第十四話 魔剣
『渡したい物?』
カイリは素っ頓狂な感じでその言葉を発する。
『そう。ちょっと待ってて。』
ユーベリータは部屋の奥に行った。
カイリは困惑した。何かを渡されるといわれる覚えもないし、何を渡されるか見当がつかない。
とりあえず、何か役に立つ武器とか道具とかであろうか?カイリの頭の中で色々な可能性を考える。
しばらくすると、両手で何かを抱えてきた。
包みに入っていて、中身は見れないが恐らく剣の類であろう。とカイリは考えた。
ユーベリータが包みを開くと予想通り、鞘に収まった剣が出てきた。とても重い雰囲気を感じる剣だ。
『これを俺に?』
その言葉にユーベリータは頷きで返す。
カイリは剣を恐る恐る手に取り、鞘から抜く。
長さは70.80cmほどはあろうか。刀身は惚れ惚れするほどの白銀の両刃。柄は重々しい紫色であった。よく見ると柄の部分には、今は平和の象徴として存在し、かつて人間が魔族に立ち向かった際に全ての王国が連合した時のマークが施されている。
そして、何より感じたのはこの剣が重い雰囲気と同時にどこか神々しさを感じる剣だとカイリは感じた。
『この剣は魔剣?』
カイリは驚いた表情で問う。
魔剣は魔族が使う剣で、魔剣自体に特殊魔法が込められている。人間では一時的に剣に魔法は込めることが出来るが、恒久的に留めておくことは不可能である。これに対抗するために人間は聖剣を作ったが2年前に先代の剣聖が失踪して以来、所在がわからない。
『そうとも言えるわね。私はその剣を見つけただけ。その剣には魔法が込めてあるから魔剣かもね。』
ユーベリータは頬に手を当てはぐらかすようた答える。
『なんで、こんな俺に魔剣を渡してくれるの?』
魔剣は人間が魔族を倒した場合や死んだ魔族の遺品としてしか入手できない、非常に珍しい物だ。
しかし、そんな品物をなぜ渡してくれるのか気になった。
ユーベリータは、真剣にこちらを見つめ口を開く。
『それはね。カイリが1番魔法神に愛され、愛されなかったからよ。』
『どういうこと?』
カイリにはこの言葉が理解できなかった。
『この世界で1番の魔力量を持っていながら、魔法が使えない、そんな人を探していたのよ。カイリはそれだけでとても苦労をして来たと思う。周りから蔑まれ、自分を卑下して来たと思う。それをさせない、しないために周りの10倍、20倍、努力してもすぐ先を越されていた。そうじゃない?』
『たしかに、そうだけど。なんでユーベリータが俺に剣を渡す理由になる?』
ユーベリータの言っていることは事実であろう。使用者が魔剣に込められている魔力量を上回らないと、拒否されてしまう。でも、だからといって俺に剣を渡す理由はユーベリータには無いはずだ。
『カイリが強くなって、多分、世界の見え方が変わると思う。その時にあなたの見え方を教えて欲しい、そして、世界を救って欲しい。』
その答えにカイリは少し考え込む。
『見え方か…。わかった。そういうことにしておくよ。』
ユーベリータが何かを隠しているように感じた。恐らく嘘は言っていないだろうこればかりは相手がいつか話してくれるのを待つしかない。カイリはそう思った。
『じゃあ、早速使ってみる?』
ユーベリータは、剣を指差す。
『うん、とりあえず使ってみたいかな。』
とりあえず、ユーベリータの真意はわからなかったが、力を感じるこの剣を使ってみたいという衝動はあった。
『じゃあ、準備してすぐ行きましょう!』
真剣な顔であったユーベリータにようやく笑顔が戻った。
カイリとユーベリータは魔物の森の前に立っている。
『ユーベリータ、ここの森のランクは?』
カイリは恐る恐る訪ねた。明らかに今までとは違う雰囲気を感じとっていたからだ。
『カイリ、ここはBランクの森よ。私もいるし、魔剣もあるから大丈夫よ?』
ユーベリータは淡々と答える。
『わかった行こう。』
カイリはパンと頬を叩く。
彼女がいれば大丈夫。とカイリは心の中を落ち着かせる。
ユーベリータはそれに足るだけの信頼があった。
ユーベリータが足を踏み入れ、森の中へと進む。
カイリはそれに遅れて、一歩ずつゆっくりと歩を進めていく。
『森に入るとやっぱり違う。』
カイリは森からでる雰囲気を、恐怖感を肌で感じていた。
『慣れちゃえば、何にも感じなくなるから大丈夫よ。』
6歳のカイリと10歳のユーベリータでは、歩くスピードは違うだろうがカイリの歩に合わせるようにゆっくりと歩く。カイリも迷惑をかけまいと体の半分以上の長さがある剣を持ちながら必死についていく。
しかし、ユーベリータとカイリの歩はピタリと止まる。
身の前を見ると、青いトカゲのような見た目に口から長い舌を伸ばしたモンスターが見え、こちらに気づき臨戦態勢を取っている。
『タングトカゲだ。』
長い舌で巻き取り、酸で獲物を溶かしてしまう。
厄介なモンスターで人間もこのモンスターによって死亡することもある。戦闘力は高くないが、危険度が高いためDランクに位置付けられているモンスターだ。
カイリが戦うのはもちろん初めてであった。
『カイリ、行ける?』
『やってみるよ。』
カイリは、体の半分ほどある剣を抜き、体の前で構える。タングトカゲの舌が届かないであろう距離から機を伺う。
カイリは意を決して、タングトカゲの方に飛び込む。それを狙っていたかのようにタングトカゲは舌を出す。真っ直ぐ直線に伸びてくる舌を、カイリは魔剣で切る。これはタングトカゲ攻略の常套手段である。
早いため切るのは難しいが直線的なため、カイリにはそれほど難しいものではなかった。
そして、そのまま突っ込んでいく。タングトカゲは命の危機を察したのか体の酸を全て撒き散らすかのように体を激しく振るう。
カイリはそれを気にせず、タングトカゲの体に剣を振るい、真っ二つにした。普通なら剣をも溶かしてしまうものだが魔剣には問題なかった。
『やった、初めてDランクのモンスターを倒せたよ!』
カイリには喜びの文字が浮かぶ!
『やったわね、カイリ。』
ユーベリータも祝福する。
これは行けるかもしれない!
カイリは魔剣を見つめた。




