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チート級の魔力量で最強目指します。  作者: シャルシャレード
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第三十四話 月日を経て

ーーー『朝か。』

 カイリは何度も見上げている天井を見ながら、夜明けと共に目が覚める。

 朝早く起きることは完全に習慣となっているため、カイリには早起きが苦だと思うことは全くと言っていいほど無くなったのだが、疲労が溜まっている時もこの時間に起きてしまうというデメリットもある。


 『まずは、洗濯からだ。』

 覚醒から少し経ち、にカイリはベッドの横に置いてある魔剣を待って立ち、ゆっくりと台所の方へ歩みを進める。

 

 『先に顔を洗わないとな。』

 カイリは台所に着いたところで、一回転をして水瓶が置いてある、洗面所の方へと向かう。

 バシャバシャと顔を洗う。顔を洗うことにカイリは特段、意味を見出せなかったが、これも完全に習慣化してしまっていた。顔を洗い終わった後に、鏡を覗き込む。

 カイリの年齢は現在15歳。あれから顔立ちが凛々しくなり、目つきや鼻立ちもしっかりとして、綺麗にどちらかと言えば母に似ているとカイリは思っている。

 背丈も伸びて、170cmを超えて、子供の時には見上げるほど差があったが、すっかりユーベリータの身長を抜かしていた。


 しかし、カイリには一点納得の行っていないものがある。


 『この髪型だよなぁ。どうにかならないかな。』

 カイリは頭を触りながら呟く。

 カイリの髪型はユーベリータの悪ふざけでオールバックにされて以来、癖がつき自然と髪の毛が立ち、後ろへ向かうようになってしまっていた。カイリはこの髪型をあまり気に入ってはいない。

 カイリは最近、毎朝若干テンションが下がった状態から始まっている。

 

 『とりあえず、終わらせないとな。』

 カイリはため息を吐きつつ、洗面所から台所へと戻る。まずは、洗濯。昨日着ていた衣類を乱雑に水の入った桶に入れる。


 そして、魔剣の切っ先を水の中に入れる。


 『クウェイク。スクリュー。』

 そう唱えると、桶の中で振動を起こしながら水がぐるぐると回り始める。カイリは魔剣の使い方にも慣れて、家事にも魔剣を使うようになっていた。

 

 『本当に便利だよな、これ。』

 カイリは魔剣を見つめ、呟く。

 最近はもっぱら雑用に使ってしまっていると思い苦笑する。


 魔剣をこんなことに使うなと怒られそうだが、生活のためだ。仕方ない。とカイリは納得させるように心の中で頷く。


 洗濯物が終わると次は掃除だ。

 『エクスリーム』

 魔剣から空気を吸い込む音が聞こえて、それをゴミのあるところに持っていく。するとみるみるうちにゴミを吸い取っていく。


 カイリは、あっという間に掃除も終わらせた。


 ここら辺でひと休みでもと思うカイリだったが、まだ作業は終わらない。

 

 『後は、料理か。』

 カイリは魔剣を鞘に納め、台所に向かった。

 そして、慣れた手つきで火を起こし、野菜を切り、肉を茹でていく。


 『そういえば、ユーベリータの料理全然上達しないよな。』

 と言いながら、カイリはユーベリータの料理のことを思い出す。結局、あれ以来カイリが付きっきりでいくら教えていても、ユーベリータの料理の腕はほとんど上達をせず、カイリの説得もあって最近は全くと言っていいほど料理を作らせてはいない。カイリはユーベリータの料理上達を諦めてしまった。


 『さて、そろそろ。』

 そんなことを考えている間に、カイリはあっという間に料理を作り終える。木の皿の上にパンや肉、野菜を置き、それをテーブルに並べていく。

 これで、終わりかに思える朝の仕事であるが、カイリには最後の仕事が残っている。

 


 そして、朝の最後の仕事へと向かう。

 『ユーベリータ!もう朝だよ!いつまで寝てるんだよ!』

 カイリは大声を出してユーベリータに起きるように促す。実はまだ起きる時間では無いのであるが、ユーベリータはとにかく朝が弱い、そのため、カイリはそれを計算に入れて早めに起こしている。


