7.化物退治の申し込み
「――と、言うことで俺たちに協力してくれることになりましたエイスとビーリアだ。仲良くしろとは言わないが、一応覚えておいてくれ」
俺はそう言いながら、凛と蘭にAさんとBさんの紹介をした。
「わかったよ、お兄ちゃん」
「了解だよ、兄さん」
「私は黒椿凛!」
「私は黒椿蘭!」
「「よろしくね!」」
コクンと頷いて了承する凛と蘭。
それに続くようにAさんとBさんも元気な声を出した。
「「よろしくお願いしますッ!!」」
よし、これで紹介と顔合わせは終わったな。
早速本題に移ろう。
俺は、凛と蘭に先程の化物退治の話をした。
その話を聞いた凛と蘭は、
「私たちもついて行くからね!」
「兄さんは私たちが守ってあげる!」
そう即答した。
なんとも頼もしい妹たちだ。
まあ、凛と蘭に守られる気はさらさらないが。
ともあれ、これで凛と蘭の参加も確定、と。
よしよし、なかなか順調じゃないか。
後は、ギルドに参加申込をするだけだな。
そうと決まれば早速行動開始だ。
そうして俺たちは、ギルドに向けて歩き始めた。
◆◆◆
歩き始めて数分が経過した頃、俺たちは冒険者ギルドに到着した。
ここに来るのは二度目だが、相変わらずデカイ建物だ。あとゴツイ。
とはいえ、俺の思い描いていた冒険者ギルド像とほとんど変わらないのだが。
まあ、それはこの際置いておくとして。
ちゃっちゃと申請を済ませてしまいますか!
そう思いながら俺たちはギルドの扉をくぐる。
その瞬間、俺たちに視線が集中したが、とりあえず無視をする。
と言うかこいつら、さっきここに来た時もいたが暇なのか?
そんなことを考えていると、Aさんが小走りに掲示板……ゲームなんかで言う所のクエストボードのようなものに近づいていった。
そしてそこに貼られていた一枚の紙を手に取ると、すぐさまこちらに戻ってきた。
「これが化物討伐の参加申込書だ」
「おお、ありがとう。で、これを受付に持っていけばいいんだっけか?」
「そうなるな」
「そう言うことなら善は急げだ。早速申込しようか。頼んだぞ二人共」
「「任せてくれ!」」
そう言ってAさんとBさんはずんずんと俺たちを先導するように進んでいく。
「ここに居る五人。この紙に書いてある化物討伐に参加したいんだが」
「はい、化け物退治ですね! かしこまりました! 少々お待ちください!」
受付嬢はそう言ってにこやかに笑うと、五枚の紙を俺たちに手渡した。
「それでは、こちらの紙に必要事項をご記入ください!」
「おお、わかった。こっちの三人の分も俺らが書くが、問題はないよな?」
「はい、ご本人の了承があるのなら何も問題はございません!」
「おう、了解だ! ありがとよ!」
「いえいえ! これも仕事ですから!」
そう言って、受付嬢は笑みを浮かべたままこちらに向かって手を振った。
まったく、俺たちが登録しに来た時とは大違いだな。
あの時はひどかった。
『失礼ですがお客様、出口はあちらですよ? くれぐれも他の冒険者の方々の邪魔にならないようにしてくださいね?』
なんてことを平然と言われた。
冒険者という部分を特に強調して。
確かに、金を持ってない俺たちは客じゃないのかもしれないけどさ、もっと他に言い方があっただろ。
流石の俺でも少しイラっとしたからな、アレ。
と、こんな所で嫌なこと思い出しても仕方がないな。
紙は貰ったんだ。
後はこれに記入するだけ。
しかも記入するのは俺じゃないからな。
こいつらに指示を出すだけでいい。
ああ、なんて簡単なお仕事なんだろう!
素晴らしきかな他力本願!
「なあ、あんた。少しいいか?」
俺がそんな事を思っていると、俺の申込書を書いていたBさんが口を開いた。
「ん? どうした?」
「いや、そう言えばあんたの名前を聞いてなかったと思ってな」
「ああ、そういうことか」
つまり、申込書に名前の記入が必要なわけか。
そういう事なら仕方がないな。
「俺は狂夜だ。黒椿狂夜、そう書いておいてくれ」
「了解したぜ狂夜さん!」
さっそく名前呼びかよ。まあいいけどさ。
それから待つこと数分。
AさんとBさんは自分たちの分を含めた五人分の申込書を書き終えた。
「お疲れ様。悪いな俺たちのために」
「いえいえ、元はといえば俺たちが悪いんだからな。これくらいは当然だ」
「そう言ってもらえるとありがたいが……」
「ま、同じ参加者なんだ。仲良くやろうぜ」
「ははっ、そうだな。そういう事なら、改めてよろしくな」
「ああ!」
「おお!」
「じゃ! 俺はこれで申請してくるぜ!」
そう言ってBさんは受付に記入済みの申込書を提出した。
これで、俺たちも無事参加者になれたってわけだ。
よしよし、順調順調。
順調……なんだけどな、目先の問題があるんだよな。
それは、最終日までどうやって過ごすか、だ。
申し込み最終日は明後日。
そのすぐ後に参加者全員に招集がかかるらしい。
目先の問題として、それまでの寝床と食料をどうするか、だよな。
俺はしばらくの間、ギルドのテーブルにつき頭を悩ませた。