対照的である。


 カイリの父は冒険者であった。冒険者は雇い先が無い、いわゆるフリーの職業で、主に、取った素材を素材屋に売って金を得たり、騎士団に情報の提供や戦闘の協力をして生計を立てている。


 カイリの父は、騎士団に入ることをあえて拒み、上位魔法である土魔法を使い、冒険者でありながら先代の王に仕えていた。強敵である、Sランクモンスターと戦うなど幾多の修羅場をくぐってきたのだ。

 そのためカイリの父にはまだそこらへんの冒険者とは比べ物にならないほどの威圧感を持っている。


 『ごめんさない。父上。』

 カイリは今にも頭が地面に着きそうなほど深々と頭を下げる。怒られるのは覚悟している、問題はどれだけ怒りを抑えられるか。カイリの考えていたはそれの一点に尽きる。


 『もう、森へは行きません。』

 森へ入ったのがバレたのはこれが最初だ。

兄達も魔物の森へ入っている。入っているのは父には何度かバレているので多分問題ないだろう。

 カイリはそう楽観視していた。



 『何をしているんだお前!魔法を使えない奴は何もするな!』

 しかし、とてつもない剣幕で怒鳴って来た。兄たちも黙って森に入ることはあった。しかし、ここまで怒る事はなかった。


 カイリの心の中で何かが音を立てて崩れた。

これまでされて来たことも我慢して来た。


何もするな


 この言葉はカイリにとって耐えがたいものであった。魔法が使えなかったら戦うことも素材を取りに行くこともしちゃだめなの?カイリに、怒りと悲しさがこみ上げてくる。


 『もう、いい!俺はここを出る!もう、こんな家には居たくない!』

 もう、我慢の限界だった。

 こんな息苦しい家にいるくらいなら魔物と戦っている方がマシだ。

 カイリはそのまま、飛び出そうとした。


 『ああ、出て行け。家の恥さらしが、ただひとつだけ条件がある。この家との縁を切ってくれ。』

 カイリの父が飛び出そうとするカイリに追い討ちをかけるように言ってきた。


 その表情は軽蔑とも悲哀とも取れるものであった。

 ああ、この人にとって俺は子供でも何でもない、どうでもいいものなんだな。

 カイリにはショックを受けると同時に一種の諦めも出てきた。


 『言われなくてもこっちから、縁を切ってやる!

2度とこんな家に戻ってくるか!』

 カイリは、大声で叫ぶ。



 『必ずあんたを見返してやるからな!』

 その捨て台詞を吐いて飛び出した。

 カイリのその言葉には、強い覚悟が詰まっていた。



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