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6.二人の協力者

すみません!

投稿するのが少し遅れました!

「ではまず名前と職業から答えてもらおうか?」


 俺は脅えてガクガクブルブルと震えるAさんとBさんをどうにか椅子に座らせ、面接風に聞いてみた。

 二人は俺がそう聞くと、ビクッと少し飛び跳ねながら、


「「か、かしこまりましたぁぁぁぁぁぁあああ!!」」


 ビシッと姿勢を整え元気よく返事をした。


 いや~素晴らしい。

 見ず知らずの人間がこんな子供相手に脅えて震えるとか、めちゃくちゃゾクゾクす――――ゲフンゲフン、元気がいいのはいいことだよな~。

 その調子でどんどん答えてくれたまえ。

 

 俺が心の中で若干素を出していると、Aさんが口を開いた。


「おれ……じゃなくて、自分は! エイス・クリミアであります! 冒険者をしている者です!」

「……そうか」


 マジかよ、名前カッコイイなおい!

 もっとゴツイ名前を想像してたわ! 

 なのに何そのイカした名前! もっと自分のキャラを考えろよ!

 ここ最近でトップレベルの驚きかも知れない!


 ……まさかとは思うが、Bさん。あんたもか……? 


「じ、自分は……ビーリア・フェイカリスです……ッ! エイスと同じく、冒険者をしています!」


 おぉ……こっちはこっちでなかなかいい名前だな……。

 でもさ、あんたどう見てもゴク・ドーみたいな見た目だろ?

 明らかにそんな名前を持っていキャラじゃないよね? モブでしょ? そこのところもっと考えてよ。

 

 俺は少しだけイラっとしたが、それは余りにも理不尽すぎる気がしたのでどうにかこらえた。

 そして、できるだけ平静を装いながら続けて質問する。


「それじゃあ、さっそく『化物』とやらの話を聞かせてもらおうか?」

「「サー・イエス・サーッ!!」」


 あぁ……いいね、この感じ。

 恐怖支配って素晴らしい!!

 ただな~、こいつら男なんだよな~。しかも漢字の『漢』と書いて『(オトコ)』と呼ぶような連中じゃん?

 どうせなら女の子と変わって欲しかったな~って。

 まあ、完全な俺の願望なんだけどね……。


 それにしても、『サー・イエス・サー』って、完全に英語じゃね? 

 なんで異世界で英語をしゃべってる奴が居るんだよ?

 おかしくない?

 

 ………………とはいえ、今ここで俺がそのことを考えても答えなんて出ないんだよな。

 よって、一旦打ち切りな。


 引き続き、二人の話を聞くとしようか。


「化物について俺が知っているのは――――」


 そう言いながらAさん(本名はカッコよくてムカつくのでこっちで呼ぶ事にする)は話し始めた。


「その化物はこの街から少しだけ離れた森の中に居るらしい」

「らしい? 確定した情報じゃないのか?」

「そ、それがだな、その化物が出て以来森に入ってから戻ってきた奴が少なすぎて、化物についての情報が少ないんだよ」

「そういうことか。……ってことは、化物の姿とかもわからないのか?」

「ああ、残念ながらな」

「う~む……」


 姿がわからないどころか、森に居るかどうかも怪しいのか。

 それは危険かもしれないな。

 いや、もともと参加する以上危険はつきものだが、それでも情報があるのとないのとじゃあ勝率が変わってくるだろう。

 しかもだ、その化物退治には予定ではあるが凛と蘭も参加するのだ。

 俺だけならまだいい。

 だが、妹たちが参加する以上、できるだけ勝率は上げておきたい。

 というか、出来ることなら危険は犯したくない。


 だがまあ、情報がないというのならこっちで調べるとするか。

 幸いなことにこっちには蘭の”千里眼”がある。

 見つけられないことはないだろう。まあ、それも化物の姿がわからないからしらみつぶしになるが。

 まあ、可能性があるだけましか。


 いや、その前に聞いておかないといけないことがあったな。


「その化物退治、参加するにはどうしたらいい? あと、参加するのに条件とか、金とか、必要なものはあるのか?」

「さ、参加するのは、どこでもいい。どこかのギルドで申し込むだけだ。掲示板に参加するための貼り紙があるから、それに必要なことを書いてギルド職員に渡せばいい。必要なものは……特にないな。金もいらないし、ギルドに所属する必要もない」


