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チート級の魔力量で最強目指します。  作者: シャルシャレード
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第三十話 アースオブゴッド

 ダリスクはジョンに攻撃するまでのほんのわずかな、刹那とも言える時間に答えを出そうとした。

しかし、ジョンが団長やベンベッタを狙う答えを見つけることが出来なかった。

 『仲間』この言葉がダリスクの頭の中に強く引っかかりながらも強引に攻撃をしたのだ。



 魔法陣を展開しているダリスクを見ている。

 『あいつ、俺らを相手に1人で来るのか!』

 周りの男たちが悪意を持って、ニヤニヤと笑う。


 『お前らは手を出すなよ。後で出番をやるから。』

 ダリスクの命令で周りが控える。


 『さぁ来い、ダリスク。俺がぜーんぶ受け止めてやる。』

 ジョンが両手を広げる。


 ダリスクは近くで倒れているヤプールとベンベッタを交互に見て、決心をしたかのような顔をする。

 『団長、ベンベッタさん、時間を稼ぐので、その隙に逃げて下さい。』

 ダリスクがヤプールとベンベッタに提案をする。


 ベンベッタが驚いた顔を見せながら、

 『何を言ってるんだ、ダリスク…。』

 ベンベッタが少し怒り気味に返す。


 『皆さんに色々なものを貰いました。居場所もなにもかも持ってい無かったこんな俺に。そんな皆さんを失いたくない。誰一人として。』


 『そんな皆さんに、なにも返すことが出来ないから…だから恩を返したい。返すために死んでも守ってみせます…!』

 ダリスクが覚悟を持って前を見据える。


 『お前1人じゃ…。』

 ベンベッタが消え入りそうな声で言う。

 ヤプールはそれを黙って聞いていた。


 『最後の挨拶は終わったか?ダリスク。』

 

 『そっちは済ませなくていいのか?ジョン。』

 ダリスクが睨みつける。


 『先輩にはさんを付けろよ。』

 ジョンはそう言って構える。


 『ふざけたことをぬかすなよ。お前にはもう尊敬も何もない。そんな奴に敬意を見せる必要はないってあんたは言ってただろう?』

 

 『ウォーターカノン』

 何本もの水柱がジョン目掛けて向かっていく。


 『遅い。』

 それを右に左にひらりと躱していく。


 くそ…でもこれでいい。せめて逃げる時間だけでも


 ダリスクは、多彩な魔法を絶え間なく唱え続け、攻め続ける。

 

 『いいぞいいぞ!ダリスク!殺意がヒリヒリ伝わってくる!』

 ジョンが満面の笑みを見せる。


 『何で…何で当たらないんだ!』

 ダリスクが不満げに漏らす。

 ダリスクは大小さまざまな魔法をくり出すが、ジョンに簡単に躱されてしまう。

 

 『魔力がもう…。』


 『やはり、殺し慣れてはないな、まだ躊躇いがある。』

 そういうとジョンが剣を抜き、踏み込む。

 常時は、体ほどある大きな武器を持っていたため、

今までにないスピードで真っ直ぐに向かってくる。


 『くっ。』

 ダリスクは次の攻撃を予測した。

 しかし、体が動かない。今までの攻撃で魔力が尽きてしまっていた。

 

 なにも出来ずに、俺は死ぬのか。無力なまま昔からなにも変わらず…。

 ダリスクは全てを悟ったかのように目を閉じた。


 『さようなら、ダリスク。』

 そう言って剣を一閃した。


 肉が切れる音がした。

 しかし、その剣はダリスクに届くことなく止まった。

 ダリスクは恐る恐る目を開ける。


 『ヤプールさん?』

 ダリスクの前にヤプールが立ちはだかり、剣を受け止めていた。剣が突き刺さり、右横腹に負った傷から痛々しいほどの血が流れていた。


 『これが絆ですか、ヤプールさん。』

 ジョンが悲しそうな顔を見せる。


 『やはり、仲間はあなたにとって枷でしか無かったのですね。巻き込まないように威力を抑えた魔法を使い、悪戯に魔力を消費する闘い方。今回も無能な部下がいなければ痛い思いをせずに済んでいたのに。』

 ジョンが憐むように言う。


 『お前には分からないかもしれないが…私1人ではここまで強くはならなかった。守るべきものがあって、それを守るために強くなれた。それに、可愛い部下を守るために動いたんだ。こんなの痛くも何ともない。』


