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9.最高の立地と凄すぎる家

一日早いですが書き上がったので投稿します!

 ”家を建てる”とは言ったものの――、


「そんな土地ねぇよなぁ……」


 俺は道の真ん中で立ち並ぶ建物を眺めながらそう呟いた。

 建てる家があるのと土地があるのとは別問題。

 このことにもっと早く気がつくべきだった。

 ……いや、そもそもの話として街中に俺たちが好きに使っていいような土地などあるはずがなかったのだ。

 例えあったとしても、それは”金を払えば使ってもいい”というものだろう。

 金がないからこうしてるのに土地なんて買えるかよ、バカ野郎。

 ………………だがまあ、全く手がないというわけでもない。

 

 俺はチラっと街の外へと繋がる門を見た。


「街の外になら、土地なんて腐るほどあるんだけどな……」

「もうこの際だし、街の外でもいいんじゃない?」

「そうだよ。どうせ街の中に家を建てる土地なんてないんだし」

「…………そうだな。結局それしかないのか」


 あれだけ色々と考えたのに結局は街の外に出ないといけないのか……。

 まあ、それも仕方ないっちゃ仕方ないんだけどなあ。

 何はともあれ、家があるだけましか。 


 俺はそう考え、気持ちを切り替えた。

 それじゃあ、早速街の外に出るとしよう。

 

「なんだ、お前たちもうこの街を出るのか?」


 その途中、門番の人にそう聞かれた。

 この人はさっき俺たちがこの街に入った時にも居た人だ。

 

 そりゃそうだよな。

 ものの数時間で街を出ようとしてるんだから、気になりもするだろう。


「ええまあ。でも、化物退治の招集日にはまた戻ってきますよ」

「そうだったのか! と言うかお前たちも化物退治に参加するんだな! 死なない程度に頑張れよ!」

「ああ、そうさせてもらうよ。それじゃあ」

「「それじゃあバイバイ、おじちゃん!」」

「おう! 妹ちゃんたちもまたな!」


 そう言って、俺たちは門番と別れ街の外へと出た。

 

 ちなみに、今この街は入場料が無料だ。

 初めは何故か分からなかったが、今となっては化物退治のためだということが分かる。

 おそらく、より多くの実力者に参加してもらうためだろう。

 まったく、化物様様だな。

 ただ、そこまでするということは、その化物がそれだけ驚異だということにほかならない。

 これは俺が思っていたよりも厳しい戦いになるかもな。

 とはいえ、今更後には引けないが。


 さて、化け物退治のことは一旦置いておこう。

 それよりもまずは土地探しだ。

 

