地球年代記3047 The Earth Chronicles3047years 原始地球探索プロジェクト 策定番号3267 植民惑星護民官アールトウオメロ参事官が記す 小夜物語第85話
原始地球探索プロジェクト 策定番号3267
植民惑星護民官アールトウオメロ参事官が記す
スターシップ航海日誌より
私たちが人類のその起源を求めてZK57惑星をスターシップQ12で原始地球へ旅立ったのは宇宙歴ゴールデンドーン菱機18年のことである。
私たちが荒廃した母地球を見捨てて植民スターシップで旅立ってから我々は原始地球に帰ることは二度とはなかった。
が、
しかしこの度ルーツ探求という研究で原始地球探索プロジェクトが策定され
私がそのチーフとして任命されたのである。
そこで、
まず私たちの共通の先祖ルーツである人類の地球歴史を紐解いてみよう。
私たちが荒廃した母地球を見捨てて離脱したころ
そのころ地球はまだそれなりの余裕を残して
地球再生に期待が残っていた頃でもあった。
そのころ地球離脱プロジェクトを推進していたのは全くの少数派だったのだ。
そうしてわれらは地球人の侮蔑を背に巨大惑星間飛行艇を建造し
選ばれた1万人で旅立ったのだった。
それはあたかもゴールデンドーン31年のことだった。
しかしその後の地球はさらに荒廃が進み
2度のデザスターとパンデミックを体験して
人類文明はほぼ跡形もなく崩壊してしまったのだった。
これは航海中のわれらも通信で知ることとはなった
地球を旅立ってまだ20年という航海中のことあった。
その後地球からの情報は途絶えて私たちは滅亡したと確信したのである。
50年という長期の恒星間飛行は当時の画期的な技術である
トリメトロン希少物質の開発で可能となり、
私たちは無事に孫たちの宇宙船内での誕生も迎えて目的の銀河団に
恒星に、そして5番惑星へと到着したのだ。
その惑星は到着してみるとかって文明が栄えていた遺跡が点在する
惑星だった、なぜその文明が滅んだのか?
それの探求と我らの開拓がはじまったのだ。
、、が、、そのことのクロニクルは別の機会に詳述しよう。
さて冒頭の原始地球への探査プロジェクトが発案されたのも実は
われらがその異星での宇宙文明の研究と利用のプロセスで重大な
人類との齟齬に遭遇したからなのである。
そのために人類という存在自体の再研究が余儀なくされて
100年以上も全く没交渉の地球への探査機を送るということになったのだ。
その詳細も機密事項に当るためここでは秘すが。
途中経過は省略しよう、
われらの探査機は無事に地球に戻ってきた
もう二度と戻らないはずだったのに、、、。
われらはまずそのあまりのも変貌に驚かざるを得なかった。
母船は軌道上においてわれらはひっそりと少数で隠密に地上に降り立った。
あくまでも隠密に、
そして精密測定器を駆使して地球情報を集めた
それには数日を要した。
その結果、、は以下のとおりである
現在の地球情報報告書
今や人類の生き残りたちはわずか数十万人を切り
遠からず滅亡が見えかくれするのであった。
生き残りたちはそれぞれが、かつての文明の残りである遺物の
立方体1キロメートルの金属ピラミッドにひそんで
外界の瘴気ガスから身を守っているのだった。
一歩この金属ピラミッドから出ようものなら
たちまち毒ガスでやられてしまうのだった。地上は人類には毒性ガスで充ちていた、
そんな金属ピラミッドは世界各地の荒廃した残土に
いくつか存在していて
そこではおおよそ1000人ほどが集団生活の拠点としていた。
そんなピラミッドが一体いくつあるのか
確かな数は分らなかった。
、、おそらく最後のデザスターアンドパンデミックが来たとき
地球にもう未来は何も残されはしなかったのだ、
この時地球は徹底的に破壊しつくされ
一切の文明は失われたのだ、
その後わずかに取り残された人類の残滓たちは
進化ではなくて、退化へとその舵を切ってしまったのだった。
息絶え絶えの地球に取り残された人類の末裔は
次第にピラミッドへと追い詰められて
荒廃した地上には