 『くだらないですね。そんな繋がりに雁字搦めになって、笑えてきますよ。』

 ジョンが上を見上げる。


 『私を守って死んだ先輩もいる。私のせいで死んだ同期もいる。私が守れなかった後輩もいる。そんな繋がりがあって今の私がいる。』


 『そんな繋がりをくだらないとしか言えないお前如きに、私を殺せるか!』

 ヤプールは、足に力を入れる。


 そして、右足をジョンの顔を目掛けて蹴り上げる。ジョンは咄嗟に剣を抜き、後ろに下がり、斬りながら距離を取る。


 ヤプールが空中で体を捻るように躱す。右を支点にして回ったため、脇腹から血が吹き出す。


 『逃げろ、ベンベッタ、ダリスク!』

 ヤプールは、血の吹き出た腹を隠すように抑え、

 そして、ヤプールが叫ぶ。


 『ヤプールさん1人を置いて行けません!みんなで逃げましょう!』

 ダリスクは拒否するように叫ぶ。


 『心配しているのか、ダリスク。なにも心配するな。シャクサスドーラの団長、ヤプールを信じろ。』

 ヤプールは、痛々しく笑顔を浮かべる。

 

 『ですが、団長…。』

 ダリスクはヤプールの脇腹を見る。

 おそらく想像を絶する痛みの中にいるであろうヤプールを放っておくことに決心がつかないでいた。


 『さっきのセリフカッコ良かったよ。』

 

 ヤプールの言葉を聞いて、ベンベッタが立ち上がり

 『行くぞ、ダリスク。』

 体が動くようになったベンベッタがダリスクの腕をグイと引く。


 『今の俺たちに出来ることはあの2人に一刻も早く助けを求めることだ。』

 

 『このままだと…団長が!』

 

 『団長の意志を無駄にするつもりか!今の俺たちに何ができる!ここに残ったところで足を引っ張ることしかできない!』

 ベンベッタがダリスクに怒鳴る。

 ベンベッタは、冷静であった。自分が今いても力になるどころか邪魔になることしかできない。これ以上ないほどに自分の力の無さを呪ったであろう。


 『わかりました。行きます。必ず助けにきます。』

 ダリスクも自分の力の無さを心の中で大きく恨んだ。


 ダリスクとベンベッタはその場から去った。

 

 それをジョンを始めとした男たちは追う気配すら無かった。

 

 『いいんですか、追わなくても。』

 ジグリーズがジョンに聞く。


 『ヤプールがいて追いかけられると思うか?』


 『そうですね…こっちから片付けないと…。』


 『大丈夫だ。手は打ってある。逃げられる心配はない。それよりもジグリーズはあれを準備をしろ。こっちの相手は骨が折れる。もしかしたら必要になるかもしれない。』

 ジョンがジグリーズに命令する。


 『わかりました。あなたも人が悪い。』

 ジグリーズは、不敵に笑みを浮かべ後方に控える。


 ヤプールは、2人の姿が見えなくなるのを確認して、フーッと息を吐く。

 『さて。お前らは何が目的だ。私の命、では無いんだろう。』

 ヤプールが凄む。


 『ええ。でもあなたが目的ですよ。』

 ジョンがそれを躱すかのように飄々と返す。

 

 『私が目的か…。狙いは私の中にあるものか?』

 ヤプールが仕返すように睨む。


 『言っても良いですが、聞いたら協力してくれますか?』


 『するわけないだろ?』

 ヤプール即答をし、相手を見据え、ふーっと息を吐く。

 ヤプールは先ほどの自分の問いとジョンの答え、もとい反応をもう一度頭の中で整理をする。


 今の反応は…肯定寄りの反応。

 つまり狙いは私というよりもあれということか…?

 でも、ジョンがあれほどわかりやすく、それを悟らせるように反応をするだろうか?

 恐らく狙いは私だけではないということ。

 どういう事だ…?