 『後もう少し。お願いします…。』

 ユーベリータは一度目を覚ましたが、そう言い残し、再びまどろもうとする。


 カイリは無言でユーベリータに近づいて行き、足を引っ張る。

 ユーベリータは布団を掴み、必死に抵抗している。

 そして、ついにはユーベリータを布団から引き剥がすことはできなかった。

 しかし、カイリはこれに対抗する手段を持ち合わせていた。


 『ご飯抜きにするよ。』

 カイリはこれも大声を出してユーベリータに聞こえるように発する。これは以前、小さい声で言った時に、聞こえないフリをされた対策のためだ。

 カイリのこの言葉にはユーベリータは逆らうことが出来ず、渋々ベッドから起き上がり、料理がある食卓へと直行する。

 最初からこのくらい素直になれよとカイリは苦笑いを浮かべた。



 『いただきます。』

 カイリとユーベリータが声合わせる。

 19歳になったユーベリータは今ボサボサの髪でとても眠そうにしているが、それでも美人であると認識することができるほどになっていた。

 

 『ユーベリータ、今日はどうする?』

 カイリは、パンを片手に尋ねる。

 

 『今日…?』

 ユーベリータはそのままボーッと天井を見つめる。朝は頭が働かないのか、なにかを聞くと大概この行動をしている。


 『カイリに任せるよ。』

 ユーベリータは答える。


 『そうだな。』

 カイリは食べる手を止め、予定を考える。

 ここのところ、カイリがその日の予定を考えることが多くなってきている。これは、ユーベリータが眠いからということもあるが、信頼度が上がり、任されているという面もある。


 『今日は、街に行かない?』

 カイリはユーベリータに提案した。


 『いいよ。』

 ユーベリータはノータイムで答える。前は街が嫌いであったのだが、最近はこうやって提案をしても断られることは無くなったし、むしろユーベリータから、誘うことも多くなっている。

 

 『じゃあ、決まりで。』

 カイリとユーベリータは朝食を食べ終える。


 そして、支度を終える。

 『よし、こんな感じかな。』

 カイリは、カチッと髪型を決めて、Aランクの赤龍の素材を使った耐久性と耐火性に優れた赤いジャケットを着て、Bランクのクロノデビルのズボンを履いている。決してオシャレであるとは言い難いのであるが、非常に実用性の優れた服装である。カイリは戦闘を行う予定が無いのだが、お気に入りのため、これを着ていく。


 『カイリ、終わったよ。』

 しばらくするとユーベリータがたたたとカイリの方へと駆けてくる。ユーベリータは先ほどまでとは違い、美しい黄金色の髪を後ろで纏めている。顔はその美しい髪を上回るまるで人形細工ように精巧な美しさを持っている。

 服装の方は色とりどりの花が咲き乱れるように、さまざまな素材があつらえてある。

 常人であれば、着こなすことは難しそうなのであるが、ユーベリータはそれを完璧に着こなしている。

 元の顔の良さもあるが、それ以上にここ数年で一気に大人っぽくなったなと、カイリは感動に近い感心を覚える。

 そして、腰にはカイリの魔剣と同じくらいの長さで、ユーベリータが愛用をしている、Sランクのドラゴンキングの牙を削って作られた剣が納まっている。

ユーベリータとカイリの二人で素材を集めて作った剣である。


 『どうかな?』

 ユーベリータはカイリに不安げに尋ねる。

 ユーベリータがこの服を着るのは初めてであるため、緊張気味に聞く。

 

 カイリはユーベリータの服装を見つめる。


 『とても、似合っているよ。』

 そう答える。


 『良かった。』

 ユーベリータは、派手な服装に負けない笑顔で喜ぶ。それを見てカイリは思わず頬を赤らめた。


 『さて、行こうか。』

 カイリはそれを誤魔化すかのように外に繋がるドアを指差す。

 ユーベリータはそれにうなづき、二人は家を出た。



 ーーー歩く道中には、もうモンスターが出てくることは無くなった。狩り尽くしたわけではないのだが、カイリと主にユーベリータのせいで前に出てくることはなくなった。

 溢れ日が点在し、深い森ではあるが、比較的明るく、この地の気候と前述した通りモンスターが出てこないことも相まって非常に気持ちの良い環境となっている。そんな森を2人は歩幅を合わせるように進んでいる。

 2人で出かけるということも増えたため、ここ数年は

まるで通学路のようにほぼ毎日肩を並べて通っている。


 『そういえば、ユーベリータ。』

 カイリはユーベリータに話しかける。


 『どうしたの、カイリ。』

 ユーベリータは、非常に落ち着いた感じで返した。

 

