25.第二回家族会議
「あぁ、“愛の巣”を見てここまで心が落ち着く日が来ようとは」
目の前にデカデカと聳え立つ我が家を見て思わずそんなことを呟いた。
改めて家に帰って来たっていう安心感ヤバイわ。
あれだよ、旅行先から家に帰って来た時のあの感じ。
流石はマイホーム。落ち着くというかなんというか。
そんなことを思いながら感慨に耽っていると、凛と蘭が隣を小走りに走り抜け、先に家の中に入っていってしまった。
何をそんなに急いでるんだ?
特に急ぐ理由がない俺はゆっくりと歩いて行き、“愛の巣”のドアを開いた。
「「おかえりなさい! お兄ちゃん(兄さん)!」」
行き成り掛けられた声にビクッと反応してしまう。
「お、おう。ただいま」
普通に驚いた。
まさかそれを言うために先に走っていったのか?
元気だな二人共。
とはいえ、その気遣いは正直ありがたい。
今度なにかお礼をしないとな。
「「あ、ちょっと待って!」」
靴を脱いで家にあがろうとした所で凛と蘭に止められた。
「ん? どうした?」
「「えっとね~、ごはんにするー? おふろにするー? それとも~、わ・た・し?」」
「……お前ら、それがしたかっただけかよ」
「「うん!」」
「いい笑顔で返事しやがって…………はぁ、先に風呂だな」
「「え~!」」
「『え~!』じゃない。実の兄に何を期待してんだよ」
「もう、素直じゃないんだから~」
「素直になって私たちを選んで良いんだよ~?」
「選ぶ訳ないだろアホか」
「「ぶ~! いけず~!」」
「はいはい、何とでも言ってくれ」
ホント相変わらずだなこいつら。
何時もどおり過ぎる二人に呆れつつ風呂に向かう途中、俺は「あぁ、そうだった」と口を開いた。
「風呂から上がったら少し話があるから。少しだけ時間空けといてくれ」
「「えっ、もしかして怒ってる……?」」
「怒ってないから安心しろ。それじゃ、また後でな」
◆◆◆
全員が風呂に入り終えたあと、俺たちはリビングに集まっていた。
「それではこれより、第二回家族会議を始める」
「「ぱちぱちぱち」」
俺の宣言とともに拍手が起きた。
この感じ、転生初日を思い出すな。
つっても、つい先日の事なんだけど。
「はい! お兄ちゃん!」
「はい凛さん」
「今回の議題はなんですか?」
「良い質問だな。今回の議題は明日の化物退治についてだ」
「化物退治って明日のお昼からのやつだよね?」
「それがどうかしたの?」
「……俺は、これには無理に参加しなくてもいいと思っている」
「「!」」
俺がそう言った瞬間、凛と蘭は驚いたような顔をした。
それも仕方ないか。
行き成りこんなこと言われたら誰だって驚くだろう。
「お兄ちゃんがそう決めたなら、私たちもそれで良いけど……」
「でも、どうしてそんな急に……? 私たちが弱いから……?」
「それは違う、お前たちは弱くなんかない。……でも、多分明日戦う化物は今日戦った猪よりも強いはずだ。そんな奴に、今日死にかけてた奴が勝てるかって話だよ……」
「「それは……」」
「今日のことを踏まえたうえで、この件について話し合っておこうと思ってな。少なくとも、俺が一人で勝手に決めていい話じゃない。凛、蘭、改めてお前たちの意見が聞きたい。参加するのか、参加しないのか」
「私たちは……」
「に、兄さんはどうなの……? 参加するの……?」
「俺は……」
言い淀み、逡巡する。
ここで、俺の意見を伝えていいのだろうか。
こいつらは、もし俺が参加するといえば参加する方を選ぶんじゃないか?