 俺は目の前に広がる大草原を見た。

 少し視線を逸らせば森が見えるところもあるが、それを差し引いてもバカ広い草原だ。

 ここならばどこに家を建てても怒られない……はずだ。

 もしかしたら誰かの所有地だったりするのかもしれないが、そんなものは注意されてから考えたらいいのだ。

 それまでは自由に使わせてもう。

 だがしかし、できればもっとよさそうな場所を探したい。

 あと、街から近ければそれだけいい。

 我ながら贅沢だとは思うが――……まあ、ここ異世界だしな。

 どうせならとことんまでこだわりたい。

 それにこっちには探すことに関するスペシャリストがいるしな。


「と、言う訳で蘭さん。よろしくお願いします」

「うむ! 任されたよ兄さん!」


 そう言うと、蘭は右手で瞳を隠し、少し厨二病チックに能力を発動させた。


「森羅万象を見通す深紅の魔眼よっ! 我が思いに応じ、今ここに顕現せよっ! その名は――”千里眼”っ!!」


 そう言い終わると同時に、瞳を隠していた右手をバッと正面で払う。

 刹那、今まで手に隠されていた――深紅に染まった美しい瞳が姿を現した。

 まさにアニメの再現。

 魔眼とはよく言ったものだ。

 ハッキリ言ってめちゃくちゃカッコいい。

 厨二病チックなのもそれをより一層引き立てている。

 まるでどこかの主人公のようだ。


 その後、セリフとポーズをバッチリと決めた蘭はその深紅に染まった瞳を輝かせながら俺に迫ってきた。


「どうどう!? カッコよかった!? ねえカッコよかった!?」

「ああ、すげぇカッコよかった!」

「えへへ~そうかな~っ。えへへへ~~すげぇカッコよかったか~っ! ……えへへへへ~~~っ!!」


 蘭はだらしなく顔を緩ませ、くねくねと悶えていた。

 それから少し経った後、元の落ち着きを取り戻した蘭は超ご機嫌で家を建てるのに良さげな土地を探し始めた。


「うむうむ? ここは……ダメ。次はこっち……もダメか。それじゃあこっちは――」


 あっちもダメこっちもダメと呟きながら能力を使う蘭。

 それから数分が経過したところで、蘭は「あった!」と嬉しそうな声音で叫んだ。

 どうやら見つかったらしい。


「こっちこっち! 付いて来て兄さん! 凛ちゃんも!」


 そう言って俺たちを引っ張っていく蘭。

 俺と凛はそれに従って大草原の中を歩き出した。


  ◆◆◆


 歩き出してから数分。

 俺たちはある場所に立っていた。

 

 一言で言うならば”丘”だろう。

 お誂え向きに高い丘。

 近くには大きな湖のような場所もあり、その周りにはほどほどに木々が生えていた。

 湖の水はとても澄んでおり、太陽の光を反射してとても輝いていた。

 街からもちょうど良い距離にあり、まさに最高の立地と言えるだろう。


「どう兄さん。ここで良かった、かな?」

「……」

「兄さん? もしかして、ダメ……だった?」

「……蘭」

「はい…………」

「最っっっ高ッ!」


 俺がそう言うと、不安そうだった顔がぱあっと明るくなった。


「本当!?」

「ああ、本当だ! さすが蘭だな!」

「そうだよ蘭ちゃん! 私もすごく良いと思う!」

「そ、そうかな~。えへへ……ありがとう! それじゃあ早速建てちゃおっか! ねっ凛ちゃん!」

「うん!」


 そう言って、蘭に続き今度は凛が能力を発動させる。


「”愛の巣(マイホーム)”!」


 その瞬間、目の前の空間に輪郭を描くように線が引かれていった。

 その線は次第に家を形作っていき、数秒でその作業を終えた。

 次に、家の土台となる部分の素材が形成され、まるで立体的なパズルのように順々に組み上がっていく。

 土台のあとは、柱などの骨組み、床、壁、屋根、外装、内装など、順番に出来上がっていった。

 そしてたった数分で一軒の家が完成した。

 その外見はまるでどこかの別荘のように大きかった。

 しかも家の外に、柵に庭、屋根付きの食事スペースまで付いている。

 これがたった一人の能力から創り上げられたという事実に驚きを隠せない。

 さすがにこれは凄すぎるだろ……っ!


「どうかな、お兄ちゃん。私も役に立てた、かな?」

「当たり前だろ! これは凄すぎる!」

「やったっ、ありがとう! お兄ちゃん!」


 俺にそう言われて素直に喜ぶ凛。

 なんともまあ微笑ましいワンショットだが、こうなってくると俺の存在意義がわからないな。

 もう凛と蘭だけでやっていけるんじゃないか?

 蘭が居れば土地も食べ物も見つけられるし、凛が居れば寝床には困らない。

 俺が居なくても問題なくね?

 …………いや、いやいや、ネガティブ思考はやめよう。

 逆に考えるんだ。

 凛と蘭は補助やサポート系の能力を取得したせいで戦闘系はほとんどない……はず。

 だったら俺は戦闘面で頑張ればいいじゃないか!

 この可愛い妹たちを護る。

 それが俺の存在意義だ。

 今そう決めた。異論は認めない。


 さて、家ができたわけだが――。


「早速中に入ってみようよ!」

「そうだな。何があるか気になるし」

「そうだね! レッツゴー!」


 そうして、俺たちは”愛の巣”の中へと足を踏み入れた。

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