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チート級の魔力量で最強目指します。  作者: シャルシャレード
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第二十七話 森へ

 


 ーーーシャクサスドーラの一行は、翌日に出発をして、その次の日の朝に村へと着いた。


 『では、何度か近くの森でグラスフレを目撃していると?』

 ワカナが村人に聞く。

 

 『はい。目撃地点は森の東と西に複数の村に分かれていて、村から下手に出れないのです。』

 村にいる兵士は答える。

 Cランクの森にBランクのモンスターが何頭も出現したとのこと。


 ヤプールが2日前に読んでいた依頼書には、度々、村に出現して被害を与えており、兵士が調査に行ったのであるが、壊滅状態になったと書かれていた。

 元来、兵士が調査だけが目的であれば戦闘を回避して、情報を伝えることに徹するため、不測の事態が起きない限りは大きな損害を被ることはない。

 つまり、今回は何らかの不測の事態が起きているのではと考えたのだ。


 『群れの規模はわかりますか?』

 ワカナが兵士に聞く。

 

 『この前の調査隊で唯一残った兵士の話では、50匹ほどの群れが少なくとも3つはいたということでした。ただ、その兵士も追い詰められていたので、それが正しいかはわかりません。』

 兵士が申し訳なさそうに答える。


 『謝ることはないです。その情報だけでもかなり大きいです。』

 ワカナは、命を掛けた兵士を称える。

 

 『そう言ってもらえると助かります。』


 『必ず全滅させますので、安心していてください。この村は私たちが守ります。』

 ヤプールが力強く宣言をする。


 『ありがとうございます!皆様の無事を祈って、沢山のご馳走を用意してお待ちしてます。』

 兵士は安心をした口調で言う。


 『では、私たちは行きますね。』

 ヤプールは笑顔で言う。

 

 『お願いします!』

 兵士は深く頭を下げた。




 『さあーてと、またまたお仕事ですね。』

 ヤプールは、大きく息を吐く。


 『しかし、ただの群れで兵士が全滅することってあるか?ここの兵士って優秀なのに。』

 ヤプールが呟く。


 『そう言うもんなんじゃないんですか。それよりも、なんでこうイレギュラーモンスターばっかり出るんですかね。騎士団の査定、ガバガバでは?』

 ベンベッタが恨み言を言う。

 森のランク付けは調査をした騎士団が行うためである。ちなみにこの森の査定は、シャクサスドーラが担当をしておらず、別の団が行った。


 『そうですねぇ。キャサもいい加減めんどくさくなって来ましたよぉ。』

 キャサも賛同する。


 『これだけイレギュラーモンスターが続くってあんまり無かったんだけどな。前は何年かに一回だったのにここ1年で30件近く、しかも多くが私たちの地域の近くっていう運の無さ。』

 ヤプールが苦笑いをする。

 騎士団は、王国首都に置かれているのだが、大きな騎士団は支部を作り、クエストを受け、それぞれの地域を守っている。シャクサスドーラは規模が小さいためそれができない。かといって王国にいたのではこちらにクエストが周る前に解決をされてしまう。そのため王国から遠いアスガマ郡が本拠地となっている。


 『ここまで多いと、気になりますよね。』

 ワカナが顎に手を当てる。


 『入った時からこんな感じなんで自分はもう慣れてきました。』

 入団してからイレギュラーモンスターをたくさん見てきたため、ダリスクが苦笑いを浮かべる。


 『それは、あまり良い傾向では無いな。』

 ヤプールが苦笑いをする。



 『帰りたい。サリーに会いたい。』

 ベンベッタがボソッと呟く。

 ベンベッタは、口に出すつもりは無かったのだが、思わず口に出てしまう。


 その言葉を団員達は逃さなかった。


 『サリーサリーって。結局2人で出かけたのに彼女になれない女をいつも口いつもにして。そろそろ告白しろよ。』

 ヤプールがベンベッタに言う。

 

