第一話 プロローグ
ーーー『あなたは、私の全てだから。』
少女が呟く。
まだあどけなさすら残る少女から、真っ赤な鮮血が流れ落ちている。
『やめろ、辞めてくれ!だって君は…!』
少年が縋るように少女に叫ぶ。
血を吐き、今にも気を失いそうになる自分をなんとか起こすように、精一杯叫ぶ。喉が裂け、血反吐を吐こうとかまわずに。
少年の目に涙が浮かぶ。しかし、痛みからではない、これから起こるであろう未来に涙する。
そんな少年に少女は優しい口調で話す。
『私の使命だから…。あなたが生きていてくれれば、死ぬことも何も怖く無い…。』
少女は笑顔を作る。
地獄の中で咲く一輪の花のようだった。
『ダメだ…ダメだ…まだ別れたく無い。』
『…。』
『一緒に逃げようよ!俺たちなら逃げ切れるから!』
少年はさらに続ける。
『まだまだ遊びたいところもある!教わりたいこともある!まだまだ何も…!ずっと一緒に暮らすって言ったじゃん!俺に俺の大好きな笑顔をいつまでも見せてよ!!!』
少年は叫ぶ。まるで子供のように。
その声を聞き少女は嬉しさや安堵や焦燥、悲しみ。喜怒哀楽、どれるような表情を浮かべる。
ドンッ!
少女が手刀を使い少年を気絶させる。
『迷惑いっぱいかけてごめんね。そして、今までありがとう。大好きだよ。』
少女は少年に呟き、涙を拭きながら。
少年に魔法をかけ、剣の鞘を置いた。
風が起き、少年を別の場所へと移した。
『いつか、私のこと見つけてね。』
少女はポツリと呟いた。
少女はそれを見届け、くるりと振り返る。
そして、目の前のドス黒い赤く染まった異形を見据える。
『待ったか?醜い醜いクソ虫さん。』
少女は自傷的な笑顔を浮かべ、ゆらりゆらりと前に出て行く。
『今、すこぶる調子が良いからさ、あんたらのお望み通りには行かないかもね?』
『ゴルル…。』
異形は少女に不敵に笑いかける。
少女はそれを見て、空を見上げる。
黒く澱んだ空。
『私の気持ちとおんなじか。』
まるで今の少女を暗示しているかのようであった。
そして、大きく息を吸う。
『お前らの存在でどれだけの人々が苦しんでるかわかるか?』
少女が異形に問いかける。
しかし、返答はない。
帰ってくるのは少女を嘲笑うような表情だけだった。
『お前らが物のように簡単に潰すそれには一人一人感情が親がある。家族を失い、住処を失い、挙句には命すら落としている。貴様らの下らない行いのせいで、つまらない気まぐれのせいで簡単にそうなってしまう…。幾多の国を潰し、我が物顔でそこを闊歩して行く。あぁ、気色が悪い。反吐が出るようだ。こんな最悪な気分は初めてだ。』
少女は、そういうと剣を抜き、魔物に剣先を向ける。
『ただで生きられると思うなよ?』
少女の瞳にドス黒い感情が浮かぶ、人とは思えないほど赤黒く、澱んだ何かであった。
『あんた私のこと殺せると思ってるでしょ。
まぁ、間違いじゃないけど。』
少女は、右手を差し出すように前へ構える。
『死ぬ時はお前と一緒だ。』
少女は魔法陣を展開させた。
手直しなどを加えつつ投稿して行きたいと思います。
誤字や表現などにおかしいところが有れば、指摘してもらえるとありがたいです。
描いた経験は少ないですが、よろしくお願いします!