それこそ、自分自身は参加したくなかったとしても……。
それを自分の意見とは言わないだろう。
だったら俺は――
「――教えない」
「え……っ?」
「ど、どうして……っ?」
「ここで俺がどうするかを言ったら、お前たちはその意見に流されるだろ。だから今は教えない。……ただ、俺は既にどうするかを決めている」
「そ、そうなんだ……」
「兄さんはもう決めたんだね……」
「ああ」
俺が頷くと二人は暗い顔で俯いた。
それから少しの間が空いた後、
「お兄ちゃん、蘭ちゃんと少しだけ話してきても良いかな……?」
「兄さん、凛ちゃんと少しだけ話してきても良いかな……?」
顔を上げ、二人揃ってそう言った。
「すまん、行き成り過ぎたな。それじゃあ俺は部屋にいるから、話が付いたら俺の部屋に来てくれ」
「……うん」
「……分かった」
少しでも二人が落ち着くように、そっと優しく髪を撫でる。
「そんな暗い顔するな、楽に考えていいんだ。お前たちがどんな答えを出そうと俺はそれを否定したりしないから。なんだったら、俺を使ってくれても構わない。凛と蘭がやりたい事に俺が必要なら思う存分振り回してくれ。兄を振り回すのは妹の特権だからな」
「お兄ちゃん……。うん……! 少し考えてみるね!」
「私たちなりに考えてみるから……! 少しだけ待っててね、兄さん!」
もう、大丈夫そうだな……。
「おう、待ってる」
◆◆◆
部屋に戻ってきた俺は「ふぅ……」とため息をつきベッドに腰掛けた。
あいつらがどんな結論を出すのかは分からないが、俺自身は参加したいと思っている。
けど、あいつらが参加しないと言ったらきっと参加しないだろう。
だから、実を言うと参加してもしなくてもどちらでも良いんだ。
結局のところ、俺がやることは変わらない。
凛と蘭を危険な目に遭わせたくないだとか、危険は俺が排除するだとか、そんなことをほざいておきながらこの体たらく。
俺は、自分か考えているほど強くない。
今日死にかけてそれを嫌というほど思い知った。
だから俺は、あいつらを守れる位強くなりたい!
あいつらに心配されない位の――強敵と戦っても無茶だと思われない位の力が欲しい!
それが俺の考え、何があっても変わることのない意志だ。
「そのための力が“性癖”っていうのがなんつーか、締まらねぇなぁ……。ま、そこに文句を言っても仕方がないか」
諦めたように呟きつつ、自分のステータスを表示する。
―――――――――――――――――――――――――――――
キョーヤ・クロツバキ
性別:男 種族:人間 職業:転生者
LV:51
HP:2750/2750
MP:5396/5396
攻撃力:1100 防御力:830
魔力 :5990 対魔力:927
敏捷 :1471 器用 :2042
知力 :1203 幸運 :100
SP:150
AP:545
魔法:
『小雷』
スキル:
【魔法陣/雷Ⅱ】【錬金術Ⅲ】【細工Ⅰ】【剣術Ⅲ】【鎌術Ⅱ】【体術Ⅲ】【高速思考Ⅳ】【並列思考Ⅳ】
固有能力:
《加虐性欲》
・恐怖
・精神攻撃
・精神ダメージ具象化
・トラウマ確認
・拷問器具作製
《拘束愛好》
・万物拘束
・拘束条件指定
・拘束範囲指定
・拘束器具指定
・拘束器具作製
・リンク
《血液嗜好》
・血液操作
・血液硬質化
《少女性愛》
《身長差性愛》
《近親愛》
・空間歪曲
天恵:
≪性癖能力化≫
称号:
[転生者]
装備:
〈制服〉〈処刑人の剣〉
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取り敢えず、今は出来ることをしよう。
先にSPの方から始めるか。
どれを上げて何を取るかは、自分のステータスを見て判断しよう。
レベルが上がった今こうして改めて自分のステータスを見て思ったが、随分と尖った成長を遂げてるな。
攻撃力の上がりが遅くてMPや魔力の上昇が著しい。
基本的に攻撃を受けないから防御力や対魔力も低いままだし、凛や蘭みたいに魔法をバンバン使うわけでもないから知力の上がりもそこまでじゃない。
う~ん……完全に魔力特化だ。