 すると、ベンベッタが俯き、口を開く。

 『いやだって、恥ずかしいんですもん。』


 『男なのに度胸が無いな。』

 ヤプールは焚きつける笑う。


 『当たって砕けろですよぉ?』

 それにキャサも続く。


 『なんで砕けるんだよ!』

 ベンベッタが声を荒らげる。


 『あなたの話を聞いた感じ一方的に好きな感じしかしないし…。逆に砕けないと思っているのなら、私はベンベッタがとても醜く見えてくるわ。』

 ワカナも追撃する。ワカナは色恋沙汰には本当に疎いため本心からそう言った。

 そのため、ベンベッタを除く周りのメンバーが苦笑いをした。

 

 『みんなひどい…。なんでそんなに平気でズバズバと言うんだよ。ダリスクー。なんか言ってくれよ。お前だけなんだよ。俺の味方は。』

 ベンベッタは皆に責められ傷ついたためかダリスクにすがる。


 『自分は味方です!ベンベッタさんが砕けた後の骨は拾うつもりです。』

 ダリスクのフォローのような攻撃がベンベッタにとどめを与える。ダリスクは2人が両思いなのは見抜いていたが冗談交じりに乗る。


 『わかったよ!もう、俺は次会ったときに告白することをここに宣言をする!俺がイチャイチャしているところを見て後悔するがいい!』

 ベンベッタは高らかに宣言する。


 『じゃあ、今日はベンベッタのためにちゃちゃっと終わらせましょう。』

 ジョンはベンベッタの方を見る。


 『ジョ…ジョン…。』

 ベンベッタもジョンの方を見る。


 『愛のためにも。平和のためにも、俺たちがやるしかないですね。皆さん、行きましょう。』

 ジョンがベンベッタを無視する。


 『おぉ、いいね!かっこいいこと言うね!』

 ヤプールがグッと親指を立てる。


 なんだその言葉、俺も使おう…』


 『ベンベッタ、心の声漏れてるわよ。』

 ワカナが引き気味に言う。


 『そうですねぇ、私たちが頑張らないとぉ。』

 相変わらずキャサはのほほんとした雰囲気である。


 『頑張るぞ。』

 ダリスクは自分を奮い立たせる。


 そして、メンバー達は、腰を上げる。


 『いくぞみんな!シャクサスドーラ出陣だ!』


 『おーー!!』



 

 森に入った一行は順調に進んでいく。

一行は緊張感を持ちつつもダリスクには、余裕がある感じに見て取れた。


 『ワカナさんたちは、戦いを怖いと思ったことないんですか?』

 ダリスクはそれが気になっていた。確かにこのメンバーは強いとはいえ、いつも死と隣り合わせの狩り。実際にシャクサスドーラのメンツはここ何年間だけでも何人も死んでいた。

 なのに、ヤプールたちが全く恐れてないように思えていた。


 『いつも、怖いに決まってるよ。』

 ヤプールが真剣な顔で答える。

 

 『俺だって怖いさ。足が震えることだってある。』

 ベンベッタも答える。


 『では、なんで戦ってるんですか?』

 ダリスクが聞く。


 『ここにいるみんなにはそれぞれ戦う理由がある。大切な人のため、村のため、名誉のため、命を賭して戦っている。』


 『私たちが戦わなければ大切なものを失う人がいるから。もう、私はそんなの見たくない。』

 ヤプールが笑う。その表情はどこか悲しげでもあった。


 『だから、頼りにされたら断らない。抗う力が無いものに手を差し伸べられる人になりたいから。』

 ヤプールの言葉にはとても重みがあるようにダリスクは感じられた。


 『それに、怖いからって逃げて行ったら死んだ仲間に顔向けできないしな。』

 ヤプールは、遠くを見つめるように言った。


 『物語に出てくる英雄みたいですね。』

 ダリスクが子供の頃に読んだ英雄譚を思い出した。

 どんな些細な願い事も断らず、村のピンチを救っていく物語をだ。


 『英雄か。誰かの英雄になれていたらいいな。』

 ヤプールが呟く。


 『さすが俺たちの団長だな。』

 ベンベッタが嬉しそうにうなづく。


 『かっこいいですぅ。』

 キャサも続く。


 『でも、もちろんお前らが一番大切だからな。』

 ヤプールは照れ臭そうに呟く。

 