 『今度、新しい騎士団が設立されるらしいよ。』

 カイリは少し興奮気味に話す。


 『そうみたいね。確か団の名前がスピリットスズカで団長はセシール、だったかしら?』

 ユーベリータは目線は前を向いたまま答える。


 『そうだよ。どうやら騎士団連合最高幹部、桜剣のアリスの推薦らしい。』

 今、カイリが口に出した桜剣のアリスとは、騎士団を束ねる総本部、騎士団連合に所属している剣士である。その中で2番目に強いのではないかと呼び声が高い人物である。


 『アリスか…。カイリは騎士団に入りたいの?』

 ユーベリータは、ちらりとこちらを見る。


 『いや、そういうわけじゃないけど。』

 カイリは言葉を濁す。


 『でも、いつまでもこうしてるわけにはいかないしね。』

 ユーベリータは顔をカイリに向け、笑顔で返す。


 『俺も来年になったら、騎士学校の受験資格が得られるから。』

 騎士学校は、推薦と受験に分かれている。推薦の方はそれまでの学校生活において優秀な者が対象となる。試験が免除されることはないが形式的なものとなり基本的には合格する。推薦に入らなかったものは、死に物狂いで受験し、合格を目指していくこととなる。

 

 『受験資格も変わったしね。』

 カイリはさらに続ける。

 騎士団は今年から受験資格が変わり、基本魔法の適性又はその上位魔法の適性を持っている必要がなくなった。そのため、カイリでも受けることが可能になったのだ。

 この変わり方は、おそらくあの2人のお陰であろうと容易に推測できる。

 カイリにとって、これは何にも変え難い喜びでもあった。


 『私たちなら、合格は確実だと思うから。それに騎士団を選ばなければ、こちらからお願いをして、腕前を見てもらえれば、入れるだろうしね。』

 ユーベリータは、ウインクをする。

 受験の合格率は、10%を切る難関なものである。

 しかし、カイリとユーベリータはそこに関しては全く問題無いと考えていた。

 ただ、騎士団は基本的にはスカウト制のところが多く、3年間の学校生活の中で優秀な成績を収めて、希望のところにスカウトをされなければ、入ることができない。


 『そうだね。人気がないところもあるし、気楽に行けるとは思うけど。』

 カイリとユーベリータは、騎士団に入れればどこでも良かった。魔物の森に行き、モンスターを調査及び狩りをして、街にモンスターが行かないようにしたり、ランクの見直しを行ったりすることが騎士団の職務である。騎士団には、常に危険が伴うため、最強の騎士団といわれる、ライアルナイツやクファインナイツなどの有名であり、一般的に強いとされる団以外は人気があるとは言えない。


 『でも、目立ちすぎるのもダメだよね。』

 二人にはそちらの方が心配な点である。

 学校に通ってはいなかった者が圧倒的に優秀な成績を収めてしまうと、魔人と疑われてしまうためだ。

 人間と魔人の違いは見た目的に言えば、耳がエルフのように長いという点だ。しかし、魔人と人間の混血では、そのような特徴が現れないこともある。

 そのため、見分ける点としては、五大属性魔法が使えない場合がほとんどだという点と魔力量が人間離れしているといった点、そして魔力構造が違うという点だが、魔法水晶で調べてみなければ違いがわからず、パッと見では判別できない。しかも、魔力構造も人間に似ている時があるため、正直お手上げ状態なのだ。


 『たしかに。側から見たら、俺なんか魔人にしか見えないしね。』

 カイリは自虐的に呟く。事実、カイリは先ほど挙げた魔人の特徴を耳の長さ以外だとピタリと持っている。


 ユーベリータはそれを聞いて、苦笑いをし『大丈夫だよ。魔力構造までは流石に真似できないでしょ?』と呟く。


 『魔人と人間が争って苦しむ人がたくさんいるし、それを見たし、聞いてきた。』

 カイリの眉間にシワがよる。

 魔人と人間は、古来より争いを繰り返しており、例え、本当に人間であっても、疑われてしまえば魔人と認定されれば命の保証はない。

 そのようにしてきたため、前述したとおり耳が長いという特徴を持っていたため、大規模なエルフ狩りを行なってしまい、森の奥へと追い詰めてしまった。そのため、エルフは人間を恨み、攻撃を仕掛けてくる。そして、人間の方もエルフをSランクモンスターとして扱い、狩りの対象としている。

