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チート級の魔力量で最強目指します。  作者: シャルシャレード
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第十七話 ユーベリータの師匠

 カイリは今日一日、魔剣を振るった。その剣を使ったのは1日だったがその剣の力を遺憾なく感じた。本来ならばその剣を手に入れた喜びに打ちひしがれるのであろう。しかし、カイリの感情は浮かなかった。


 『本当に、魔法がない俺なんかがこんな剣を使って良いの?』

 カイリにはそれが頭の中に浮かび続けていた。


 『言ったでしょ?あなたは強くなるって。』

 ユーベリータはもう一度言った。


 『俺は剣にはあまり詳しく無いけど、この魔剣はものすごい能力を持っている。魔法の才能に恵まれた人、それこそユーベリータが持つべき剣じゃないかと思う。正直、魔法がない俺なんかがそんな剣を持って良い資格があるとは思えないんだ。』

 カイリはそう言った。魔法がない事で幼少期から蔑まれてきた。そんな俺がいいのかという感情がカイリの中で渦巻き続けていた。


 『なかなか納得出来ないよね。』

 ユーベリータは、顎に手を当てる。


 『じゃあ、ひとつ昔話をするよ。なんで私が、カイリにこの剣を託すと決めたかの話をね。』

 ユーベリータは指をひとつ、真っ直ぐにあげる。


 『私ね、昔、魔法の才能がありすぎるって周りからいじめられてたの。』


 『そうなんだ。』

 魔法が無いことで目立ってしまったがためにいじめられたカイリには魔法があることでいじめられてしまったユーベリータの事が痛いほど理解できる。


『そうなの。だから私も反抗して逆にやり返してはいたんだけど、いかんせん力が弱かったから全然やりかえせなかったけどね。いつも母親に泣き付いては愚痴を聞いてもらって。父親は私とは血がつながっていなかったから、毛嫌いしていたんだけども、特に何もしてこなかったの。でも、母が子供を妊娠してから父親が私に暴力を振るってきた。お母さんはそれを必死に止めてくれた。でも、それを意に介すことは無かった。怖くて痛くて悲しかった。それに、耐えられなくなって子供が産まれる直前に、街を飛び出したの。』

 ユーベリータの表情は、いつもの雰囲気とは違い厳粛に曇っていた。

 カイリにはかける言葉が見つからなかった。


 『私は絶望した。何もしてないのに何でってね。そんな時、私はある剣士に会ったの。』

 ユーベリータは先程とは違い、懐かしむように微笑む。


 『ある剣士?』


 『そう、出会いは最悪の場所だったんだけどね。』

 そういうとユーベリータは苦笑いをする。


『最悪の場所?』


ユーベリータはうなづき、続ける。


 『この前のカイリと同じように、当時4歳だった私も飛び出した後にやけになって魔物を狩っていたのよ。私は魔法が強かったからなんの問題もなく、魔物を狩れてはいたんだけど、ある時スイープテンマに出会ってしまったのよ。』


 『あの、希少モンスターに?』

 スイープテンマとはかなり出現頻度の少ないBランクのモンスターである。完全魔法ダメージ耐性を備えており、魔法でダメージを与えることは出来ない。

 しかし、物理攻撃には滅法弱いため、剣で1突きすれば簡単に倒せる。


 『当時の私は魔法が使えたから、剣なんて使えないし、握ったことすらなかったの。魔法が通じず、とにかく焦ったわ。死も頭によぎった。そんな時に、私は出会ったのよ。』

 ユーベリータは懐かしむように上を見上げる。


 『その人はとても美しい女性だった。そして、カイリと同じで魔力量が多かったのだけれど、魔法がとても弱かった。使えるのは本当に基本的な火魔法だけだったの。でも、とても強かった。Aランクのモンスターを複数相手にしても問題ないし、Sランクのキングトロールすら倒したこともある。しかも、剣たった一本で。その姿に、カッコよさに、何より強さにとても憧れたわ。帰る場所がない私は。その人の持っていた狩小屋に押しかけた。今、私たちが住んでいるこの家にね。』