 俺もいつかそうなりたいダリスクは心の中で固く決心をした。



 その時、目の前に大量の動く影が現れた。


 グラスフレの群れだ。

 先程までの森の静寂とは打って変わって大きな音が響き渡る。

 ガサガサと金属のように硬いものが土に擦れる音が6人の緊張を高めていく。


 

 『数は50匹くらい。兵士の情報通りですね。』

 ワカナが柄に手を当て、戦闘態勢を取る。


 『そうですねぇ。』

 キャサも同じく戦闘態勢を取る。


 それを察したジョン、ベンベッタ、ダリスクの3人がその2人の後ろへと下がる。


 しかし、その3人とは違いヤプールがキャサとワカナの前に出ていく。

 『2人とも、ここは私に任せてくれ。試したいことがある。』

 ヤプールがそういうと、グラスフレの群れの前に立つ。

 

 『キャサ、暴れたいですぅ。』


 『わかりました。キャサ。』

 キャサとワカナが少し不満気な顔を見せつつも納得をし、戦闘態勢を解き後ろに控える。



 それをチラリと見た後ヤプールがグラスフレの方へと向き直る。


 『土に帰れ!』

 そういうと、グラスフレの群れの下に魔法陣が現れる。


 『バックザアース!』

 その声とともに、大地が蠢き、グラスフレ達を狙い澄ましたかのように飲み込んでいく。


 グラスフレも素早い動きでそれから逃れようとする。騎士団をも苦戦させる素早い動きであるのだが、それ以上の速さで土が飲み込んでいく。

一匹一匹と。

 グラスフレは、逃げることを諦めて爪で土を切って、応戦をする。しかし、ここは森。土はいくらでもある。やがて、全て飲み込まれて静寂に戻っていった。



 『団長、半端ないですねこれ…。』

 ベンベッタが驚きつつ言葉を発する。


 『魔力消費量が多いんだけどね。今ので1万くらい。私の4分の1は使ったかな?効率は悪いから乱発はできないけど、多数を相手にするときは特に有効かな。』

 ヤプールは、杖を懐にしまう。

 

 『今のってどんな魔法なんですか?』

 ワカナが聞く。


 『命あるものを土に還す。簡単に言えば、範囲内にいる生き物を飲み込むってだけだよ。』

 ヤプールは淡々と説明したがメンバーは驚愕した。


 『まぁ、団長だしな。』

 

 『そうね。団長ですからね。』


 『とりあえず、魔力を回復しましょう。』

 ジョンはヤプールに魔力回復薬を手渡す。

 魔力回復薬は、銀貨2枚が相場のため、普通はなかなか手が出ないのだが、騎士団は定期的に支給される。

 

 『ありがとう。』

 ヤプールは魔力回復薬を受け取り一気に飲み干す。

 魔力回復薬は、一つで大体1500ほど魔力が回復する。

 

 『苦いなこれ。』

 

 『良薬は口に苦しです。我慢してください。』

 ジョンがヤプールに言う。


 『わかってるよ、、、』

 ヤプールは何故か馬鹿にされた気がした。


 『とりあえず、ここは一旦離れましょう。さらにモンスターが集まってきてしまいます。』

 モンスターが集まるところにさらにモンスターが集まる習性がある。多くのモンスターがその習性を持っているため戦いが終わればそこからすぐに離れることが定石である。


 『そうだな。』

 

 

 一行はその場を離れて、さらに進んで行きやがて大きな岩の下へと着いた。



 『どうしたんですか、ワカナさん。』

 ダリスクが少し様子がおかしいワカナに質問をする。


 『いえ、大したことでは無いとは思うけど。あれからモンスターが見えないどころか気配すら感じられない。それに…。』

 ワカナが呟く。

 強い騎士やモンスターがいる時にそれを警戒して周りからモンスターがいなくなることは稀にある。そのため、何故心配しているのかダリスクには理解できなかった。

 

 『はいみんな、集合!』

 ヤプールの合図で家ほどの大きさがある大きな岩の前で円のようにして集まる。


 『今回は二手に分かれようとジョンから提案があった。理由はジョンから。』

 ヤプールやジョンを指差し、一行はそちらへと注意を向ける。


 『今回は複数の群れがあると聞いた。俺たちが全員で固まって戦って一つ一つ確実に潰していくことも良いとは思うが、相手はBランクモンスター。あの程度の群れであれば、俺たちにとってはそこまで脅威では無いとか考えられる。だから今回は、分かれて戦うことがベストだと俺は思うよ。』