 ヤプールはこの後の行動について深く悩んでいた。

 ジョンを倒すかダリスク達を追うか。

 どちらの選択も遅かれ早かれジョン達と戦う事になるが、ヤプール自身はそれらどちらも、可能であると考え、実行できる自信もあった。

 しかし、この選択がこの先の未来に大きく関わるのではとヤプールの中に嫌なしこりが決断の時間を遅らせていた。


 『本当に私'達'なんだな?』

 ヤプールはもう一度問いかける。

 ヤプールは私の後にあえて達を付けた。

 まともな答えではなく、その問いを聞いた反応を見るために敢えて、である。


 『達、かどうかは分かりかねますが、否定はしませんよ。』

 ジョンがニヤリと笑う。


 その反応がヤプールの思考をさらに混沌へと誘うと同時に今の条件では、駆け引きでジョンには勝てないとある程度割り切る事が出来た。

 そして、ダリスク達に対しての思考をすることも成功していた。事実、時間を稼ぎ少しでもあの2人からジョン達を遠ざけようと考えていた。

 


 『じゃあ、それをとことん邪魔しようかな。』

 ヤプールが魔法を展開させる。


 ヤプールは初心に立ち返っていた。

 しがらみなど無く、目の前の敵をただただ倒す、原点にである。

 

 その言葉を聞いたジョンは先ほどの笑顔から一切変わらぬ様子で、

 『準備運動は先程、兵士を相手に済ませましたのでいつでもどうぞ。』

 ジョンが剣を構える。


 『準備運動?何を言っているんだ。それに、剣なんか使えるのかジョン。』

 ヤプールは理解できなかった。

 ただこの質問は、ヤプールが思考を戦闘とダリスク達にほとんど割いているため、ほとんど時間稼ぎ的な意味である。


 『こっちの話です。聞きたいのであれば、私たちの'仲間'になった後に話しますよ。』

 


 『冗談はよせよ。お前の仲間になるくらいなら死んだ方がマシだ。』

 そして、ヤプールが周りを見渡す。

 思考からダリスク達を一瞬外した瞬間に傷が痛み出す。極限の集中状態にあったため、痛みを感じなかったが、わずかに綻んだ緩みからどっと痛みに考えが割かれる。


 そして直感した。

 


 …長くはないかな…。

 体がとても熱い。意識が飛びそうだ。魔力にも体力にも余裕がない。それに私はもう助からないだろう。悔しいけど多分無理だ。でも、守って死ねなのならば後悔はない。守るためにこいつらを全力で殺す。

 だから…良いだろ、ダスカ…。

 

 ヤプールは、手を胸に当てる。

 ダスカが守るために作った魔法。

 『私の全てをぶつけてやる。それでも生きてたらお前らの勝ちだ。』

 

 父様ごめんなさい。

 私、殺さずの誓いを破ります。

 父様と同じように仲間のために、未来のために。

 

 地獄で会いましょう………


 そして、手を前に出して、魔法を展開させる。

 『アースオブゴッド。』

 

 その声とともに地面が大きく蠢き、音が響き渡る。

 大地が割れ、木々が飲み込んでいく。


 『さぁ、どうする。』


 『もちろん、抗わせていただきますよ。』


 『ファイヤーボール!』

 『アクアヴァーズ!』

 『エレクトリックフォール!』

 男たちが合同魔法を繰り出す。小さな村ならば一息で飲み込むであろう勢いを持つ魔法がゴォーッと大きな音を立てながらヤプールに直撃…したはずだった。


 『当たった…はずだろ…!』

 男たちが狼狽る。

 ヤプールは何事もなかったかのように平然と立っていた。


 『それじゃあ、届かないよ。今度は、こっちから行くぞ!』

 ヤプールが、手をかざすと地面がさらに勢いを増す。


 『ぎゃあああああ!』

 大地が次々と男たちを飲み込んでいく。

 

 もちろん、ただでは飲み込まれているわけではない。魔法を打ち足掻いているのだが、それをまるで食事をするかのように吸い取って行く。

 かつて魔法神が5人の重臣たちの仇を取るために、魔神に対抗をする手段の魔法として編み出された伝説級の魔法、そのものであった。


 それを、見てジョンがカタカタと震え始める。

 『まさか…完成していたのか…!』

 そう言いながら、ヤプールの繰り出した魔法をマジマジと見つめる。


 『これは想像以上だ!』

 ジョンが不敵な笑みを浮かる。


 『魔法を吸収する魔法を!』

 興奮したジョンが恍惚に満ちた顔で叫んだ。



 『そんな高尚なものじゃないよ。全てを飲み込むだけの…ただの魂喰いさ。』

 ヤプールがジョンを見据える。


 『…素晴らしい。』

 ジョンが呟く。

 

 ヤプールの魔法によって生み出された大地の姿をした魂喰いが一人一人と飲み込んでいく。魔法を出し抗うもの、泣いて許しを乞うもの、懺悔をするもの。逃げ出そうとしたものも、もれなく地面に捕らえられ、地中に葬り去られていた。その光景を前になす術の無い男たちはただただ死を待つのみであった。