 ユーベリータは周りを見渡す。


 『そんな私を師匠は優しく受け入れてくれた。そして狩小屋と自宅を往復して剣の修行をつけてくれることになったの。師匠のつける稽古はとても厳しかったわ。でも、着々と力が付いていくのを感じた。そして、それを師匠が褒めてくれた。最高の弟子だとも言ってくれた。その時が私の中で間違いなく、1番充実していたの。』

 ユーベリータは相好を崩す。


 『そんな修行生活が1年経ったある日、師匠が自分の子供を連れてきたの。私は子供がいるなんて知らなかったから驚いたわ。そして、師匠は私にこう言ったの。〈私はこの子のために剣を置かなくちゃいけない。まだ死ぬわけにはいかないから。でも、この剣を失うわけにはいかない。だからユーベリータに私の剣を託したい。そしていつの日か、私のような子を見つけたらこの剣を、その子に託して欲しい。その子がきっと世界を変えてくれるから。それまであなたにはこの剣を守っておいて欲しいの。身勝手なお願いかも知れないけど、この剣はあなた以外には託せないの。〉と。』

 ユーベリータは魔剣とカイリを指差す。


 『それが俺なの?』

 カイリは、納得のいった部分と納得出来ない部分の両方を含んだ声色でユーベリータに問いかける。


 ユーベリータはその問いに頷く。

 

 『師匠は常にこの世界の現状を憂いていたわ。』

 この世界の現状は、魔物と人間が殺し合いをしている。魔王が十二獣と呼ばれる強力な魔物を使い人間を狩り尽くそうとしている。それに対抗し、人間も魔物

を狩っている。血で血を洗う醜い世界が今の現状である。


 『そんな師匠の気持ちを受け継ぎうる、人を私は探し続けた。そして、見つけた。この世界を変える事が出来るのは師匠と同じく多くの魔力量を持ち、魔法の才能が無い、そして、師匠に似ているカイリ、あなたをね。』

 ユーベリータは真っ直ぐこちらを見つめる。その表情は眉根が寄る真剣なものだ。


 『それが私があなたにこの剣を託す理由の一つ。もう一つは単純にあなたを気に入っているからよ。』

 今度は一転してユーベリータの評価が和らぐ。


 『どうかな、カイリ。無理にとは言わない。やるやらない、どちらを選んでも私はあなたを責めない。でも、あなたは絶対に強くなるし、私が強くする。それは絶対に保証する。』

 そう言ったユーベリータの表情はもう一度、真剣味を帯びていた。嘘を付いていないだろうとカイリは感じた。

 

 『俺は』

 カイリは徐に下を見ながら呟く。


 『ユーベリータの師匠のような強さになれると思わないし、世界を救うとかそんな力があるとは思えない。』

 カイリは顔を上げユーベリータを見つめる。


 『でも、俺は初めてこんな俺のことを強くなるって言ってくれたユーベリータの言葉を信じたい。だから、ユーベリータ、俺の師匠になってください。』

 カイリは真剣な顔をする。


 『そんな硬い顔しないで。笑顔笑顔。カイリは笑顔の方がかっこよくて似合うんだから。』

 ユーベリータはほほを両手で指差す。

 

 『そうなのかな。』

 カイリは困った感じになったが、自然と笑顔になる。その顔は、今までの顔とは違い、本来の6歳の純朴な表情となっていた。


 『そうそう、その顔!やっぱり似合うよ。カイリは今日から正式に私の弟子ね!ビシバシと鍛えていくから覚悟しておいて?』

 ユーベリータは、にっこりと笑う。


 『うん、よろしく。全力でついていくから!そして、ユーベリータにもユーベリータの師匠にも認められる弟子になるから!』

 カイリは魔法がない自分を初めて認められた気がした。その表情は明るい期待に満ち溢れていた。


 

 『俺、ご飯作るから!』

 そう言ってカイリは部屋を出て行った。』



 『ごめんねカイリ。私、あなたに嘘ついちゃってる。』

 カイリの後ろ姿を見ながらユーベリータは消え入るように小さく呟いた。その言葉がカイリの耳に届くことはなかった。

 

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