核反応で異様に進化した異形の魔物の様な生物が支配する
マッドランドと化していたのだ、
金属ピラミッドから一歩でも出ればそこには
全長10メートルもの食人植物が繁茂して
徘徊する5メートルはあるかという牙タイガーやらが跋扈しているのだった。
退化した人類にはもう歯向かうすべなどなかった
先進人類の遺物であるこの金属ピラミッドだけがかろうじて生き残りの人類を支えていたのだ。
それではこの金属ピラミッドについてもう少し詳しく説明しよう。
これは最後の生き残りの砦として作られたもので、
マザーコンピューターが管理する生存圏提供施設だ、
デザスターによる破壊をマザーコンピューターは生存の危機と判断して
進化ではなく「退化」という究極の?選択肢で生き残ろうと判断したようだ。
それが、、、生き残るための「人類の退化計画」の真相だった。
退化してむしろ原始的な生命力を高める?という方法。
そういうわけで、地球管理AIは
残留人類の原始化を発令したんだ
つまり今この地球で生存するのは、
いわゆる原始人だったのである。
つまりネアンデルタール人レベルの退化した人類しかいなかったのである。
それらを管理するこの最後の施設であるピラミッドもそろそろ耐用年数が尽きようとしていた。
だが。生命力の賦活もこうしたあまりにも外界の変化には追い付かず、
最後の人類の滅亡も近いだろう。
私 つまり、この報告者は
それをいままのあたりにすると
その報告をまとめてインプットして
来たことをこれらの原始人に悟られないように痕跡を消去して
この敗残の地球を離れた
私たちの見解はこうだ
これらの原始人と接触しても意味がない事、
そしてましてこれらの原始人を捕獲してわれらの高度文明の植民惑星に連れ帰ってもさらに意味がない事
そういう結論だったからである、。
つまりこれらの原始人は今のわれらとっては無用の長物だったからである。
というのはあの宇宙文明の古代遺跡があった高度な文明惑星とは
つまり一切が物質段階を超越した
霊体文明だったのである。
だがあまりの霊体依存が彼らの存在自体を危うくして
まさにホログラムが消え去るように
更に高次の「宇宙原理の墓場」に吸収されて消え失せてしまったというのが真相だったのだ、
究極の宇宙文明の進化とは?その到達点とは?
「宇宙との合体」である。
個々の生命が宇宙と合体してつまり吸収される、、という段階が到達移転なのだ。、
そういう真相がわかったときわれら移住者は既にほぼ霊体化を成し遂げつつあり
既に、、原始的な肉体を失いつつあった。
これ以上の進化は宇宙への帰還であり
宇宙と同体化することであり、、つまりこの先進惑星の高度な宇宙文明のように
雲散霧消?するべきだったのだ。
だがそうして宇宙原理に合体することは
われらはそこまで行く気が無かったので
人類のルーツを探査して何らかの物質界での生き残りの知恵を得ようとして今回の派遣となったわけである。
その結果われらはあのマザーコンピューターの
退化装置?に着目して
それの基本原理指令をインプットした
今この原始地球を離れて帰還の途中であるが
おそらくこれの応用で
われらが神の域(宇宙との合体)という進化の究極の手前で
踏みとどまることができると確信する
我々は宇宙原理に同一化して「神」にはなりたくはない。
以上、航海日誌 ゴールデンドーン32年
植民惑星護民官アールトウオメロ参事官が記す
ところで私は誰かって?
私はいわゆる肉体人間ではないのだ、
私にはすでに肉体はない、
いわば霊体がマクロのAIホログラムに裏書されたような存在なのだ。
、
地球から離脱した人類はその後、
植民惑星での先進文明の知恵から肉体をまとうことをやめて純粋な霊体として
永遠の命を獲得したのだ
ただし、、こうして物質界で活動を余儀なくされたときには
仮の肉体を保持するという措置をとるのだ、
霊体のままでは物質界で作用。反応。応答が返ってこないからである。
この肉体は借り物、
まあ、、精巧なレプリカントみたいなもの、
さて今私の任務も終わった、
それでは
この肉体ブースを脱ぐこととしよう。