それも大分能力に依存している。
これは近接系スキルのレベルはそこまで上げなくても良いかもだな。
全く必要無いとは言わないが、そこまで必要とも思わない。
むしろここはMPや魔力を更に上昇させて能力や魔法の幅を広げたほうが良い気がする。
イメージとしては魔道士タイプだな。
だとすると凛や蘭とスタイルが被ってるのが少し気がかりだけど、仕方ないか。
それに、俺にとって魔法はあくまでもサブだからね。
とはいえ、近接戦の師匠みたいな人ができたら話は別だけど……まぁ、しばらくはないだろう。
ってことで、方針は決まりだな。
さて、それじゃあ早速何を取るかだが、実はもういくつかは決めてるんだ。
一つは【危機察知】。
これはまあ説明不要だろうけど、効果が凄いからな。
絶対に取ろうと思ってたんだ。
二つ目は【魔法の才能/雷】。
これが凛と蘭のありえない火力の正体だ。
俺も二人に教えてもらって知ったが、これの効果も素晴らしい。
その属性の【魔法陣】のレベルを上げる際に必要なSPが十分の一になるだけでなく、魔法の威力上昇や必要MP削減などなど、ありがたい効果がこれでもかと言うほど詰め込まれている。
チートと呼ぶに相応しいスキルだろう。
あとはMP・魔力上昇のために【強魔】、【豪魔】、【絶魔】を獲得する。
それから便利そうなので【魔着】というスキルも獲得する。
これはMPを消費して魔力の膜を衣服のように纏うというスキルだ。
実際にどんな感じになるのかは分からないが、込めたMPの量に応じて各ステータスが上昇するらしい。
俺のステータスじゃどうしても防御面に不安が残るからな。
その辺を補ってくれるとありがたい。
「さて、お次は各スキルのレベルアップか」
今回のスキル習得に使用したSPは計35。
つまり残り115SPだ。
これだけあれば十分に上げられるだろう。
で、レベル上げを終えたスキル欄がこちら。
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スキル:
【魔法の才能/雷】【魔法陣/雷Ⅶ】【錬金術Ⅳ】【細工Ⅰ】【剣術Ⅲ】【鎌術Ⅲ】【体術Ⅲ】【危機察知Ⅲ】【高速思考Ⅳ】【並列思考Ⅳ】【強魔】【豪魔】【絶魔】【魔着】
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主に【魔法陣】メインで上げてみた。
やっぱ【魔法の才能】があるのとないのとじゃ全然違う。
お陰で躊躇いなく高レベルにできた。
残りの15SPは何かあった時のために取っておくとして、次はAPだな。
545AP。
こっちは相変わらず増え方が尋常じゃないな。
大体SPの3.5倍位か? すげぇな。
つっても、残りの派生能力はどれも異常な程APを必要とするからな~。
結局多くは取れないし……何を取ったものか……。
で、迷いに迷った末取得した能力がこちら。
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固有能力:
《拘束愛好》
・絶対封鎖(300AP)
《身長差性愛》
・サイズ(150AP)
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使用APが450で残り95APは取っておくことにした。
「ふぅ、終わった~」
ベッドに仰向けで倒れこむように寝転がる。
結構真剣に考えたからな~、あー頭が痛い。
いっそのことこのまま寝てしまいたい位だが、生憎とまだ武器の作成が残ってるんだよな~。
これに関しては試してみたいことも多いし……はぁ、時間が圧倒的に足りない。
「それでも学校が無いだけマシ――」
――コンコンッ
「お兄ちゃん」
「兄さん」
「来たか。――空いてるから入ってきていいよ」
「「失礼します」」
ガチャリと開いたドアから凛と蘭が入ってくる。
その表情を見る限りどちらを選んだのか察しはつくが、一応聞いておいた方が良いか。
「――それで、決まったのか?」
凛と蘭はコクリと頷き、口を開いた。