 そして、ジョンにもこれに対抗する魔法は無い。


 瞬く間に男たちを片付け、ジョンとその周りの一部を残すだけになった。


 『あぁ、もしかしたらこの先これ以上の魔法を完成させるかもしれないのに。本当に勿体ない…。』

 

 『それは、未来ある若者に託した。私以上の魔法使いなんてこの先いくらでも出てくるだろうよ。』

 ヤプールは本心からその言葉を発した。


 『準備ができました。』

 ジグリーズがジョンに耳打ちをする。

 そして、ジョンが小さく頷く。


 『ジョン、何か言い残す言葉はあるか?』


 『いえ、最高のショーを見せてもらいました。もう、心残りはありません。団長の右に出る魔法使いはただ一人としていないでしょう。正直勝てる気が全くしない。』


 ヤプールがジョンに向かって手を伸ばす。

 『とっとと死んでもらうぞ。』

 そして、ジョンの方へ魔法を放つ。


 『ですが、何もせずに、ただ死ぬのは寂しい。死ぬ前に一つ面白いものを見せてもらいましょうか。』

 ジョンがチラリと横を見る。


 『ジョン、お前はエンターテイナーにでもなったつもりか。』


 そして、ジョンの前に黒ずくめでフードを被った男が前に出てきた。

 

 『死にたいのか。なら、望み通りお前から…!』

 ヤプールが、それに構わず手を伸ばす。


 しかし、ヤプールはわずかにその言葉に思考を巡らせた直後に表情が曇る。

 敵の狙いに気付いたのだ。

 そして悟った。

 自身の選択ミスとダリスク達の身の危険を。


 早くあの2人の元へ行かなければ!

 ヤプールがさらに魔法を強めた。


 その時、ヤプールの魔法が到達するよりも早く

 『溶岩魔場』

 フードを被った男が魔法を唱えると地面が溶けるように赤くなり、アースオブゴッドとぶつかった。互いを飲み込むようにしてぶつかり合った二つは相殺されていった。



 『なんで…』

 ヤプールは、大きく目を見開き、絶句する。


 『久しぶりだな、ヤプール。』

 男はフードを取り、ヤプールに向き合う。


 この時点でヤプールは先程までの考えなど吹き飛び目の前にいるこの男に全ての思考を注いでいた。


 『ダスカーダがここにいるんだ…。あの時、死んだはずじゃ。』

 ダスカーダとはヤプールの幼なじみであり、戦友であった。ただ、戦いの中で死んだはずであった。

 ヤプールには到底理解できなかった。


 『死んでなんかいない。現にここにいる。ずっとヤプールを見てきたから。大切な君を助けるためにここにいる。』

 ダスカーダと呼ばれた男が笑顔を見せる。

 

 ヤプールが魔法の手を止め、目の前の事象に全神経を注いで思考する。

 ヤプールは、確かに死んだはず。私の目の前で腹を貫かれて。でも、使い手がいない溶岩魔法に私と同じ吸収する魔法、こんなのダスカ以外には考えられない。それにあの笑顔はダスカそのままだ。


 『なんなんだ…お前は!』

 しかし、その答えは出なかった。


 『俺はダスカーダだ。それ以上でもそれ以下でもない。』


 『違う!確かにあの時、ダスカは死んだはずだ!だから…だから、お前は偽物だ!』


 『駄々をこねるのは昔から変わらないな。それに懐かしいな、その呼び方も。』

 ダスカが空を見上げる。


 『いきなり出てきて、ダスカのフリかよ。ふざけるのもいい加減にしろ!』

 ヤプールが睨む。


 それを見てダスカが懐かしむように口を開く。

 『ヤプール、覚えているか。俺たちには俺たちの解決方法があるだろ。2人の意見が衝突したときは、どうするんだっけ?』

 ダスカが魔法陣を展開させる。


 ヤプールは一瞬固まった後にそれに呼応するようにもう一度、アースオブゴッドを操り始める。

 『話し合って解決しない時は、力で制圧せよ…先生の言葉だ。』


 それを聞いてフィールとヤプールが笑みを浮かべる。

 

 今はこいつが本物かどうかはわからない。でも、戦えばもしかしたらわかるかもしれない。


 『『行くぞ。』』


 その時、ジョンは先ほどまでの笑顔とは違い、恍惚に満ちた、文字どおり満面の笑みであったがそれにヤプールが気付くことは無かった。

 



 

 

 

 

 

 

 

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