 そう言われて俺は少し考える。


 ギルドにそんな貼り紙してあったんだな。

 所属しないとクエスト的なものは受けられないらしいし、そもそも貼り紙に書いてあることを読めなかったからな。

 全く見ていなかった。

 それにしても、必要なものが特にないのはありがたい。

 今の俺たちにはものを買い揃える余裕なんてないからな。

 しかし……。


「必要事項、っていうのを書く必要があるんだな?」

「ああ。それがどうかしたのか?」

「いや……ちょっとな……」


 これはまずいことになったな。

 俺たちが働けなかった一番の理由。

 それは、文字の読み書きができなかったからだ。

 必要事項を書くには読む力と書く力、その両方が必要になる。

 俺たちはそのどちらも持ち合わせていない。

 

 今から覚えるか?

 となると、教えてくれる人を探す必要があるな。

 だが、どのくらいの時間がかかる?

 ひとつの言語を覚えるのにかかる時間的労力はどのくらいだ?

 いや、そもそも、


「……参加受付はいつまでだ?」

「たしか、明後日まで……だったと思う」

「あ、明後日……だと?」


 いや、無理だろ。

 今日合わせて三日。

 たったの三日で全く未知の言語を覚えろと?

 不可能だ、できるわけがない。

 少なくとも、俺には無理だ。

 そんな驚異的な学習能力など持ち合わせてはいない。


 どうする? 考えろ。なにかいい案はないのか?

 なんでもいい。なにか、なにか――。


 俺が、そんなことを考えていると、Bさんが俺に声をかけてきた。


「な、なぁあんた。もしかして、文字が書けないんじゃないか?」

「……あ?」

「ヒッ、す、すみませんでしたッ!!」


 俺が驚いて短く低い声を発すると、Bさんは飛び上がりその場に盛大な土下座を決めた。


 いや、なにやってんの?


「どうしたんだよ、いきなり? ……まあ、そうだな。残念なことに、俺は文字が書けない。だから困ってるんだ」


 俺がそう言うと、Bさんは恐る恐るといった風に顔を上げ、おずおずと口を開いた。


「だ、だったら、俺が……手伝おうか? あんたの手になって、文字を書くよ」

「……いいのか?」

「ああ……あんたの怒り方からあのお嬢ちゃんたち……妹だったか。すげぇ大切な人なんだろ? あんだけ俺たちに相手に下手に出てたあんたが突然豹変するくらいだからな」

「いや、まあ……そうなんだが」


 なんだろう。人に言われるとすごく恥ずかしいな。


「俺たちは、あんたの大切なものに危害を加えようとしたんだ。あんたが怒るのも無理はねぇ。俺たちもそれは理解してる。恨みなんてねぇし、悪かったとも思ってる。だがら、せめて償いくらいはさせてくれ」

「お、俺も手伝うよ!」

「お前ら……」


 こいつら、元はいい奴らなんだろうな。

 だが、俺はいい奴なんかじゃない。

 現に今もこいつらが俺を騙すつもりなんじゃないかって勘ぐってるくらいだからな。

 とはいえ、こいつらの考えがどうだろうと、俺にほかに頼れるやつがいないこともまた事実だ。

 だったら、素直に手伝ってもらうのも一つの手かもしれないな。


 俺の座右の銘は『貰えるものは全て貰う』だ。


 それがどんなものであれ、俺に向けられたものならば全て貰っておく。

 それで、もしものことがあったら、情け容赦一切しないけどな。

 凛と蘭に危害が加わる前に全てを片付けてやる。


 ってことで、決まったな。


「そういうことなら、よろしく頼むよ」

「「あ、ああ! 任せてくれ!」」


 そう言って、俺は二人の協力者を得たのだった。

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