 人間とはつくづく馬鹿な生き物であるとカイリとユーベリータはため息を吐く。


 『こんな世界、俺たちで終わらせないとな。』

 カイリは拳を強く握る。


 『そうね。私たちならそれが出来ると思うわ。』

 ユーベリータも、同じように拳を強く握り、前を見つめる。


 すると、突如として前方に何かが現れた。


 モンスター


 2人はそう認識すると同時に、臨戦態勢に入る。  

 モンスターを視認すると、剣を抜き飛びかかる。


 Aランク ハイウィップウッド 硬い体に多数ある長い枝から鞭のように繰り出される攻撃。攻撃力はAランクの中では低い方であるが、高い防御力と木に擬態し、無音で冒険者や騎士団を襲うため、その特殊性でAランクに分類されている。

 手練れであっても、気付かぬ間に攻撃を受けていることが多々あるため、非常に厄介である。


 しかし、2人には何らその問題は無かった。

 ユーベリータは数十本ある枝を一瞬のうちにして、切り落とし、硬い装甲に傷まで入れた。

 

 本来ならば、相手を驚かし怯んだ隙を襲う側であるが、今回は違った。一瞬のうちに攻撃手段を奪われ、さらに自慢の装甲に亀裂を入れられた、ハイウィップウッドは自身の状況を把握して、死を感じる。

 

 『カイリ!』


 『オーケー!』

 そして、カイリが装甲を貫き、体を真っ二つに斬り、木は倒れた。

 倒れた木は枯れ果て、間もなく砂のように崩れ去った。


 『擬態かな…?全然気付かなかった。ユーベリータは?』

 カイリが剣の刃こぼれを確認して、鞘に収める。


 『ううん。ここら辺、最近モンスター出ないから、完全に油断してたわ。まだまだ未熟ね。』

 ユーベリータがぐるりと周りを見渡す。


 『しかし、ハイウィップウッドなんて初めて見たよ。』


 『同じくね。珍しい、というか中々ないことよね。』

 ユーベリータはそういうと、アゴに手を当てて考える。


 『ハイウィップウッドは基本的には動かないから、生息地は一定で今まで出ていなかった地区に出るなんてね。』


 『もしかして、この木達全部、擬態かしら。』

 ユーベリータが無数とも呼べる木を見渡す。


 『ん、まさか。』

 カイリが苦笑いを浮かべる。


 その時、先程と同様に2人は気配を察知。ユーベリータとカイリはお互いに確認をする前に、脇の茂みに隠れて、腰の剣に手を当てる。


 じっと警戒をする2人であったが、すぐにその警戒は薄れていき、疑問の色がそこに入り込んで来る。


 なんだ、この感じは、魔物じゃ無いな。

 カイリは気配のする方を、さらにじっと観察をする。


 すると、その気配の主が人間であると察した。


 ユーベリータもそれを察知したのか、反対側の茂みにいるカイリの方を見る。

 目を合わせた二人はコクリとうなづき、警戒をしつつも、その人間の方へと歩みを進めた。


 近づいてみると25.6歳ほどの男であった。騎士団特有のゴツゴツとした銀色の鎧を纏っている。


 しかし、カイリとユーベリータは目を細める。

 腹部から多量の血を流していたためだ。もう助からないであろうその傷に、痛々しさ以上になにも出来ないという虚しさすらも感じた。


 『君たち、どうか警戒をしないでほしい。』

 その男は、血の流れる腹部を押さえながら、口を開いた。

 

 『口を開かない方が良い。』

 ユーベリータは、すっと座る。


 『体の方はいい。どうせ助からないから。』

 その兵士は息をなんとか繋いで、言葉を絞り出している。


 カイリはこの兵士が長くないであろう事を察して、最後の言葉を待つことにした。


 『何があったんですか。』

 カイリは、その兵士に尋ねる。10年近く住んでいて時よりこの森に冒険者が迷い込むことはあったものの、複数人や集団で行動する兵士がたった一人でいるというのは、見たことがなかった。その上にこの怪我を負っているため、誰がどう見ても非常事態であると言うことがわかる状態である。



 『どこの…誰かは知らないが…今から言うことを必ず騎士団長…に伝えて欲…しい…。』

 兵士は、痛みを堪えてながら言い、それに続けた。



 『大丈夫よ。必ずあなたも助けるから。』ーーー


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