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チート級の魔力量で最強目指します。  作者: シャルシャレード
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第二十話 天才

 

 『はあー!』

 カイリは頭から飛び込む。

 狙いは数m先のハヤテの虎だ。

 ハヤテの虎は体長は2mほどで、決して大きくは無いのだが、人肉を好んで食べる。その上、名前の通り、ハヤテの如き速さで動きをするため並の人間では動きを追うことさえ出来ない危険なモンスターである。そのため、Bランクモンスターの中でも特別に警戒をされている。

 本来であれば、戦わずしてこちらに気づく前に、ゆっくりと後退をしていくということがセオリーなのであるがカイリは臆することなく飛び込んでいく。ハヤテの虎をも超える速さで。

 しかし、その体はハヤテの虎へと向かうことなく、さらに10mほど先の木へ激突する。

 

 『痛っ!』

 カイリの全身に衝突の衝撃とそれによって生じた痛みが走る。思わず手の力が抜け、魔剣も大きく投げ出される。


 それを見たハヤテの虎はここぞとばかりに駆けて、カイリに向けて飛びかかる。

 カイリは頭で考えて、反応することは出来なかったが、目に映ったハヤテの虎の鋭い牙と強靭な肉体に死を感じて、本能で避け、再び別の木に激突をする。

 

 これはどうすれば。カイリは体勢を直しハヤテの虎の方へ目を向け、頭の中で策を模索する。


 ハヤテの虎が木から突き刺さった牙を強引に抜き出したため、木はその部分から倒れている。

 ハヤテの虎はカイリの動きの速さに警戒をしたのかこちらを一瞥した後、ゆっくりと後退をして距離をとっている。


 剣は手に無い上に格上のハヤテの虎だ。どうやっても勝てない。カイリには勝ち筋が浮かばなかった。


 そして、カイリは魔剣を落として空いた右手を素早く挙げる。


 これはユーベリータとカイリで決めた、一旦休憩の合図である。要するにギブアップなのだが、カイリはまさかこの合図を使うとは思ってはいなかったのだが、決めておいて良かったと心の底から思う。

 

 『一旦終わりにしましょう。』

 ユーベリータはそれを見て小さなため息をもらし、腰の鞘に収まっている短刀を取り出す。そして、その手を前にかざす。


 『オーバークイック。』

 ユーベリータがそう唱えると前に出した手の先から大きな魔法陣が飛び出し、そのままユーベリータを包み込む。一瞬、体から光が放たれ、そして消えていった。


 『今行くから。』

 ユーベリータはそう言うと、カイリの目から姿が消える。

 その刹那、ハヤテの虎は体の中心から縦に二つに分かれていた。

 そして、姿を現したユーベリータは何事もなかったようにカイリに向かって歩を進める。その動きはまさに神速であり、カイリは目で追うことすら出来なかった。


 『難しすぎるよ。何かコツは無いの?』

 カイリはユーベリータに聞く。

 今、カイリは陽魔法の一つであるクイックの上位魔法、ハイクイックをかけられた状態で戦うという修行をやっているのだが、カイリは全くと言っていいほど、思うように動くことはできずにいた。

 本来ならばクイックから使いこなして徐々に速さを上げていくのだが、カイリはクイックをほぼ完璧に使いこなしていたため、いきなりハイクイックから始めている。

 しかし、ハイクイックの速さを扱いきれず、モンスターを通り過ぎては、木や壁に激突をするということを10回以上繰り返している。元来カイリは痛みに強い方なのだが、通常の速さよりも10倍ほど速いため、その分衝撃も強くなり、さすがのカイリも音をあげていた。

 そのためカイリは、希望に縋るようにユーベリータに聞いたのである。


 『無い。もう体で覚えろ、としか言えることは無いわね。師匠もそうとしか教えてくれなかったしね。』

 ユーベリータは短剣を収め、一瞬、思索をするように斜め上を見上げるが、すぐにその答えを導き出す。

 

 『だよね。』

 カイリは肩を落とす。今日の修行で体に覚えさせるしかないとわかってはいたが、それでも最後の希望としてユーベリータに聞いたのだが、無いと断言されたため、カイリは落胆をする。

 この修行は一見簡単そうに見えるのだが、人間が限界以上に動くのは難しい。それを操ろうというのだからかなり無謀なものであると言える。

 

 『でも、大丈夫よ。私でもオーバークイックを操るのに2年以上かかったから。慣れることさえ出来れば、本当に簡単だよ。』

 ユーベリータはカイリを慰めるように言う。

 カイリはオーバークイック使えるのかよとと思わずツッコミんでしまいそうになる。

 そして、驚く事をやめようと心に誓う。

 