 ジョンが提案をする。


 『今回は私も分かれるのはベストだと思う。だから私も賛成したい。ただジョン、どう分かれる?』

 ヤプールがジョンに聞く。

 

 『そうですね。中近接のベンベッタと万能のヤプールさんに近接の俺と遠距離のダリスクと2人に分けたい。2人と4人では人数的な差があるが、多分その方が

2人の連携が良くなる。これが都合が良い。』

 ジョンはヤプールの問いに答える。

 

 『なるほど、月兎と速剣のコンビネーションですね。それが一番良いかもですね。』

 ベンベッタはテンションを上げ気味である。

 

 『ダリスクやめて、そのあだ名。流石に恥ずかしいから。本当に。』

 ワカナは、少し顔を赤くする。


 『私は好きだよぉ。月兎ってなんか可愛いし、かっこいい。』

 キャサは笑顔を浮かべる。



 『ジョンの作戦に何か意見はないか?』

 ヤプールは団員に聞く。

 

 『一つ、いいですか?』

 ワカナが手をあげる。


 『どうした、ワカナ。』


 『確かに、ジョンの提案は効率、と言う面で考えればかなり良いとは思います。ただ、イレギュラーモンスターが大量発生しているこの状態では、不測の事態が起きてしまう可能性が大いにあると思います。そうなった時に、分かれてしまった状態だと対処できずに私たちに危険が及んでしまうのではないかと。』

 ワカナは効率よりも団員の安全を考えた提案をした。


 『ワカナさんの言う通り、確かに一団で戦った方が安全で確実だと思います。しかし、森から出て、いつ村を襲うかわからない状態のモンスター達を一刻も早く討伐することの方が、俺は大切だと思います。そしてそれが騎士団の使命だと思います。』

 ジョンはワカナに反論をした。


 『私もジョンの言う通りだと思うよ。団員達も大切だけど、それ以上に騎士団は、民を守るために命を賭けるべき立場なの。まさに今は民が危険に晒されている状態だからジョンの提案に賛成したい。それに、危険になったら私がみんなを守ってやるさ。』

 ヤプールがジョンに同調をした。


 『…。わかりました。』

 ワカナは、自分を強引に納得させるように、小さくうなづく。


 

 『よし、暴れまくって、ひと段落をしたらここ集合ってことで。じゃあ行くぞ!』

 ヤプールの合図でワカナとキャサは、森の東へと向かっていった。


 『私たちはこのまま進もう。隊列はベンベッタを支援して、私とダリスクがサポート。それをジョンが守るって形で。』


 『了解です。』

 ヤプールの言葉でそう決まった。

 

 

 『やけに静かだな。』

 ヤプールが周りをチラリと見る。

 二手に分かれたあと、しばらく進んでいるが変わった様子はほとんどなかった。あるとすれば、森が静かすぎると言う点のみである。


 『確かに、モンスターの姿どころか声すら聞こえない。向こうはまだ戦ってないんでしょうか。』

 ベンベッタもそう言った通り、気配すら感じなかった。これは間違いなく異常であった。あれ以降、今までただの一頭もモンスターに遭遇していないのだ。


 『これはどう言うことなのでしょうか。』

 状況が分かりきってはいない、ダリスクが尋ねる。


 『多分これは、』


 

 その時、静寂を切り裂くような轟が大地を震わす。

 森をなぎ倒すように森の奥から黒い影が雪崩のように押し寄せてくる。


 『この数…。』

 ベンベッタが聞いていた数とはとても比べようもないほどのモンスターに絶句する。


 『どういことですか…。』

 ダリスクは目の前の状況にただただ驚くしかない。

 

 『やっぱり。』

 ヤプールが顔を引きつらせる。


 『みんな構えて。これは厄介だ。』 

 その言葉で4人は戦闘態勢を取る。


 

 『まさかワカナの言う通り、本当にこんな不測の事態になるとは。』

 ヤプールが恨めしそうに呟いた。

 

 

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