 『そうだね…。わかった、頑張るよ。』

 言葉とは裏腹にカイリはさらに落ち込んでいた。

 オーバークイックとは陽魔法の最上位魔法で最も早く動けるようにする魔法なのだが、屈強な騎士や歴戦の冒険者が何十年と修行しようが扱えうことができなかったため、長い間オーバークイックは使われていない、半ば伝説的な魔法となっている。

 先程ユーベリータは慣れれば簡単だと言ったが、それに加えて速さを使いこなすセンスも持っていなければならない。

 カイリはユーベリータに対して少なからず劣等感というものを抱いていた。

 自身が持っていないものを全て持っている。

 ユーベリータには天才という表現しか浮かばなかった。

 オーバークイックをたった2年で。カイリは自身とユーベリータの才能の差に少し落ち込んだ。


 しかし、ただ落ち込んでいるわけには行かない。

 早く力を付け一刻も早く周りに自分を認めさせる。

 

 『師匠、いろいろ教えて下さい。』

 カイリは落ち込んでいる時間はないと奮い立たせる様に、言葉を放ちユーベリータに深々と頭を下げる。


 『師匠に任せなさい!』

 ユーベリータはカイリに得意気な顔を向ける。

 ユーベリータは師匠に憧れを特段に抱いているため、師匠扱いをされると機嫌が良くなるとカイリは数日の中で既に見抜いていた。


 『でも、このままだと狩りにならないな。』

 カイリは落とした魔剣を拾い上げ、見つめる。

 正直、カイリには自信が無かった。

 生まれてから今までほとんど褒められたことは無かった。

 諦めや敗北感がカイリの中を支配しているのだった。

 まず、成功体験を積み上げていく。

 そうユーベリータは考えていた。


 『感覚としては身体の中心の爆発を抑えるイメージかな。』

 ユーベリータは腹の辺りを指差す。


 『痛みで躊躇いもすると思う。根性論になっちゃうけど、気合いで乗り越えるしかないよ。私にだってそんなことあったしね?』

 ユーベリータは続ける。


 『な、なるほど。』

 カイリは、今までの傷の痛みも相まって、それが聞きたかったんだよと思わず声に出しそうになったが、グッと堪える。


 『カイリ、もう一回行ける?』

 ユーベリータの言葉にハッとする。

 

 いつの間にかハヤテの虎に囲まれていたのだった。

 数十匹ほどだろうか、カイリはユーベリータの方を見る。


 『くそ、ハヤテの虎は群れで行動するんだった!』

 カイリは後悔した。いくらユーベリータが強いとはいえども、数十匹のモンスター相手ではかなりきついカイリは打開策を模索する。


 『カイリ、そんな顔しないで。』

 ユーベリータは、それでも余裕であった。


 『何を言ってるの!』


 『カイリは1匹だけ倒してくれれば良いから。見てて。』

 ユーベリータはカイリの方は見ずに話す。

 カイリはユーベリータの言葉の意味が理解できなかった。


 『わかった。』

 カイリは答える。


 ユーベリータは、剣を構えて数十匹の前に立ちはだかる。

 フーッと息を吐く。 

 先ほどまでと違い、真剣な形相になる。

 『ハッ!』

 

 ユーベリータが地面を踏み込むところまでは確認できた。

 カイリがその次に認識できたのは、血を流す5匹のハヤテの虎だった。


 『速すぎる…。』

 ハヤテの虎自身も斬られたことをやや遅れて認識して、バタバタと倒れて行った。

 そのあまりの速さにカイリはポツリと呟くことしかできなかった。


 『久しぶりに本気出しちゃった。』

 ユーベリータは、剣を振り血を払う。

 そして、先ほどの真剣な表情を崩して、柔和になる。


 『次はカイリの番だよ。』

 ユーベリータは、残ったハヤテの虎を指差す。


 『出来る気がしないんだけど。』

 カイリは答える。

 自信なさげな表情を浮かべるカイリを見て、ユーベリータは笑いかける。

 

 『大丈夫。私の認めた弟子なんだから、絶対に出来るよ。』

 ユーベリータの言葉に嘘は無いとカイリは直感した。

 カイリは胸の支えが取れたと感じる。

 早く追いついて、隣で一緒に闘いたい。

 カイリはそう決心した。


 『見てて、ユーベリータ!』

 先ほどまでのは不安な顔は消えた。

 カイリは剣を構えた。ーーー

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